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AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads によるモダナイズしたアーキテクチャの見積り方法

2022年11月18日に、AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads の一般提供が開始されたことを発表しました。このツールを使用すると、Microsoft ワークロードをモダナイズして AWS クラウドでオープンソースのソフトウェアとクラウドネイティブサービスを使用する新しいアーキテクチャにするためのコストを見積もることができます。クラウド向けに構築されたテクノロジーを使用する利点を評価できるため、総保有コスト (TCO) の削減、運用上のオーバーヘッドの削減、ソフトウェアライセンス管理の排除、デベロッパーの生産性の向上を実現できます。

AWS の新規または既存のお客様、コンサルティングパートナーのいずれであっても、この新しいツールを使用すると、AWS でモダンアプリケーションを実行するためのコストを大まかに見積もることができます。使用するすべての AWS サービスや最終的なアーキテクチャについて事前に知っておく必要はありません。AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads により、モダナイゼーションの道のりを進み始めるために必要な情報を迅速に手に入れることができます。この投稿では、このツールを使用して数回クリックするだけで見積もりを取得し、ワークロードに関する概観的な情報を取得する方法を紹介します。

「新しい AWS モダナイゼーション計算ツールは、お客様とのモダナイゼーション評価の初期段階での話し合いに非常に役立ちます。アーキテクトや開発者は AWS でのワークロードのモダナイゼーションを慎重に計画できます。」— SourceFuse (AWS コンサルティングパートナー)

「このモダナイゼーション計算ツールを使って、新しいアーキテクチャの TCO を簡単に計算できるようになりました。事前の評価段階では、ツールがWell Architected のクラウドパターンや AWS サービスの候補を勧めてくれるため、頼りにしています。」— Axian (AWS コンサルティングパートナー)

Microsoft ワークロードのモダナイゼーション

AWS では、Microsoft ワークロードのモダナイゼーションとは、クラウドの目的別サービスを活用してビジネス価値を高めるためのアプリケーションのリファクタリングまたは再設計だと考えています。モダナイゼーションにより、クラウドベースのアーキテクチャのメリットを享受できると同時に、TCO、運用上のオーバーヘッド、商用ライセンスを要するオペレーティングシステムやデータベースのサポートと購入の課題を軽減できます。

制限が厳しく費用のかかる商用ライセンスの製品から移行することで、さらなるイノベーションに投資し、顧客に付加価値を提供することができます。Windows サーバーへの依存を減らす方法の 1 つは、.NET Framework アプリケーションを Linux で実行できる.NET 6.0 以降に移行することです。

SQL Server ライセンスの使用を削減するために、PostgreSQL または MySQL 互換の Amazon Aurora などのクラウドベースのオープンソース互換リレーショナルデータベースに移行できます。商用データベースのパフォーマンスを得ながら、価格も抑えられます。また、 Amazon DynamoDB などの目的別データベースを採用して、高パフォーマンスの NoSQL データアクセスを実現することもできます。

リホスト、つまり「リフトアンドシフト」による Microsoft ワークロードの AWS への移行を計画する場合、関連するコストを理解するのはかなり簡単です。Windows Server and SQL Server on Amazon EC2 の計算ツールを使用して AWS リソースのコストを見積もるか、AWS Optimization and Licensing Assessment プログラムを利用して、最低価格でワークロードを移行し、必要なコストとライセンスの両方を最小限に抑える方法を知ることができます。

モダナイゼーションには、クラウドベースのサービスを活用するためのIT ワークロードの変革が含まれるため、最終的なアーキテクチャがどうなるか、運用にどれくらいのコストがかかるかは、最初は明確ではない場合があります。そのため、AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads を発表しました。各アプリケーションのコストをサービスごとに見積もる必要はなく、あらかじめ定義されたアーキテクチャから1つを選択し、いくつかの質問に答えることで、モダナイズされたアプリケーションのコストの大まかな見積もりを得ることができます。

ワークロードの見積もり

これが実際にどのように機能するのか調べてみましょう。クラウドへの移行を計画しているとします。ある中規模企業で、顧客に製品を販売するためのウェブアプリケーションを運営しています。現在、このアプリケーションは IIS と ASP.NET (Framework) を搭載した Windows Server 上で動作し、バックエンドのデータベースは SQL Server です。「リフトアンドシフト」の観点から見ると、このアプリケーションをクラウドで実行するコストを見積もるのは簡単です。一方、商用ライセンスの使用を減らし、クラウドベースのサービスのメリットを生かし、コストを削減するためにアプリケーションを再設計してモダナイズすることが目標の場合、見積もりプロセスは微妙に異なります。

ワークロードを実行するためのガイダンスと見積もりを得るために、AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads を使用した例を見てみましょう。直接アクセスすることも、 AWS 料金見積ツールのサービスページにある Get started リンクからアクセスすることもできます (図 1)。

Indication of the location of the link for the AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads

図 1: AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads へのリンク

Modernization Calculator の最初のページ (図2) には、見積もりの名前と現在のアプリケーション/ワークロードの場所を入力するオプションがあります。既存のオンプレミスワークロードをモダナイズするには、On-premises を選択します。AWSや他のクラウドプロバイダーをソースとして使用するオプションもあります。現在の場所に関係なく、モダナイズされたワークロードのコストを見積もることができます。

Description and current location of the workload fields.

図 2: オンプレミスのワークロードをモダナイズするための設定

最終的なアーキテクチャに合った Architecture category (図 3) を選択します。アプリケーションの全体的な構造 (Web アプリケーションやバッチ処理など) がわかっている場合は、Architecture pattern を選択します。パターンがわからないが、CI/CD パイプラインやコンテナ化されたアプリケーションなどのユースケースを理解している場合は、Use case を選択してください。

いくつかのオプションがあり、それぞれに図と簡単な説明が付いています。現在のワークロードに最も近いものを選択できます。これらのガイドが不要な場合は、Custom を選択してから、見積もりに含めたい地域とサービスを選択できます。

ツールに表示されるアプリケーションアーキテクチャ (多層ウェブアプリケーション、バッチ処理、CI/CD パイプラインなど) は一般的に使用されており、AWS のお客様にもよく理解されているパターンです。AWS を初めて使用する場合や、さらに詳しい情報が必要な場合は、ツールに各シナリオの詳細な説明が表示されます。他にも含めたいワークロードやアーキテクチャパターンがある場合は、アプリケーション内の Feedback リンクを選択してお知らせください。この例では、多層ウェブアプリケーションのモダナイゼーションを検討していきます。Multi-Tier を選択し、Next を選択します。

Options for selecting an architecture pattern

図 3: アーキテクチャパターンの選択

Select an architecture size ステップでは、環境のおおよそのサイズを選択できます (図4)。これにより、ワークロードサイズに関する次の情報を提供できます。

  1. 予想される使用パターン。トラフィックが定期的にスパイクする場合や、長時間に渡って均等に使用される場合など。
  2. 現在のおおよそのサイズと、予想されるアプリケーションの増加率。これには、おおよその月間ユーザー数、アプリケーションのデータストレージ要件、および今後1年間に予想されるアプリケーションの増加率が含まれます。
  3. 推奨されるワークロードサイジングオプション。アーキテクチャの特性に基づいて自動的に選択されます。AWS は、ワークロードの全体的なサイズと使用パターンに基づいて適切な推奨を行います。推奨サイズをそのまま使用することも、SmallMedium、Large、Extra Large を選択して選択内容を変更することもできます。

Next を選択します。

Architecture size selection options

図 4: アーキテクチャサイズの選択

アーキテクチャパターンを選択したら、ツールは実現したい最終的なアプリケーション形態を選択するオプションを提示します (図5)。各形態には便利な図が付いています。

たとえば、デフォルトの推奨は、 AWS Lambda アーキテクチャを使用するサーバーレスオプションを検討することです。詳細を確認するには、Learn more リンクをクリックしてください。これには、使用するサービスの概要、それぞれに選択できるオプション、およびこのアーキテクチャを実装する際の考慮事項が含まれます。また、リソースと次のステップも提供されているため、選択したアーキテクチャパターンをすぐに使い始めることができます。

同様に、お客様の専門知識や好みに応じて、 Elastics Kubernetes Service アーキテクチャを使用したサーバーレスや、Elastic Container Service アーキテクチャを使用したサーバーレスなど、コンテナベースのアーキテクチャのオプションが提供されています。

Multi-Tier architecture selection options

図 5: アーキテクチャ選択オプション

この例では、Serverless using AWS Lambda を選択し、Next を選択します。

次に、Edit service configuration ステップ(図 6)に、含まれるサービスの一覧と、設定されたワークロードのサイズを反映した料金が表示されます。その後、必要に応じて +Add service または Delete service を選択して、含まれているサービスをカスタマイズできます。Modernization Calculator for Microsoft Workloads は、多くの主要なAWS サービスをサポートしています。

Edit service configuration options

図 6: サービス設定

以下のサービス設定ができます。

  1. サービスに合わせて、定義済みのサイズ S、M、L、または XL を選択します。
  2. AWS サービスの特定のパラメータがわかっている場合は、それらを入力します。各サービスのすべてのオプションが含まれているわけではありませんが、見積もりに最も大きな影響を与えるオプションを変更できます。
Options for configuring an individual service

図 7: 個別サービスの設定

個々のサービスの見積もりコストと全体の見積もりはすぐに更新されます。

データを確認して必要な変更を加えたら、Save を選択してワークロードの見積もりを表示できます (図 7)。

Screen showing information and options for the current estimate"

図8: My Estimate

My Estimate ページには、サービスごとのワークロードコストの構成要素を示すドーナツ型のグラフが表示されます。AWS でアプリケーションを実行する場合に、各サービスにどれくらいの費用がかかるかを見積もることができます。

この見積もりには、サポート(追加された場合)を含む、モダナイズされたアプリケーションで使用される AWS サービスのランレートが含まれます。アプリケーションのモダナイゼーションに必要な工数や、データ転送などの追加コストは、Modernization Calculator for Microsoft Workloads の対象外です。

見積もりページでは、次のことができます。

  1. 見積もりへのリンクを取得して、ブックマークしたり、他の人と共有したりできます。
  2. Export を選択して、見積もりを Excel 形式でダウンロードできます。
  3. この見積もりに別のワークロードを追加するには、Add workload を選択します。
  4. Add support を選択して、 AWS サポートプランの費用を見積もりに追加します。開発者サポート、ビジネスサポート、またはエンタープライズサポートの見積もりを追加できます。
  5. Contact Sales を選択して、AWS の営業担当者から連絡をもらいましょう。この見積もりを AWS の担当者に確認して、どのような追加の最適化やアーキテクチャの変更がニーズに最も合っているかを判断してください。
  6. Delete all を選択して、見積もりからすべてのワークロードを削除します。

見積もりに別のワークロードを追加する場合は、Cost by workload タブ (図 9) を選択すると、それぞれが見積もり全体にどのように影響するかより理解できます。

Multiple workloads in a single estimate

図 9: 複数のワークロードを含む見積もり

実装に関する考慮事項

AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads には、AWS がお客様の Microsoft ワークロードのモダナイゼーションを長年支援してきた経験が反映されています。

このツールは、コンピューティング用の AWS Fargate や AWS Lambda などのサーバーレスサービスの見積もりを提供します。.NET Framework から最新バージョンの.NET (現在の長期サポートバージョンは.NET 6.0) にモダナイゼーションすることで、Linux ベースのコンピューティングサービスを使用できるようになります。.NET の最新バージョンを使用する利点の 1 つは、ARM アーキテクチャを使用して構築された AWS Graviton プロセッサを採用できることです。AWS Graviton では価格パフォーマンスが最大 40% 向上します。.NET は ARM でのパフォーマンスを向上させるために特別に最適化されています。

ワークロードをモダナイゼーションすることで、Amazon DynamoDBAmazon ElastiCache for RedisAmazon Aurora PostgreSQL などのクラウドベースのデータベースを利用することもできます。このようなサービスを選択することで、最も高性能なワークロードに必要なパフォーマンスを維持しながら、商用データベースの運用上のオーバーヘッドとライセンスコストを削減し、最終的には排除できます。

AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads で提案されたアーキテクチャを採用するには、モダナイゼーションを完全に達成するために多大な労力を必要とする場合があります。幸いなことに、この道のりの途中でサポートを受けることができます。AWS には、モダナイゼーションの費用の一部に資金を提供して相殺するプログラムがあります。また、モダナイゼーションを専門とする多くの AWS パートナーが、最も厳しい要件にも対応できるよう支援します。

次のステップ

クラウドのメリットを得て、ビジネスを制限する商用ライセンスから解放するために Microsoft ワークロードをモダナイズすることを検討する準備ができている場合は、まず、新しくリリースされた  AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads にアクセスしてください。そうすれば、AWS やコンサルティングパートナーと協力して、モダナイズによってビジネス目標を達成するための最善の道を見つけることができるようになります。

また、AWS Migration Hub Strategy Recommendations を使用することをお勧めします。大規模な移行とモダナイズに役立つ最適な戦略とツールに関する規範的なガイダンスを提供するため、変革の道のりを進み始めるのに理想的な出発点です。Strategy Recommendations は、実行中の各アプリケーション、そのプロセスの依存関係、および技術的な複雑さを分析する手動プロセスを自動化して、アプリケーションの移行とモダナイゼーションの計画に費やす時間と労力を削減し、AWSでのビジネス変革を加速させます。

AWS には、アプリケーションの各側面への移行に役立つツールが多数用意されています。Porting Assistant for .NETAWS Microservice Extractor for .NET は、.NET Framework モノリシックアプリケーションを.NET の最新バージョンに変換するのに役立ちます。このテクニカルガイドは、その過程で考慮すべき多くの点に役立ちます。

AWS Modernization Calculator for Microsoft Workloads を今すぐ使い始めることができます。モダナイズされたワークロードの運用コストを理解するのに役立ちます。AWS アカウントを持っていなくても使用でき、無料で利用できます。詳細については、AWS Pricing Calculator ユーザーガイド「AWS モダナイゼーション計算ツールを使用した Microsoft のワークロード推定値の生成」 トピックをご覧ください。


AWS は、企業がクラウドを最大限に活用する方法を評価するお手伝いをします。AWS は数百万のお客様から信頼いただき、最も重要なアプリケーションをクラウドに移行し、モダナイズするためにご利用いただいています。ぜひ、このコミュニティにご参加ください。Windows Server または SQL Server のモダナイゼーションの詳細については、「Windows on AWS」 をご覧ください。今すぐ連絡して、モダナイゼーションの道のりを歩み始めましょう。

Craig Bossie

Craig Bossie

Craig Bossie は、AWSに2年間在籍しているソリューションアーキテクトで、世界中のお客様と協力して、AWSクラウドへのMicrosoftワークロードの移行、モダナイズ、最適化を支援しています。17 年以上にわたり .NET の開発とコンサルティングを行っており、お客様が最新アプリケーションを AWS でより適切に実行できるよう支援できることを非常に楽しみにしています。

Jignesh Suthar

Jignesh Suthar

Jignesh Suthar は AWS のソリューションアーキテクトで、フォーチュン 500 の企業やスタートアップ企業で 20 年以上働いてきた経験があり、最先端のクラウドテクノロジーを使用してテクノロジープラットフォームを移行およびモダナイズし、ベストプラクティスに従ってパブリッククラウドでホストしています。

この記事の翻訳はソリューションアーキテクトの平良允俊が担当しました。原文はこちらです。