導入事例 / 自治体

2024
三沢市

三沢市、移住相談サービスに Amazon Bedrock を採用。生成 AI による回答で自然な対話を実現し、職員の負荷軽減も実現

自然な対話と高精度な回答を実現

生成 AI のシステムを既存の予算内で実現

職員の負荷削減とサービス品質の向上

概要

青森県三沢市はコロナ禍を契機に、チャットボットによる自動応答サービスを開始し、移住検討者への情報提供を強化しました。2024 年には利用していた応答サービスのサポート終了を機に、Amazon Bedrock を活用した新システムへ移行。文脈を理解した自然な対話や高精度な回答が可能となり、サービスレベルの向上と職員の業務効率化につながっています。コストを抑えた先進的な生成 AI 活用事例として、他の自治体からも注目を集めています。

三沢市

課題 | LINE のチャットサービスで気軽な移住相談を促進

三沢市には米軍と自衛隊が利用する三沢基地があり、日本人と外国人が共に暮らす国際色豊かな町として知られています。美しい自然の中で釣りやキャンプが楽しめるほか、温泉や新鮮な魚介類など、多彩な魅力を持っています。そして同市では、「住みたくなるまち」を目指して移住者誘致に取り組んでいます。ホームページでの情報提供や、首都圏での移住フェア・相談会を通じて移住希望者への情報提供を行っていますが、2020 年から広がったコロナ禍により対面での相談活動が制限され、オンラインでの対応を迫られました。「三沢市について気軽に知ってもらい、移住について考える機会を増やしたいと考えつつも、大きな予算を確保するのが難しかったため、できるだけコストを抑えて活動できる仕組みを模索しました」と語るのは、三沢市で移住促進や人口減少対策を担っている政策部 政策調整課・企画戦略係長の白銀壮太郎氏です。

移住支援のオンラインサービス強化に向けて三沢市は、株式会社ヘプタゴンに相談を持ちかけました。ヘプタゴンは三沢市の課題に対して、町内会で使用する LINE アプリをアマゾン ウェブ サービス(AWS)環境上に構築した実績を活かして、LINE のチャットボットで移住希望者からの質問に答える仕組みを提案しました。このチャットボットでは、三沢市の移住促進マスコット『みさわしつじ』が移住に興味を持つ方からの質問に、自動で回答します。自動回答が難しい質問については返答を保留し、職員が手動で回答する仕組みです。システムは AWS 環境のサーバーレスアーキテクチャの構成を採用してコストを抑え、2020 年 12 月にサービスをリリースしました。従来の対面や電話での相談は、相談者にとって敷居が高いところもあるため、チャットボットを介して気軽に質問できるこの仕組みは注目を集め、移住相談の件数増加につながりました。

その後、チャットボットの自動返信機能に使用している外部サービスが 2024 年にサポート終了を迎えることとなり、同市は代替システムを検討する必要に迫られました。また、数年の運用でいくつかの課題も見えてきました。その 1 つが、質問に対して自動返答ができるのはあらかじめ辞書に登録された内容のみで、派生する質問があっても会話のようなやり取りは困難という点です。もう 1 つは、職員による手動での回答における業務負荷の増加です。平日の営業時間内はなるべく 30 分以内に応対していたものの、早朝・夜間・休日などは即時対応が難しいほか、1 件あたりの対応は 5~10 分程度とはいえ、集中すると職員の業務負担も上がっていました。

三沢市 政策部 政策調整課・主査の簗場真衣子氏は以前の状況を次のように振り返ります。「チャットの特性上、詳細なご案内が難しい部分があるうえ、ボットの質問設定は当市の職員の想定に基づいており、ユーザーが本当に求める情報を網羅できていないのではないかという懸念もありました。そして登録者数も次第に伸び悩んでいたため、精度を高めたいと考えました」

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Amazon Bedrock を使った新しい仕組みではほとんどの質問に対して即座に対応できます。回答する情報も充実していて、文脈に従って、国際交流が盛んなことや特産物などの案内もしてくれます"

白銀 壮太郎 氏
三沢市 政策部 政策調整課 企画戦略係長

ソリューション | 回答精度の向上と、職員の負担軽減を目指す

これらの課題解消のためにヘプタゴンが提案したのは、AWS の生成 AI サービス Amazon Bedrock の活用でした。従来の返答サービスの機能を代替できるだけでなく、生成 AI によって適切かつ自然な回答が可能で、職員による回答の工数削減にもつながると考えたからです。三沢市は生成AI を活用する先進性に注目し、採用を決めました。「自治体での先進事例として活用し、業務の効率化を図るとともに、問い合わせをされる方の不満解消にもつながるのであれば、非常に意義があると考えました」(白銀氏)

一方、Amazon Bedrock を活用してシステムを再構築するにあたっては、複数の要件を満たす必要がありました。まず、既存のチャットボットの使いやすさを損なうことなく、『みさわしつじ』の親しみやすい口調や文体を維持することです。さらに、移住相談という重要なサービスとして、回答の正確性と信頼性を向上させることも重要な課題でした。

また、生成 AI の問題点の 1 つに、誤情報の生成があります。そこでヘプタゴンは回答処理の仕組みでは、特に誤情報の発信防止に重点を置き、大きく 3 段階の回答プロセスを考案/実装しました。まず、特定のキーワードを含む質問に対して、事前に検証済みの辞書データから確実な情報を提供します。次に、辞書に該当する情報がない場合、ベクトルデータベースに蓄積された回答データから、Amazon Bedrock の Retrieve API を用いて最適な回答を検索し、一定の信頼度を満たす内容を自動回答します。そして、この時点で十分な信頼度が得られない場合は、RetrieveAndGenerate API を活用して Claude モデルによる回答文案を生成し、職員による確認・修正を経て返答する仕組みです。

このような段階的なアプローチにより、応答の精度を大幅に向上させながら、人的チェックも組み込んだ安全な運用ができる仕組みを実現。Claude モデル自体の性能向上も相まって、文脈を理解した自然な対話が可能となり、ユーザーの多様な質問に対して適切な回答を提供できるようになりました。システムの刷新にあたってはコスト面での懸念もありましたが、AWS 環境のサーバーレスアーキテクチャをそのまま継続して利用することで、従来の予算内で運用を実現しました。 

アーキテクチャ

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導入効果 | 高い利便性と自然かつ適切な対話を実現

多くの自治体が人口減少に直面し、職員の業務効率化を目指している状況で、生成 AI に対する期待は高まっています。その中で三沢市の移住問い合わせチャットボットは、「行政としての回答」としてふさわしいレベルを目指しています。新しい回答システムのうち、AI が回答を生成する部分については、より精度を高めるため庁内での検証と、ガイドラインの制定とそれに伴うチューニングを経て一般公開される予定です。動作を確認した白銀氏は「とても使い勝手が良くなっています。以前は質問に対して『ちょっと待ってください』ということも多かったのですが、新しい仕組みではほとんどの質問に対して即座に対応できます。回答する情報も充実していて、文脈に従って、国際交流が盛んなことや特産物などの案内もしてくれます」と語ります。

簗場氏は「移住相談といっても、さまざまな質問が寄せられます。回答内容に対して追加で質問をいただいても適切にお答えして会話が進められるようにしたいです。青森県で有名なのは弘前市や八戸市ですが、三沢市としては今回のような先進的な取り組みを通じて、市としても認知を広げていきたいです」と期待を寄せています。そして、今後のデジタル技術の活用について白銀氏は「今回の生成 AI 導入をきっかけとして、市民サービスの向上と職員の働き方改革に向けたクラウドサービスや AI を活用したデジタル化につながっていけば理想的だと考えています。DX 推進課では、クラウドサービスによるデータ管理の効率化や、市民と職員双方からの問い合わせ対応の自動化も検討しているところです」と語っています。

カスタマープロフィール:三沢市

青森県の南東部に位置しており、東は太平洋に面し、西は小川原湖に臨む。米軍と自衛隊が共同使用する三沢基地があるため、約 3 万 8,000 人の人口に加え、多くの米軍人、軍属及びその家族が暮らし、異国情緒漂う国際都市として独自の発展を続けている。自然豊かな環境が広がり、釣り、キャンプといった観光・アクティビティも充実。温泉も点在しているため、癒しの場としても人気が高い。漁業も盛んで、新鮮な海の幸も味わえる。

白銀 壮太郎 氏

白銀 壮太郎 氏

簗場 真衣子 氏

簗場 真衣子 氏


AWS アドバンストティア サービスパートナー

株式会社ヘプタゴン

東北では初となる AWS アドバンストティア サービスパートナーに認定されたクラウド専業のインテグレーター。東北だけで 100 社 300 プロジェクト以上の AWS の導入実績を持ち、特に、中小規模の企業、サービス向けのインテグレーションサービスを得意とし、地方の企業がクラウドのメリットを存分に生かして事業・サービスを展開するための基盤作りをサポートしている。

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