クレディセゾンのデジタルトランスフォーメーション加速に向けた
IT 戦略の策定とクラウドジャーニー
2025 年までに 8 割のシステムを移行予定
2021
カード会員数 3,600 万人を擁するペイメント事業を中心に、ファイナンス事業や不動産関連事業などを手がける株式会社クレディセゾン。全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する同社は、2019 年より与信審査など約 40 の基幹周辺システムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行するプロジェクトを開始。デジタルマーケティング基盤やスコアリングサービスなどの新規サービスは AWS を中心としたクラウドファーストで開発し、デジタル化を加速。2019 年には Amazon Connect を活用した入金督促システムを開発し、月間 20 万件の架電を自動化する取り組みも始めています。
金融機関への導入実績が豊富なことを評価して AWS の採用を決めました。AWS は常に機能がアップデートされ、最新のサービスが拡張されていくことが魅力です。私たちも人材・組織・ビジネスを変革し、DX を進めていきます
吉田 学 氏
株式会社クレディセゾン
デジタルイノベーション事業部 デジタルプラットフォーム開発部長
コストの抑制と DX の加速を目指して基幹周辺システムのクラウド化に着手
顧客本位の先進的なサービスを提供するクレディセゾン。これまで『永久不滅ポイント』『カード年会費無料』など数多くの独自サービスを世に送り出してきました。現在は中期経営ビジョンに「Neo Finance Company in Asia」を掲げ、お客様のライフイベントや企業のビジネスサイクルに寄り添い、多様なサービスを提供するファイナンスカンパニーを目指しています。
IT 戦略としては、2008 年から 2018 年まで約 10 年かけて、顧客管理、決済承認プロセス、入出金管理などを担う基幹システムをメインフレーム上に再構築しました。次のステップとして乗り出したのが、入会審査、与信管理、債権回収などクレジット事業のコア業務をサポートするサブシステム群(基幹周辺システム)の更新・モダナイズ化です。「モノリシックな構造で部分最適で作られていた基幹周辺システムは機能の重複も多く、市場の変化に対応するのが難しくなっていました」と語るのは、基盤統括部長の伊東達也氏です。
そこで同社は基幹周辺システムの機能を整理して絞り込み、移行が可能なシステムはすべてクラウドへリフトする方針を定めました。クラウド化によってコストを抑制し、DX を加速するのが狙いです。移行先は、複数社のクラウドサービスの中から、コスト、耐障害性、金融機関への導入実績、提供サービス数の 4 つを軸に検討し、AWS を採用しました。
「決め手は金融機関への導入実績です。当時、金融機関の FISC 安全対策基準や監査に十分対応できると判断できたのは AWS だけでした。加えて、PCI DSS に準拠していたこともポイントになりました」とデジタルイノベーション事業部 デジタルプラットフォーム開発部長の吉田学氏は語ります。
電子帳票インターフェースの AWS 移行でインフラコストを年間 1 億円削減へ
AWS の採用決定後、2019 年 5 月に 1st プロジェクトとして、年間約 200 万件の与信業務を司る初期与信と途上与信の 4 システムを移行しました。以降は保守切れのタイミングで基幹周辺システムの移行を進め、すでに 2017 年から AWS 採用済みのシステムも含めて 22 システムが AWS 上で稼働しています。
「2025 年までに全体の 8 割を移行する予定で、今後 10 年間で 38 億円の IT コスト削減を見込んでいます」(伊東氏)
AWS に移行した基幹周辺システムの中でも象徴的なのが、提携先と同社をつなぐ電子帳票システムのインターフェースです。基幹システムからデータを取得して帳票イメージに成型し、電子帳票システムに受け渡すバッチシステムですが、月間 2,500 万ページもの電子帳票を作成するため、障害や遅延が発生すると提携先の業務に支障をきたします。そのため、慎重な移行が求められました。
オンプレミスのサーバーを Amazon EC2 上に移行し、基幹システムと AWS Direct Connect で接続するプロジェクトにおいて、基幹システムからの機能の切り分けや、サーバー OS やミドルウェアの変更を実施しました。
「イニシャルコストとランニングコストを合わせて年間 1 億円の削減を見込んでいます。効果はそれだけではなく、バッチ処理の遅れによって後続の業務に影響を及ぼす不安も払拭できました」(伊東氏)
Amazon Connect で自動架電システムを構築
月間 20 万件の督促業務を自動化
基幹周辺システムと並行し、同社が加速させているのがデジタルサービスのクラウド化です。同社は既存システムを運用する IT 部門と別にデジタル部門を立ち上げ、スマートフォン向けアプリ、スコアリング、ポイントサービス、デジタルマーケティングプラットフォームなどを AWS 上で開発しています。2019 年 9 月にはデジタルとリアルの融合を目指し、セゾンカードで 500 円以上利用したお客様に、毎月抽選で現金 1 万円をプレゼントする『セゾンのお月玉』のサービス基盤を AWS 上に構築しました。
また、AWS のアジリティを活かした開発の中で、ユニークな試みのひとつが、Amazon Connect によるコールセンターのオペレーター業務の自動化です。これまで、月間 30 万件のクレジットカードの延滞に対する入金督促は、オペレーターが直接電話をかけて行っていましたが、人力では限界がありました。
そこで、コンタクトセンターサービスの Amazon Connect と、テキスト読み上げサービスの Amazon Polly を組み合わせて、自動架電と自動音声で入金を促すシステムを開発しました。プロジェクトは、2019 年 6 月から 11 月までの 6 ヶ月で実施し、12 月より利用を開始しています。
「Amazon Connect と Amazon Polly の組み合わせは、パッケージベースの自動架電システムと比べてイニシャルコストが圧倒的に安価でした。システムは AWS Lambda と Amazon DynamoDB を中心にサーバーレス / マネージドサービスで構成し、運用負荷をかけない構成としました。架電履歴を債権回収システムと連携し、運用ミスを起こさない工夫もしています」(吉田氏)
現在は、一般の延滞者には自動架電督促システムを利用し、ロイヤルカスタマーに対しては、オペレーターが電話をかけるハイブリッドで運用中です。
「月間 20 万件ほど自動架電できるようになり、人力ではアプローチできなかった延滞者に対しても連絡することが可能になりました。オペレーターの工数に換算すると 100 人分に相当し、生産性が飛躍的に向上しています」(吉田氏)
人材・組織・ビジネスを変革し DX のさらなる加速へ
同社では今後も基幹システムの領域は、API などの連携基盤を整備して開発効率を高め、基幹周辺システムは、コストや耐用年数などを勘案しながら計画的に AWS 上にマイグレーションし、マイクロサービス化を進めていく計画です。さらに、新規サービスはクラウドファーストで立ち上げ、デジタルシフトを図っていくといいます。
組織面では、現在の IT 部門とデジタル部門の連携・人材交流の仕組みを一歩進めて、既存 IT と DX、ウォーターフォールとアジャイルといった対立を超え、事業側がデジタルで実現したいことと、システムで実現できることをスムーズに調整する柔軟の高い組織を作っていくことを構想しています。
「市場の変化に合わせて人材・組織・ビジネスを変革し、クレディセゾン全体の DX を加速していきます。AWS は常に機能がアップデートされ、最新のサービスが拡張されていくことが魅力です。私たちのサービスも進化を続けていきます」(吉田氏)
吉田 学 氏
伊東 達也 氏
カスタマープロフィール:株式会社クレディセゾン
- 設立: 1951 年 5 月 1 日
- 資本金: 759 億 2900 万円
- 従業員数: 4,319 人(2021 年 3 月 31 日現在)
- 事業内容:ペイメント・リース・ファイナンス・不動産関連・エンタテインメント
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 基幹周辺システムの IT コストを 10 年間で 38 億円削減(見込み)
- 電子帳票システムインターフェースの AWS 移行で、イニシャルコストとランニングコストを合わせて年間 1 億円削減
- Amazon Connect を用いた自動架電督促システムで、月間 20 万件の自動架電を実現し、オペレーター 100 人分の工数を自動化
- 人材・組織・ビジネスを変革し、クレディセゾン全体の DX の加速へ
ご利用中の主なサービス
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon Connect
Amazon Connect は使いやすいオムニチャネルのクラウドコンタクトセンターであり、企業が優れた顧客サービスを低コストで提供するのに役立ちます。
Amazon Polly
Amazon Polly は、文章をリアルな音声に変換するサービスです。テキスト読み上げができるアプリケーションを作成できるため、まったく新しいタイプの音声対応製品を構築できます。
AWS Lambda
AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。