Amazon Web Services ブログ

[開催報告] Amazon Interactive Video Service ローンチセミナー

2020 年 8 月 18 日に新しいサービス Amazon Interactive Video Service (Amazon IVS) について、サービス概要と使い方を実演でご説明するほか、ゲストスピーカー様(株式会社ディー・エヌ・エー様)より現場での活用をご紹介していただくイベントを開催しましたので、その資料公開とともに内容をブログでお届けします。

Amazon IVS は、コンテンツの取り込み、処理、配信までの動画ワークフローを一括でまとめられるマネージド ライブストリーミング ソリューションです。汎用ストリーミングソフトウェアから Amazon IVS を介し、ウェブサイトやアプリへ低遅延のままライブストリームを配信できます。

Amazon Interactive Video Service のご紹介 講演資料 : 動画

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト
廣瀬 太郎

このセッションではソリューションアーキテクトの廣瀬より Amazon Interactive Video Service (Amazon IVS) のご紹介をさせていただきました。
まずは始めに AWS が Amazon IVS という新しいサービスを提供する背景について説明を行いました。ライブ動画配信には一般的な Web アプリケーションとは違った技術スタックや OTT の知識/経験、大規模やワールドワイドでの配信、双方方向コミュケーションのための超低遅延の実現といったものが求められるなど、サービスを始めるには敷居が高くなる傾向があります。加えて超低遅延では視聴体験を損なわないようにプレイヤーも含めて安定性を維持しつつサポートすることが必要になるため、このことが更にハードルを上げる要因となっていました。Seminar_Image1

こうしたライブストリーミングの課題に応えるために AWS が新しく発表した新サービスが Amazon IVS となります。
Amazon IVS はライブストリーミングのための新しいフルマネージドサービスで、OBS や Wirecast のような汎用ストリーミングソフトウェアから Amazon IVS に向けてビデオストリームを打ち上げて頂き、みなさんのウェブサイトやアプリ上で低遅延なライブストリームを配信・再生することができます。チャネル管理やセットアップがほぼ不要で、Player SDK まで提供されているため、動画に関する知見がなくても簡単に低遅延なライブ動画配信サービスを立ち上げることができます。
このサービスが重要視しているのは easy to use 、とにかく簡単に使えるようにすることを重視したサービスとなっています。

Amazon IVS のポイントは大きく以下6点になります。

  • Quick and easy-to-setup:開発者の方から見て構成要素が少なくシンプルな作りになっています。
  • 超低遅延配信:配信側および視聴側のネットワーク環境が安定していれば、概ね3秒未満、 jitter を考慮してもほとんどのケースで5 秒未満に収まるような超低遅延配信をサポートしています。特別なチューニングは不要です。
  • 視聴プレイヤー SDK を提供:JavaScript, iOS, Android のクロスプラットフォームでサポートしているということ。超低遅延配信向けに最適化されているプレイヤー SDK です。
  • Global 対応:配信も視聴も、そのデバイスから地理的に最も近い PoP (Point of Presence) が自動選択されるようになっています。日本も対応しています。
  • Timed Metadata API : 動画のチャンクに API ベースで任意のメタデータを埋め込むことができ、プレイヤーは Player SDK を通じてイベントハンドラーを仕掛ける事ができます。視聴体験をカスタマイズすることができます。
  • 配信時間と視聴時間に基づく従量課金制のサービス: Amazon IVS は実際に配信された、また視聴された時間に準じてチャージされる価格体系になっており、チャネルの上げ下げのようなバックエンドの管理はする必要はありません。公式料金ページはこちらをご参照ください。https://aws.amazon.com/ivs/pricing/

Amazon IVS のユースケースは様々なものが考えられます。単純なライブ動画配信での使用や、超低遅延や Timed Metadata API を活かしたインタラクティブ性というところが特長となりますので、 例えば、ライブコマースや E ラーニング、バーチャルフィットネス、株主総会やカンファレンス、クイズアプリ、ライブイベントや E スポーツなどが想定されます。

最後に、 AWS のメディア系のサービスがいくつかあるので、それぞれをどのように使い分ければ良いのかを簡単にご紹介しました。例えば、ライブ動画配信では AWS には Amazon Elemental Media Services というものがありこちらも利用できます。Amazon IVS はとにかく簡単にセットアップができ、手軽に超低遅延配信を実現することができます。Elemental Media Services は元々放送業界で長年使われてきた技術をベースに仕上げたマネージドサービスというバックボーンがあり、設定できる項目や備わっている機能が非常に豊富です。コンセプトがそもそも異なりますので、要件次第で両サービスを使い分けて頂けると良いと考えています。また、ビデオ会議のような、よりシビアなレイテンシが求められたり、複数の話者が対話するようなケースは Amazon Chime や Amazon Chime SDK をお勧めします。Amazon Kinesis Video Stream は監視カメラやスマートホーム/スマートシティ、工場のオートメーションを図るためのデバイスからのストリームを受けつけ後続処理を行ったりするケースで便利に安価に利用できるサービスです。
それぞれ得意としているものが異なりますので、代表的なこれらのポイントを踏まえて選定頂ければと考えています。

株式会社ディー・エヌ・エー (DeNA) 様からの導入事例のご紹介 講演資料 : 動画

株式会社ディー・エヌ・エー
ネットサービス事業本部ソーシャルライブ事業部 Pococha 企画推進部
水田 大輔 様
ネットサービス事業本部ソーシャルライブ事業部 Pococha システム部
平野 朋也 様

導入事例ご紹介のパートでは2部構成でご説明をいただきました。
前半部では水田様より Amazon IVS をご活用いただく、Pococha のサービスについてご紹介いただきました。Pocoha は DeNA 様が手がけられているソーシャルライブアプリです。ダウンロード数は 170 万以上( 2020 年 7 月現在)です。日本では様々な形で個人が情報発信している一方で、世界ではライバーというライブストリーミングによって自分を表現する新しい自己表現の形が注目されています。 Pococha では日本の良さを活かしながら個人でライブストリーミングでどう自己表現することができるかについて様々な取り組みを行われています。

  • Pococha のコンセプト
    「 Live Link Life 」であり、Pococha を通じて人と人が「 Link 」して、それが日常の「 Life 」につながっていくという意味が込められています。ライバーとそのファンであるリスナーの関係が例えば、週に 1 回放送されるようなテレビ番組や雑誌のコンテンツのようなものではなく、月曜日から日曜日まで毎日好きなときに配信ボタンを押せばアプリを 1 回押せばすぐにライバーとリスナーがつながれて日々のコミュケーションの中で日常の彩りが添えられていくのが Pococha 、ライブコミュニケーションの良さです。
  • Pococha のミッション
    「 Pococha のライバーを社会からリスペクトされる存在に」をミッションとして上げられています。このミッションを達成するにはまだまだこれからであり、ライバーやリスナーと一緒に Pococha 一丸となってい実現していく世界だと考えられている。ライバーとして成功するというとはどういうことか、 Pocohca が広がっていく中でライバー、リスナーはどういう関係になっていくのかというテーマも含めて、コミュニティと一緒にこれからの Pocohca のあり方を考えて築き上げていければいいと考えられています。
  • Pococha の特徴
    Pococha はライブストリーミングに加えて、ファミリーという特徴的な機能があります。リスナーとライブストリーミング以外の場所や時間でグループチャットを通して、日々の悩みや目標についてお互いがまるで家族のように向き合えたりコミュニケーションできる場所を提供されています。熱量の高いコミュニティづくり。このファミリーの熱量、ライバーとリスナーがお互いの存在を肯定しあえたり、これからのライバーとしての成長を追いかけられる環境をきっちり提供してサポートしていくのが Pococha のコミュニティサービスとしての一つの重要な側面です。
  • Pococha が提供していく価値
    Pococha にはライブコミュニケーションアプリという側面とコミュニティサービスという側面があります。運営にはコミュニティマネジメントを重視されています。特徴的な取り組みは大きく 2 つあり 1 つは「ぽこフォーラム」です。毎月1回、ライバーとリスナーに向けて情報発信とコミュニケーションの場所を用意されています。もう 1 つは「 POCO BASE 」 というイベントスペースでライバーと膝を突き合わせてこれからの Pococha がどうあるべきなのか、これからの Pococha を代表するライバーはどんなクリエーターであるべきなのかなど、ディスカッションする場を設けられています。また、ライバーだけでなくリスナー編も実施されており、あるべきファンの応援の仕方はどんなものか、どう発信していくべきなのかなどお互いがお互いに意見を出し合って一緒に模索していく場所をつくられています。ユーザーと共に共創していくプラットフォームを目指されています。

後半は平野様より Amazon IVS の導入事例について 3 つの視点からご説明していただきました。

Amazon IVS が提供するソリューション
Pococha が Amazon IVS を導入する決め手になったエピソードをご紹介いただき、 Amazon IVS が DeNA 様の課題に対してどういったソリューションを提供したのかを解説いただきました。
Pococha では 2 つの課題に直面されていました。まず 1 つ目はサービスの拡大や世界情勢に起因して、ユーザーの利用時間が急激に増加したことです。トラフィックバウンドなワークロードにおいては単純にサーバを足すだけではスケーラビリティの確保が難しく、キャパシティが頭打つ可能性がある状況でした。また、通常のユーザー増加と異なり、今回は収束によって一時的な対応をすれば良いのか、それとも定常的な対応にするべきなのかなど、判断は非常に難しいものでした。Amazon IVS は他の AWS のサービス同様、フルマネージドにスケーリングするため、これらの判断の難しいスパイクを意識することなく、必要なときに必要なインフラを用意することができ、効率的にインフラの運用が出来るようになるため、配信インフラの心配をすることなく、ユーザーに安定した配信環境を提供出来るようになりました。
そしてもう1つ目は増加したユーザーの多様なネットワークコンディションに対応する必要が出てきたことです。Pococha ではモバイルで視聴・配信するという性質から、多くのネットワークコンディションに対して適切な映像を配信する必要がありました。遅延やデータサイズをこれらのすべてに対してチューニングするのは非常にリソースを要するため、 Pococha では長年の課題となっていました。Amazon IVS ではアダプティブビットレートに対応したトランスコードとそれに最適化された PlayerSDK を提供しています。これは開発者がチューニングを意識することなく多くのユーザーに最適な映像を届けることが出来るようになることを意味します。
このように Amazon IVS は DeNA 様の 2 つの課題の解決策となりました。またこの他にも映像以外の情報を送る Timed Metadata API などの機能があり、その他の課題にも対応できる可能性があります。

配信・視聴を試す
Amazon IVS をまず使ってみるにはどうすればいいのか。DeNA 様で検証をされた際の環境を解説いただきました。
Amazon IVS を使って配信・視聴を試すのは非常に簡単です。まずは AWS のポリシーで API を有効にし、そのあとは API 経由で配信に必要なストリームキーと視聴 URL を取得し、それぞれのクライアントで配信・視聴するだけです。DeNA 様では以下の手順で配信・視聴をご確認いただきました。これらの作業は Macbook 一台で試していただくことができました。

  •  IAM ポリシーの追加・アタッチ
  •  CreateChannel API の呼び出し
  • ライブ配信用ソフト OBS (Open Broadcaster Software) での配信
  •  ffplay での視聴

実際に開発に組み込む
実際に開発環境に組み込んだ際の状況を共有していただきました。
これまで、 Pococha では下図のような構成でアプリサーバから配信基盤に対して StreamKey と、視聴 URL を取得する作りになっていました。この構成は、 IVS と同じインターフェイスになっています。Seminar_Image2

Amazon IVS 移行後は、下図のように丸々配信基盤が入れ替わる形になります。
これまで配信基盤の API を叩いていた箇所を Amazon IVS に向けるように変更し、レスポンスのパースを修正するだけで解決されました。

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これらの変更は、 2 日程度で実装することができました。現在は Ruby や Go に対応した SDK が提供されているためもっと早く実装ができる可能性があります。
最後に iOS での対応についてご紹介いただきました。
iOS では、 IVS に最適化された AmazonIVSPlayer.framework を使うことが出来ます。このフレームワークは Amazon IVS の視聴に最適化されていて、低遅延やアダプティブビットレートの恩恵を最大限に受けることができます。また、遅延時間やフレームドロップなどの詳細な情報が取得出来ます。 AmazonIVS Player は大きく分けて、IVSPlayer とIVSPlayerLayer の2つのコンポーネントを提供します。この関係は、AVFoundation の AVPlayer と AVPlayerLayer に非常に似ているためこれまで AVPlayer を使っていた方には、すぐに理解出来るようになっています。

Amazon Interactive Video Service 実演 動画

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト
廣瀬 太郎

最後のセッションでは再びソリューションアーキテクト廣瀬より Live Streaming with Amazon Interactive Video Service ワークショップを実演をいたしました。内容としては大きく 2 つあり、まず 1 つ目は Amazon IVS を使用して簡単に超低遅延ライブ動画配信の実現を体感できるデモとなっています。 2 つ目はインタラクティブなコミュニケーションを行う例として Timed Metadata API を使用したクイズの回答を行うアプリケーションのデモとなっています。

超低遅延ライブ動画配信のデモでは「 IVS チャネルを作成する」 , 「ストーリムを開始する」 , 「クライアントプレイヤーでライブストリームを表示する」という、たった 3 ステップの数分の作業で遅延が 2 秒から 3 秒となる、超低遅延のライブ動画配信サービスを開始できることをご紹介しました。

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続いて、 Timed Metadata API のデモとなります。 Timed Metadata API では動画のチャンクファイルに ID3 メタデータを挿入できることができ、 Player SDK はその動画チャンクファイルを受け取ったときにコールバック処理を行い任意ロジックを実行することができます。この仕組みを使用して、クイズのキュー出しをするインタラクティブなアプリケーションのデモを実施しました。

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Amazon IVS の CLI より Timed Metadata API を使用してメタデータを挿入します。
プレイヤー側に Timed Metadata APIで挿入したメタデータがクイズとして表示されていることを確認いただけます。
このように視聴している時点に基づいてクイズのキュー出しができるデモとなっています。

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最後に

今回は新しいライブストリームを実現するサービス Amazon IVS の全体的な紹介をした上で、Amazon IVS を活用されているゲストをお迎えし、ご活用実例についてお話し頂きました。ご登壇いただきましたゲストの皆様、ご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。 Amazon IVS は超低遅延のライブ動画配信基盤を構築する際にとても役に立つマネージド型のソリューションとなります。従来開発や設定を行う必要があったこの領域において、うまく本サービスを利用することで簡単に短時間でライブ動画配信を実現することが可能になりますのでぜひご検討ください。

参考情報:

このブログはソリューションアーキテクト長谷川 が担当しました。