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CDP for CPG 〜消費財業界向けの顧客データプラットフォーム〜

消費財企業向けの顧客データプラットフォーム(Customer Data Platform、以降 CDP)なんてあるのでしょうか?!はい、あるのです。

まず CDP とは何かの定義から始めましょう。CDP とは、永続的かつ統一された顧客ビュー(例えば顧客アクティビティの単一ビュー)を作成するためのテクノロジープラットフォームです。複数のソースからデータを取得し、クリーニングし、組み合わせて単一の顧客プロファイルを作成します。例えば、最近オンラインで食料品を買った時のことを考えてみてください。(Amazon Fresh、Instacart などの)どのサービスで購入するか選択する前に、複数のプラットフォームを検索したのではないでしょうか。さまざまなサイトでいくつかのオンラインレシピをスキャンしたでしょう。これまで購入したことがない食品ブランドがあればそのブランドについて調べたでしょう。オンラインクーポンがないかもクイックに検索したでしょう。一連の行動の中で最終的に購入した企業とは、ウェブサイトへのアクセスやライブチャット、オンライン広告、電子メールなどを介して複数回のやり取りが発生していたはずです。

企業との接点の中で、よりパーソナライズされた体験が得られることに気付いたのではないでしょうか。Facebook で見た広告は、あなたに強く関連があるものだと感じたかもしれません。ウェブサイトは、あなたが探していたものに関して、よりパーソナライズするために微妙に変更を加えていることがあります。異なる検索結果に対して、関連するクーポンが「現れる」こともあります。最終的にオンライン体験があなたのためにカスタマイズされているように感じるのです!これは、CDP があなたの行動に基づいてコンテンツと動線をテーラリング(調整)しているからなのです。

消費財企業が CDP に投資するのにはさまざまな理由があります。まず、多くの消費財企業がより「データドリブン」になるための投資しています。さらにサードパーティ Cookie と広告 ID の使用は減少しており、650 億ドルの広告費が危険にさらされています。すべての企業(特に D2C(Direct-to-Consumer)に移行しつつある消費財企業)は、顧客データ(ファーストパーティデータ)を収集して意味あるものにし、顧客体験や広告最適化(ROAS)、購買客に関する洞察(R&D)、前述したような「ネクストベストアクション」に活用する必要があるのです。次に、消費者購買行動の変化や、その他のいくつかの要因が CDP 投資に影響を与えており、消費者はこれまでにない早さでブランドを切り替えている点があります。75% の消費者が、経済的なプレッシャーや店舗の閉鎖、あるいは優先順位が変わったという理由で購買行動を変えたと McKinsey 社はレポートしています。今やここにインフレとコストプレッシャーもが加わって来ています。

消費財企業の e コマースは、COVID 以降、爆発的に増加しました(前年比 43% の成長で、消費財業界総売上高の 18%)。消費財企業は、e コマース(価格設定、プロモーション、メディア、需要計画など)の重要性にフォーカスするだけでなく、D2C の展開を急ぎ、ファーストパーティデータを取得し、サブスクリプションやクイック配送といった新しいモデルを試しています。

消費者の 91% は、自分に関連するオファーやお薦めを提案してくれるブランドから購入する可能性が高くなります。カスタマーオブセッション(お客様中心にこだわること)を極めることは、データ – 人口統計、心理学的属性(サイコグラフィックス)、取り引き、購入記録、サポート窓口とのやりとり、商品の使用状況、購買習慣、コンテンツの嗜好、悩みごとなど – から始まります。最近の Gartner 社のレポートによれば、顧客 360 度ビューを実現できている企業は 10% 未満、それを活用してビジネスを体系的に成長させている企業は 5% にも満たないのです。さらに Gartner 社によると、CIO が投資を増やしているテクノロジ分野のトップは「ビジネスインテリジェンス、あるいはデータ分析ソリューション」であることがわかっています。CIO の 45% はこの分野への投資を増やしており、投資を減らしている CIO はわずか 1% です。

同レポートはまた、CEO の 63% が今後 2 年間のうちにビジネスモデルを変更する可能性が高いと示しています。この大きな変化の前、その最中、その後に分析を行うことは非常に重要です。デジタル活動の投資効果の測定は最も重要なことです。もしあなたが効果を測定していないのであれば、それは真剣に考えていないということです。

データ駆動型企業の利点は十分に認知されています。収益は 20% 増加、コストは 30% 削減されるとされています。消費財企業であれば、広告やソーシャル、ウェブサイト、モバイル、ロイヤリティプログラム、e コマースなどからデータを収集し、CDP に投入します。次に、人工知能(AI)を駆使して洞察を生み出し、広告の効率、チャネルごとの収益、会員あたりの売上を得ることができます。マーケティング担当者は CDP を使って。顧客の嗜好に沿ったキャンペーンのカスタムオーディエンスを作成することができます。これにより広告費用対効果(ROAS)を向上させることができます。さらに、CDP を使えばオンラインでの商品選択におけるレコメンデーションエンジンも可能になります。

CDP のゴールは、プライバシー規制とベストプラクティスを重視しつつ、ビジネスと消費者にとっての価値をもたらすことにあります。

顧客の単一ビューを作る上での課題

消費財企業のおかれた環境で CDP を立ち上げるためには多くの課題があります。

第一に、データが分散しかつ重複していることです。事業部門やチャネル別、ブランド別、あるいはビジネス機能別ごとに、顧客に関する情報が重複したり矛盾したりしていることがよくあります。

第二が、データの急増です。データは急速に増加しています。構造化、半構造化、非構造化などのデータの種類の増加は言うまでもなく、新しいチャネルが増えると、新しいデータを管理、組み合わせて一つの顧客ビューに統合することで、新たな顧客とのやり取りや取引の機会が生まれます。消費者は、ドットコムや電子メール、ウェブチャット、ソーシャルメディア、レビューサイトなどの新たな手段でブランドと関わり、毎日 2.5 京バイトものデータを生み出しています。

第三は、洞察の実用化です。データ統合は CDP の一部にすぎません。データが統合できてから、サポート、エンジニアリング、セールス、e コマースにおいて継続的に洞察を生み出し、アクションを実行できるようになるまでには、さらなる時間と分析への投資が必要です。

第四には、確実なアイデンティティ特定です。匿名データであろうと既知のデータであろうと、顧客 ID はシステム(注文管理システム、請求システム、e コマースサイトなど)ごとに異なり、類似データを管理するさまざまな部門によっても異なります。

最後に、PII (Personally Identifiable Information、個人を特定できる情報のこと)とファーストパーティデータに関するガバナンスです。製造システムやサプライチェーンなどの企業内データと異なり、顧客に関するデータには厳格な規制コンプライアンスガイドラインへの準拠が求められます。さらに、企業がファーストパーティデータを取得するためには、顧客の同意を得なくてはなりません。

CDP を推進する消費財企業のトレンド

消費財企業が CDP に求めるものとは?

ファーストパーティ、セカンドパーティ、サードパーティデータへの投資から得られる価値:消費財企業は、ファーストパーティ(自社ブランドが所有)、セカンドパーティ(パートナーから購入または共有)、サードパーティ(Nielsen といったプロバイダーから購入)データに投資し、プライバシー規制に準拠した方法で消費者に関する洞察と価値や売上を求めています。広告費用対効果の向上、顧客獲得コストの削減、消費者生涯価値の向上、平均注文量の増加、市場浸透の深化から価値が生まれます。

データとそこから得られる洞察の所有権: 消費財企業は、消費者、ブランド、属するカテゴリに精通しています。代理店やベンダーが自社データを管理し、洞察を得ることに対して料金を請求されることを望んでいません。データから洞察を得ることは競争上の優位性であり、自ら開発し所有すべきものであるとわかっています。

最上級の消費者体験:消費財企業は、商品体験からオンライン購入、ロイヤリティ、消費者コミュニケーションに至るまで、エンドツーエンドで消費者体験を作りたいと考えています。パーソナライズされた体験を所有、作成すること、また消費者や購入経路、購入機会を知り、消費者体験を実現したいと考えています。

売上成長と顧客生涯価値: 消費財企業は、顧客生涯価値や平均注文額、市場浸透率を高めることで売上を増やしたいと考えています。コンタクトセンター体験の向上による CSAT スコアの改善や顧客離れ抑止も考えています。

ROAS と市場浸透: 消費財企業は、CDP により得られる洞察を活用して広告費用対効果(ROAS)を高め、クリーンルームでファーストパーティとサードパーティのデータを組み合わせることで類似するオーディエンスをターゲットにし、市場浸透を高めたいと考えています。

M&A と R&D のための洞察:最後に、消費財企業は CDP から洞察を得てR&D に情報を提供したり、商品のイノベーションや M&A のために活用したりしたいと考えています。

次にすべきことは?

AWS 精査済みの、AWS 業界パートナーソリューションである消費財業界向け CDP を紹介します。

Algonomy Customer Data Platform は、実用的なアルゴリズムとパーソナライズされたエンゲージメントを提供し、これによってサプライ チェーン管理やマーチャンダイジングから、マーケティング、顧客エンゲージメントに至るまで、消費財ブランドビジネスのあらゆる側面に影響を及ぼすことができます。

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エンタープライズ顧客データプラットフォームである Amperity は、AI を活用した包括的かつ実用的な 顧客 360 度機能を提供し、ブランドが顧客を識別子、理解し、つながる方法を加速します。

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Tealium Customer Data Platform は、顧客をあらゆる意思決定の中心に置くために必要なデータ基盤を企業に提供します。

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Treasure Data は、プライバシーとデータのバランスを取り、マーケティング、サービス、セールス全体にわたり優れた顧客体験を提供するためのエンタープライズ顧客データプラットフォームを提供します。

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Twilio Segment は、消費財ブランドが顧客データを収集、クリーニング、コントロールできるようにするための顧客データプラットフォームを提供し、あらゆるチャネルにおいてパーソナライズされたコミュニケーションを促進する支援をします。

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著者について

Justin Honaman

Justin Honaman は、AWS グローバルに消費財小売業界の Go-to-Market チームを率いています。食品飲料のセグメントリーダーでもあります。消費財小売業界において、世界中のお客様にサプライチェーン、e コマース、データ分析、デジタルエンゲージメントに関するビジネスソリューションを提供することに注力しています。

翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。