AWS でのコスト最適化の進め方

第 4 回 ~ ビジネスの成長に向かうためのクラウド費用予測と予算管理

2024-07-02
ビジネス x クラウド

Author : 西口 健太郎

皆さん、こんにちは ! カスタマーソリューションマネージャーの西口です。

「AWS でのコスト最適化の進め方」シリーズも第 4 回となりました。
第 1 回 では Frugal Architect および、アプリケーションオーナーによるコスト最適化に役立ちそうな myApplications をご紹介、 第 2 回第 3 回 では AWS Cloud Financial Management (CFM) フレームワーク における「可視化」と「最適化」をご紹介をしました。皆さまが AWS コストの最適化を推進する一助になっていますでしょうか。

さて、第 4 回は、第 2 回と第 3 回に続いて CFM の 4 つの柱における「計画・予測」をテーマに役立つ AWS サービスを紹介をしていきます。

「AWS でのコスト最適化の進め方」の連載記事はこちら

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  • 第 1 回 ~ 7 つのポイントとコスト最適化に活用できる新ツールとは ?
  • 第 2 回 ~ コスト可視化のポイントと役立つ AWS サービスのご紹介 !
  • 第 3 回 ~ 短期的なコスト削減施策と中長期的なコスト最適化施策

はじめに

今回も CFM についてのおさらいから始めます。CFM には「可視化」、「最適化」、「計画・予測」、「FinOps の実践」の 4 つの柱があります。

  • 可視化 : アカウント・タグ付け戦略、タグ設定のガバナンスによりクラウドコストの可視化を行う
  • 最適化 : クイックウィン最適化、アーキテクチャ最適化によるワークロードの適正に応じた最適化を行う
  • 計画・予測 : クラウド使用量予測、予算策定といったクラウド利用の計画・予測を行いコスト最適化のトラッキングを行う
  • FinOps の実践 : CCoE の組成・文化の醸成、持続的最適化のためのプロセスの確立や、IT 部門と財務・ビジネス部門の連携による継続的なコスト最適化を行う

CFM のおさらいをしましたが、この CFM の各フェーズのうち、「可視化」「最適化」「計画・予測」が FinOps のフェーズであり、1つのサイクルとして繋がっていることがわかるかと思います。そして、このサイクルを回すことが「FinOps の実践」です。(このようにサイクルが回り、事業の成長が継続することを「フライホイール効果」といいます。成長が継続することを意識して、CFM 活動に取り組んでみましょう !)

それでは本題に戻りまして、今回はコストの「計画・予測」のアクションとして以下の 2 点を紹介します。

  • クラウド費用予測・計画
  • クラウド予算管理

クラウドの費用予測・計画

クラウドの費用予測・計画では、過去の傾向からの予測と、将来的な需要からの予測の 2 つの予測方法を説明します。

最初に過去の傾向からの費用予測をご紹介します。

クラウド費用の予測する際は、まず求める費用の予測単位が明確になっているかを確認することが重要です。費用の単位とは、利用部門単位、プロジェクト単位、システム単位、機能単位などです。第 2 回 の可視化にて「どの単位でコストを管理したいか」ということを説明しましたが、この管理の意味には予測も含んでいます。そのため第 2 回でご紹介したアカウント戦略やタグ付け戦略を進めることは、必要かつ正確な予測の実現にも繋がります。

また、クラウドでは従量制の課金モデルを採用していますが、需要予測が困難なワークロードに関する費用と需要が安定しており予測しやすいワークロードに関する費用を把握することも重要です。後者の需要が安定しているワークロード費用へのオプションとして Savings Plans や リザーブドインスタンスなどを 第 3 回 の最適化にてご紹介しています。

このように「可視化」「最適化」、そして次の「計画・予測」への活動を繋げていくことで、より精微な予測を立てられる状態になります。

AWS では過去の傾向からの費用を予測するための代表的ツールとして、 AWS Cost Explorer を提供しています。AWS Cost Explorer は第 2 章の可視化で詳しくご紹介したコストの使用状況を表示および分析できるツールですが、実は過去のデータを表示するだけではなく、将来的に費やす可能性がある コストを予測することができます。AWS Cost Explorer では過去のデータを基に予測を作成し、過去の利用の伸び率から 80 % の信頼区間を表示します。例えば、順調にユーザー数を増やしているシステムの 1 か月後、3 か月後、1 年度の予測のグラフを表示することが可能です。

AWS Cost Explorer を費用の傾向や分析だけで使用するのはもったいないです。ぜひ費用予測でも使用してみてください!AWS Cost Explorer については AWS Black Belt Online Seminar でも詳しく解説していますので、ご参照ください。

AWS Cost Explorer 【AWS Black Belt Online Seminar】»

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次にご紹介するのは、将来的な需要に対する費用予測です。

ビジネスモデルの変革、新規サービスのリリース、マーケティングのイベントなど新たな需要が発生する場合は、需要の内容に応じたクラウド費用の予測が必要です。例えば、新規サービスのリリースの際には、開発期間中ではどのような AWS サービスをどのぐらい利用する予定なのかを計画し、製品リリース後には需要予測を行う必要があります。具体的には、技術的なアーキテクチャや要件の整理を行い、次に AWS サービスの特定とマッピングを行います。最後にクラウド費用を算出します。

詳細なクラウドのコスト見積については以下のブログで解説しています。ぜひ見て頂ければと思います。

クラウドコスト見積もりとオンプレミス環境との比較 »


クラウド予算管理

前の節ではクラウドでの費用予測を説明しましたが、本節ではクラウド利用費用を予測したうえで、クラウド予算を管理する方法をご紹介します。

クラウドの予算を管理してと言われても、何をすればいいんだと困ってしまった方、大丈夫です ! まずは AWS Budgets でクラウドの予算を管理してみましょう。AWS Budgets では、前もって予算を設定すると、予算を超過する前にアラートを通知したり、インスタンスに対して自動的にオペレーションを実行することができます。

前者の例ですが、AWS Chatbot と連携して、AWS Budgets からのアラートを Slack チャンネルで受信することができます。後者の例では、開発に専念するあまり、うっかりインスタンスを起動し過ぎてしまい、開発費の予算を超過してしまっても自動的にインスタンスを停止することが可能です。これで開発予算管理もばっちりですね!AWS Budgets については AWS Black Belt Online Seminar でも詳しく解説していますので、参考にしてください。

AWS Budgets【AWS Black Belt Online Seminar】»

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次に異常値検知と呼ばれる機能をご紹介します。

異常値検知とは大量のデータから機械学習モデルなどを利用して通常とは異なる状態を検知する機能です。先ほど紹介した AWS Budgets による検知では一定の閾値を設定し、その閾値を超えた時にアラートを通知する機能でした。一方で、異常値検知では大量のデータから想定する使用状況をベースラインとして導出し、そのベースラインを逸脱した値を検出します。

例を挙げて説明すると、月末は月次の処理が実行されるので、日単位の閾値から除外したい という要件があったとします。この要件を通常の検知で閾値を設定することは複雑ですし、このような振る舞いが複数あると管理や変更も大変です。

AWS Cost Anomaly Detection は、AWS サービスの利用状況を機械学習モデルによって学習して、ベースラインを大きく逸脱した値を検知する仕組みです。AWS Cost Anomaly Detection は AWS Cost Explorer の「コスト異常検出」から設定可能です。想定外の料金の発生をすぐに検知し影響を極小化することを期待できますので、まだ設定していない方は試してみてはいかがでしょうか ?

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まとめ

AWS でのコスト最適化の進め方の第 4 回では、CFM の「計画・予測」をテーマに、クラウド費用の予測・計画方法とクラウド予算管理方法をご紹介しました。これで「可視化」「最適化」から「計画・予測」に繋がり、CFM のサイクルが完成したことになります。繰り返しますが、「可視化」「最適化」での実行したアクションや内容を踏まえて、「計画・予測」を実行していくのがポイントです。ビジネスの成長に向かうための精微なクラウドの費用予測と予算管理の実現に繋がるでしょう。

この CFM のサイクルを組織として継続的に活動していき、組織に根付かせていくことが重要です。次の最終回「FinOps の実践」ではこのサイクルを継続的に進めていくための組織や文化の醸成、プロセスをご紹介します。

引き続き、皆さんお楽しみに !

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筆者プロフィール

西口 健太郎
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
カスタマーソリューションマネージメント統括本部 シニアカスタマーソリューションマネージャー

カスタマーソリューションマネージャー (CSM) として、主にエンタープライズのお客様向けにクラウド移行支援やモダナイゼーションなど、お客様状況に応じたご支援をしています。
プライベートでは、3 人の子供たちと常にわいわいしてますが、体力的にガチでついていけなくなったのが悩みです。

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