AWS Jam のススメ

~ 楽しみながら実践的な AWS スキルを獲得しよう ~

2025-01-06
How to be a Developer

Author : 大前 諒祐 (クラスメソッド株式会社)

こんにちは、クラスメソッド株式会社で AWS 認定インストラクターをしている大前です。
皆さんは AWS Jam というものをご存知でしょうか ? AWS Jam は楽しみながら実践的な AWS スキルを身につけることができる学習コンテンツで、私自身も好きな学習コンテンツの 1 つでもあります。

この記事では「AWS Jam とは何か」から「AWS Jam によってどのような学習効果が期待できるのか」まで、AWS Jam の魅力をお伝えしていきます。


AWS Jam とは

AWS Jam とは AWS が提供している学習コンテンツの 1 つで、実務に近い AWS のユースケースに沿って実際の AWS 環境上の問題を解決しながら AWS のスキルを身につけることができる、実践型の学習コンテンツです。
参考 : AWS Jam ゲーム型学習 »

ハンズオンの様に特定の手順に沿って AWS 環境を操作するのではなく、一時的な AWS 環境と要件が与えられ、要件を満たすように自力で実際の AWS 環境を構築・是正などしていきます。
AWS Jam にはたくさんの課題 (「チャレンジ」と表現されます) が存在していますが、チャレンジ内容の一例は以下です。

  • AWS で構成されたシステムの可用性を高めるように設定を追加・変更する
  • 誤って公開されてしまった特定の Web ページにアクセスさせないように AWS の特定のサービスを設定する
  • 侵害されてしまったAWSアカウントを調査し、影響範囲を特定し是正を行う
  • AWS 環境上でログを分析し、攻撃者の情報を特定する

期待される効果

上述の通り、AWS Jam では実務の中で発生し得るトラブルや要件がストーリーとして与えられる事が多いため、AWS Jam を学習コンテンツとして活用することにより、例えば以下の効果が期待できます。

  • 自身のスキルの現在地を確認
    • 座学でのインプットだけでは気付けない、自身のスキルの現在地や不足している知識を発見できます
    • ある程度理解しているサービスであっても、与えられた要件をクリアするためには何を使えば良いか等、自身の知識をフル動員して取り組んでいくことになるため、自身の知識の定着やさらなる理解にもつながります
  • 実務に近いストーリーを体験
    • 単純に AWS サービスに関する知識を問うのではなく、ストーリーに沿って問題解決を進めていくため、実務ではどのような問題が発生するのか、それに対して AWS の各種サービスや機能がどう役立つのかを体験することができます
    • 従来こうした体験は実務の中で身につけていく事が多かったかと思いますが、AWS Jam を利用することで、実務の中で獲得するような体験を学習コンテンツを通して得られます
  • 学習意欲の向上
    • 個人的な経験則もありますが、AWS Jam で解決できなかったチャレンジがあると、「あれはどんな機能を使うべきだったんだろう」という気持ちになり、自然と学習に対するモチベーションも上がりやすいです
    • AWS Jam で与えられるチャレンジは初学者向けの簡単なものから、ある程度実務経験があっても頭を悩ませる様なやりごたえのあるものまで幅広く揃っているため、長い目で見ても利用し続けられる学習コンテンツでもあります

AWS Jam の利用パターン

AWS Jam にはいくつかの利用パターンがあります。

AWS Journey (AWS Skill Builder)
  • 1人で好きなタイミングに取り組むことができる、個人学習コンテンツとしての AWS Jam です
  • 利用には、AWS Skill Builder の個人サブスクリプション以上の契約が必要です
AWS Jam イベント (AWS Skill Builder)
  • 複数のチームに分かれて与えられた時間で同じチャレンジに取り組み、クリア状況を競う様な学習イベント形式で AWS Jam を利用できます
  • 利用者側でイベントの作成や利用するチャレンジの選定を行うため、チームにあったチャレンジ内容を設定することができます
  • AWS Skill Builder での AWS Jam イベントの利用には、AWS Skill Builder チームサブスクリプションの契約が必要です
AWS Jam イベント (AWS クラスルームトレーニング)
  • AWS クラスルームトレーニングの一部コースは、AWS Jam と組み合わせて提供されるものがあります
  • AWS Jam が付属するコースを受講すると、トレーニング期間が 1 日追加され、最終日にトレーニング内で取り扱った内容に関する AWS Jam のチャレンジに取り組む事ができます
  • AWS クラスルームトレーニングの場合、インストラクター側でイベントの作成やチャレンジの選定を行います
  • AWS Jam 対応のクラスルームトレーニングについては、AWS クラスルームトレーニング をご確認ください
AWS Jam イベント (AWS 主催イベントでの開催)
  • AWS Summit や AWS re:Invent など、AWS 主催のイベントでは AWS Jam が開催されることがあります
  • 事前の参加登録等が必要になりますが、こうしたイベントにて AWS Jam を体験することができたりします
  • 参考 : AWS Jam 実施レポート (AWS Summit Japan 2024)

AWS Jam の実際の画面

AWS Jam についてより具体的なイメージを持っていただくため、AWS Jam の実際の画面の一部をご紹介します。(チャレンジ内容のネタバレ防止のため、マスクを多めにかけています)

AWS Jam に参加すると、このようなチャレンジ一覧画面を確認できます。AWS Jam では、この画面から取り組むチャレンジを自由に選択する事ができます。

チャレンジ一覧画面
(画面をクリックすると拡大します)

こちらはチャレンジの詳細画面です。チャレンジ毎に設定されたストーリーや要件を確認する事ができます。AWS Jam のチャレンジは 1 つ以上のタスクから構成されており、各タスクで求められる要件を満たす様に、実際の AWS アカウントを操作していきます。

チャレンジ詳細画面
(画面をクリックすると拡大します)

各タスクは、タスク毎に与えられた条件を満たすとクリア扱いとなり、タスクに設定されたポイントを得ることができます。AWS Jam イベントでは、獲得したポイントによって、チーム間で競い合います。AWS Jam 上での主な回答パターンは以下 2 つです。

  • AWS アカウントで特定の設定を行うなど、決められた条件を満たすとクリアになるもの
  • 特定の文字列を AWS 環境から探し出し、入力するもの

タスクの詳細画面
(画面をクリックすると拡大します)

また、当然自力ではクリアができない場合も発生します。その場合には、各タスクに用意された手がかりを利用する事ができます。一方で、手がかりを利用するとクリア時の獲得ポイントが減ってしまうため、チーム間で獲得ポイントを競う AWS Jam イベントにおいては、どのタイミングで手がかりを利用するか、といった戦略も重要になってきます。

手がかりを利用
(画面をクリックすると拡大します)


AWS Skill Builder での AWS Jam イベント利用のススメ

ここまでで AWS Jam についての概要を説明してきました。前述の通り AWS Jam にはいくつかの利用パターンがありますが、Skill Builder の AWS Jam イベントを活用することで、より組織としての人材育成の取り組みを強化することができます。

最後に、Skill Builder で利用できる AWS Jam イベントのもう少し詳細な説明と、期待される効果についてご紹介します。

AWS Skill Builder での AWS Jam イベントとは

各利用パターンの中でも概要を紹介しましたが、チームに分かれて同時に AWS Jam に取り組む事ができるイベントを開催できる仕組みが AWS Jam イベントです。
AWS Skill Builder チームサブスクリプション を契約することで、好きなタイミングでプライベートな AWS Jam イベントを開催することが可能となります。
また、Skill Builder で AWS Jam イベントを開催する場合、AWS Jam に存在する 100 以上の多様なチャレンジから利用するものを自由に選択することができます。そのため、自分たちのスキル状況や学習目標に合わせた柔軟な AWS Jam イベントの利用が実現できます。

  • 初学者向けに基礎知識を身につけて欲しい → 簡単なチャレンジを多くセットし実施
  • 経験者により高度なスキルをつけて欲しい → 難しいチャレンジを多くセットし実施
  • クラウドセキュリティに関するスキルをつけて欲しい → セキュリティ系のチャレンジを多くセットし実施
  • 業務が忙しくてあまり時間が確保できない → 1,2個のチャレンジのみセットし短時間で実施

チームで取り組むことでさらなる学習効果を獲得

AWS Jam イベントの大きな特徴の一つが「チームで取り組む」ことです。Skill Builder で AWS Jam イベントを利用することで自社メンバーだけのプライベートな AWS Jam イベントを開催できるため、メンバー間でコミュニケーションを行いながら学習を進める機会を創出することができます。

「他者と知識を共有して問題を解決する」体験

自分が知らないことを他のメンバーに教えてもらったり、逆に自分が得意な分野を他のメンバーに教える、といった能力は実業務において重要な要素のひとつかと思います。

AWS Jam イベントではチームで同じチャレンジに取り組むことになるため、自然とメンバー間のディスカッションやナレッジ共有の機会が発生します。そのため、AWS Jam イベントではチームとしてコミュニケーションをとりながらチャレンジに取り組む様な進め方が推奨されます。

効果を高めるための取り組み例としては モブ/ペアワーク があります。複数人で1つの作業に取り組む開発手法の 1つですが、AWS Jam イベントに組み込むことでより高い効果が期待できます。詳細な取り組み方については、以下記事をご参照ください。
AWS Jam 実施レポート @ AWS Summit Tokyo 2023

また、普段業務であまり関われていないようなメンバー同士でチームを組んでもらうことで、業務だけでは実現できないナレッジ共有の機会も創出することができます。このように、Skill Builder を利用したプライベートな AWS Jam イベントを活用することで単純なスキルアップ以外にも様々な効果を期待することができます。

組織として学習を推進する取り組みが実施できる

人材育成の取り組みを推進してもどれくらい学習を進めるかは結局個人任せになってしまう、という話はよくある課題なのではないでしょうか。各個人で意欲を持って学習を進めてもらうことは確かに重要ですが、一方で組織としてビジネスを成長させていくためには、学習効果を各個人に依存するのではなく組織としてもスキルを向上させる取り組みを推進していきたいところです。

Skill Builder の AWS Jam イベントを活用することで、学習を個人任せにするのではなく、組織として推進する定期的な学習イベントを立ち上げることができます。
例えば、以下の様な取り組みを推進することが可能です。

  • 組織として身につけてほしいスキルや目標をメンバーに周知し、基本的には各個人で学習を進めてもらう
  • 2 ~ 3 ヶ月に一度など、Skill Builder の AWS Jam イベントを定期的に開催し、各個人で学習した内容の定着やメンバー間でのナレッジ共有などを実現
  • AWS Jam イベント後にメンバー間で振り返りを行い、学習方法やコンテンツについてナレッジ共有
  • 上記の繰り返し

上記の様な取り組みを行うことで、各個人に学習を任せるのではなく、組織としてスキルアップを実現していくような状態を実現することができるはずです。


おわりに

本記事では、AWS が提供する学習コンテンツの 1種である AWS Jam についてご紹介しました。

AWS Jam は実務に近いユースケースに沿って実際の AWS 環境上で問題を解決しながらスキルを身につけることができる実践型の学習コンテンツです。特に、AWS Skill Builder チームサブスクリプションを契約することで、AWS Jam イベントを自社の状況に合わせて柔軟に活用できるようになります。

AWS スキルの向上に課題を感じている方や組織としての人材育成の取り組みを強化したい方は、AWS Jam の活用を検討してみてはいかがでしょうか。


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筆者プロフィール

大前 諒祐
クラスメソッド株式会社 AWS事業本部ソリューション部
AWS認定インストラクター

AWS に関する環境構築やコンサルティング、プリセールス等の業務に従事したのち、社内エンジニア育成や新規サービス企画等を経て、2023 年より AWS 認定インストラクターとして活動中。
APN AWS Top Engineers(2020-2023)

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