Amazon Web Services ブログ

より良い暮らしと地域経済活性化に向けたデジタルトランスフォーメーションの加速

アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)は、イノベーションの文化、活発なパートナーコミュニティ、幅広く奥深いサービスを通じて、地域社会をより豊かに、そして地球と人々の発展を支える信頼性の高いテクノロジーを提供することを目指しています。

日本は、最新の国際経営開発研究所(IMD)のデジタル競争力指標(2022年)において、昨年2021年より一つ順位を下げて63か国中29位となりました。また、2021年版情報通信白書(総務省)によると、現在、日本の都市部と地域ではDXの取り組み状況に差があり、都市部はより進み、地域は遅れていることが分かっています。日本の世界における競争力を維持・強化するためにも、国全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が喫緊の課題です。

AWSは、本年2022年9月14日から30日にかけて、北海道、東北、関東、中部・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄の全国7地域に分けて各地域に焦点をあてたオンラインイベント”デジタル社会実現ツアー2022~地域が創る「デジタル田園都市」のベストプラクティス”を開催しました。私たちの初の取り組みとなる地域にフォーカスをあてた本イベントでは、AWSが自治体、スタートアップ、パートナーなどの幅広い関係者とともに、デジタル活用による地域活性化の推進、地域と都市の格差の縮小を目指し、各地域のデジタル化の進捗を紹介するとともに、市民サービスを向上させるDXの事例を中心に紹介いたしました。オンデマンド動画はこちらよりご覧ください。

日本全体のDXを支援

日本政府は、デジタル実装を通じて、地域の社会課題解決、地域の魅力向上の取り組みをより高度・効率的に推進するために、迅速に行動を起こしています。日本のデジタル社会の形成、DXを推進・リードするデジタル庁を2021年9月に設立し、日本全国において、『誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化』を目指す「デジタル社会の実現に向けた重点計画」、および『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』の実現を目指す「デジタル田園都市国家構想」を掲げています。国全体で官民ともにデジタルインフラの整備を積極的に推進するとともに、適切なデジタルスキルを持つ人材の育成、地域・地方特有の課題を解決するデジタルサービスの構築などを行い、誰も取り残されないデジタル社会の推進と実現を目指しています。

日本社会のデジタル化に向けた取り組み

AWSは、お客様によるITシステムのモダナイゼーション(現代化)、安全かつ適切なスピードでのイノベーションを支援することで、日本のDXを後押しし、持続可能な経済成長を加速することにコミットしています。AWSアジアパシフィック(東京)リージョン(データセンター群)と、AWSアジアパシフィック(大阪)の設備・運用関連で、私たちは2011年から累計で1兆3,510 億円を投資しています。

また私たちAWSは、デジタル庁が各府省庁や地方公共団体その他の政府機関による利用を想定して整備を進めるガバメントクラウドへのクラウドサービスの提供を通じて、デジタル庁、自治体、パートナーとの協働の下、日本政府によるデジタル変革の加速を支援しています。AWSは昨年2021年以来、本年2022年もガバメントクラウド にクラウドサービスを提供する事業者の一つに選ばれました。パートナー各社と協力し、公共のお客様がクラウドを活用して、より低コストかつ柔軟に新たな取り組みを迅速に進められるよう引き続き支援してまいります。

自治体との連携によるイノベーションの加速

私たちAWSは、全国の自治体や地域行政におけるイノベーションを支援し、より良い社会、市民生活の実現に貢献するために、様々な自治体、関係団体との連携を図っています。

AWSは2022年9月12日、研究学園都市である茨城県つくば市と、社会課題の解決や新たなサービスの創出に向けて、研究開発型スタートアップ(ディープテック)の成長を加速させるための連携を発表しました。この連携により、つくば市を拠点とするスタートアップは、AWSのスタートアップ支援プログラムとクラウドサービスをより迅速に活用することができるようになります。

またAWSは2022年9月15日、静岡県浜松市と連携し、スタートアップや地域のクラウドエンジニアコミュニティの成長を加速させ、多様性があり、包摂的、持続可能なデジタル・スマートシティを実現することを発表しました。今回の連携により、浜松市を拠点に活動するスタートアップはAWSの幅広いスタートアップ支援プログラムを活用し、都市OS(データ連携基盤)を活用した新たな市民サービスを開発・検証・展開することが可能となります。

つくば市との連携

(写真右)つくば市長 五十嵐 立青氏/(写真左)AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮

浜松市との連携

(写真左)浜松市長 鈴木 康友氏/(写真右)AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮

地域・市民サービスにおけるDXの広がり

自治体におけるスマート農業
高知県はビニールハウスなどを利用して園芸作物を栽培する施設園芸に力を入れおり、単位面積あたりの農業産出高は日本一を誇っています。従前では、データが効果的に共有されていないなどの課題がありました。施設園芸の生産現場でハウス内の環境情報に加えて植物の生育情報(光合成、作物の成長)や収量、収穫時期や農作業などの情報を計測し、植物の情報の「見える化」を図るIoP(Internet of Plants植物のインターネット)を活用した「Next次世代型施設園芸農業」を進めています。ビニールハウス内に設置された環境測定装置から得られる環境データの他、気象データや集出荷のデータ、卸売市場の市況データなどをAWSのクラウドに保存し、それらを地域全体で共有・活用することにより、農家の高齢化や天候に左右されやすい状況においても、農家の皆さん一人ひとりが収穫量を高め、増収技術を向上させることができ、安定した農業経営を可能にし、地域の農業の活性化につなげています。

自治体におけるスマート農業

地域のDXに貢献するスタートアップの活躍

スマートシティ
スタートアップは、公共部門のイノベーションを推進する重要なドライバーです。スタートアップが開発した多くの独創的なソリューションは、公共部門の重要な課題の解決に役立ち、市民に利益をもたらしています。AWSは、スタートアップ企業がビジネスを立ち上げ、構築し、拡大し、成功させるための支援を行っています。

AWS Startup Ramp参加企業で、福岡を拠点に活躍するスタートアップ・株式会社トルビズオンは、人口減少・高齢化による課題、災害時の対応、地域のセキュリティに対して、ドローンを活用したソリューションを提供しています。空にドローンが安全に飛行することのできる道をAWSのクラウドを活用してデザインすることにより、過疎化地域が抱える日常の買い物が困難な状況に置かれている人々、適切な医療にすぐにアクセスすることのできない人々、あるいは災害時の対応などに対して、ドローンを活用して必要品や物資を届ける、地域の見守りを行うなどの取り組みを行っています。佐賀県多久市では、トルビズオンが自治体と連携し、「防災の道」「薬の道」といった地域課題を解決するための空の道を12本作成するなど、地域のより良い暮らしに貢献しています。

スマートシティ

医療のデジタル化

高齢化と離島を多く抱えている長崎県は、遠隔診療や情報の共有化で課題の解決に取り組んでいます。遠隔診療を実現するソリューションを提供するスタートアップ 株式会社インテグリティ・ヘルスケアは、長崎県内の医療機関の情報連携プラットフォームである地域医療連携ネットワークと接続し、AWSのクラウドを利用してオンライン上で診察、疾患管理を行うサービスを開発・提供しています。これにより、医師は診察時のみならず普段の生活の中での患者さんの情報を見ながら最適な診療を行うことができるようになり、医療の質の向上に貢献しています。また、オンライン診療とドローンを用いた薬剤の配送や、難病の患者さんに対してオンライン上で専門医の先生がかかりつけ医にアドバイスを送り、かかりつけ医が患者さんを診療、ケアすることが可能となってきています。

医療のデジタル化

DXを加速するパートナーとの協働

またAWSは、政府、教育、医療、スマートシティなど幅広い分野のパートナーと連携し、地域のDXを支援し、市民により良いサービスを提供することを目指しています。AWS公共部門パートナー(PSP)プログラムは、世界中の政府、宇宙、教育、非営利団体を支援するクラウドベースのソリューションと経験を持つAWSパートナーを認定するものです。

青森と仙台の拠点から「ビジネスの地産地消」を掲げ、クラウドを活用した課題解決を行う AWS 専業のクラウドインテグレーター株式会社ヘプタゴンは、AWS パートナーネットワーク (APN)アドバンストコンサルティングパートナーの一社です。青森県三沢市の移住相談のデジタル化をクラウドで支援し、物理的なインフラや人手に頼らない人工知能(AI)チャットボットを使って移住希望者に情報を提供しています。このチャットボットは、移住要件情報など移住希望者のニーズに双方向なやり取りで対応し、移住・定住に関する問い合わせは10倍に増加する成果を上げています。

デジタルスキル育成への支援

地域の社会課題解決や市民サービス向上のカギを握るDXですが、それを実行するためには適切なデジタルスキルが必要です。しかしながら、AWSの最新の調査結果の通り、日本におけるデジタル人材不足は深刻です。

日本の労働者の 78% がコロナ禍に伴う仕事の変化に対応するため、より多くのデジタルスキルが必要になったと回答した一方、デジタルスキル習得を支援するためのレーニング計画を策定している企業・団体は全体の 5 分の 1 未満であることが明らかとなっています。

デジタル人材の育成を加速させるために、アマゾンは2025年までに2,900万人に無料トレーニングを提供することに取り組んでいます。これまでに、1,300万人以上の人たちがクラウドコンピューティングスキルを利用できるよう支援してきました。

AWSは需要の高いクラウドスキルを身に付けることのできるオンライン学習センター「AWS Skill Builder」や、組織全体でクラウド活用を促進する包括的なスキル向上プログラム「AWS Skills Guild」を提供しています。

AWSの提供する90%以上のサービスや機能はお客様からの意見をもとに開発され、AWSは現在200以上のサービスを展開しています。そして今年2022年から毎月、地方自治体でのデジタル人材の育成を支援するために、自治体向けの研修を開始しました。クラウドの基礎知識のレクチャーから、実践的にAWSを活用するためのハンズオンまで体系的な学習カリキュラムを無償で提供しています。

神戸市は、ガバメントクラウド先行事業に参加し、他自治体へ先駆けて基幹系業務をAWSを基盤としたガバメントクラウドへ移行するための検証を実施しています。また、クラウドサービスを活用し行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために、AWSの研修・トレーニングや検定を取り入れ、クラウド資源を駆使できる職員の育成に注力しています。

高知県デジタルスキル育成

また、AWSは未来のデジタル人材へのサポートも推進しています。AWS Academy は、高等教育機関に対して、業界で広く知られるAWS認定資格の取得や、需要の高いクラウド関連の就業を目指す学生向けにパッケージ化されたクラウド学習カリキュラムを無償で提供するものです。このカリキュラムを通じて、AWS のクラウドイノベーションの最前線を踏まえた教育を提供できるよう教員をサポートし、急成長する業界で学生たちが活躍するために必要なスキルを身に付けられるよう支援します。これまで、日本の 100 を超える高等教育機関で教科としてトレーニングを展開しています。

力を合わせてイノベーションを加速する

私たちAWSは、誰もが健康な地球で尊厳ある生活を送ることができる世界を目指しています。今後も、国や地方自治体、お客様、地域で活躍するスタートアップ、パートナー企業を支援し、クラウドコンピューティングによる社会課題の解決に共に取り組んでいきます。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮