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Data Exports for FOCUS 1.0 を一般提供開始

本記事は 2024 年 11 月 25 日に公開された”Data Exports for FOCUS 1.0 is now in general availability”を翻訳したものです。

本日、AWSは Data Exports for FOCUS 1.0 の一般提供を開始しました。2024 年 6 月にリリースされたパブリックプレビュー版と比較して、FOCUS 1.0 スキーマによる AWSの コストおよび使用状況データのエクスポート機能の仕様準拠性が大幅に向上しています。FOCUS (FinOps Open Cost and Usage Standard) は、FinOps Foundation が支援するオープンソースのクラウドコストおよび使用状況の仕様で、コストと使用状況データを標準化し、複数のソースにまたがるクラウドの財務管理を簡素化することができます。Data Exports for FOCUS 1.0 を使用することで、様々なソースからのコストおよび使用状況データの集計、クエリ、分析を容易に実行できます。

本記事では、Data Exports for FOCUS 1.0 の利点や一般提供版とプレビュー版との違い、Data Exports for FOCUS 1.0 と Cost and Usage Report (CUR) 2.0 の違いと選択基準を紹介します。そして、 FOCUS プロジェクトへの継続的なサポートに対する AWS のコミットメントについて説明します。

Data Exports for FOCUS 1.0 は誰が使うべきか?

各クラウドプロバイダーは異なる請求および使用状況データフォーマットや用語を用いています。これによって複数のソースにまたがってデータの正規化や分析を行い、コストを報告するプロセス複雑なものとなります。また、各ソースのコスト、割引、購入オプションをどのように解釈するかによって、プロバイダー間でのROI(投資対効果)の公正な評価や、コスト最適化の機会を発見可能かどうかを左右します。 AWS Data Exports for FOCUS 1.0 は、コストおよび使用状況の仕様に準拠しており、以下のメリットを提供します:

  • 標準化されたコスト列:FOCUS 1.0では、ListCost 、BilledCost 、EffectiveCost などの標準化された列でコストが表示されます。これにより、各種の請求データが同一ソース内および複数ソース間で一貫して参照可能な列に表示されることが保証されます。割引率は単一の計算式(例: EffectiveCost / ListCost )で検証可能です。
  • 一貫したスキーマ: FOCUS 1.0 は標準化されたスキーマを採用しており、コスト関連か否かを問わず、すべての請求データが複数ソース間で同一の列に表示されます。また、Data Exports for FOCUS 1.0 には、AWS 使用タイプやコストカテゴリーなどの AWS 固有の請求データ用に 5 つの固有列が含まれています。
  • 共通の値セット:FOCUS 1.0 では、サービスカテゴリーや使用量などのフィールドに共通の値セットを使用します。例えば、時間単位で課金される項目には「 hour 」という値のみが許可され、「 hr 」や「 hrs 」といった例外は認められません。これにより、特定の列の集計時にマッピングや変換作業が不要となります。

Data Exports for FOCUS 1.0 (一般提供開始版) と Data Exports for FOCUS 1.0 (プレビュー版)の違いとは?

FOCUS 1.0 の一般提供版は、CUR 2.0 および Cost Optimization Hub の推奨事項に加えて、以下のスクリーンショットのように Data Exports の新しいテーブルとして利用可能です。既存の FOCUS 1.0 プレビュー版エクスポートは通常通り動作し続けます。ダッシュボードや分析ツールで用いるデータを一般提供版のデータへの切り替える準備として、一般提供版とプレビュー版のデータの違いを確認可能です。FOCUS 1.0 エクスポート を初めて作成する場合は、プレビュー版は使用せず一般提供版のエクスポートを使用してください。一般提供版は図1に続いて記載している改善により、FinOps アナリストチームへのコストダッシュボードの提供や、社内のコスト配分など、本番環境の FinOps ユースケースに AWS の FOCUS 1.0 エクスポートを使用できるようになりました。

図 1. 請求とコスト管理コンソールにおける Data Exports for FOCUS 1.0 のスクリーンショット

一般提供版では、プレビュー版テーブルに存在した19個の仕様適合性のギャップのうち、11個の主要なギャップが解消され、8個のギャップが残っています。一般提供版に残る8個のギャップの大部分は、一部の明細項目において SkuId や PricingUnit などのコストに関連していない値の欠落に起因しています。これらの値の欠落は、CUR および CUR 2.0 のデータでも同様となります。CUR および CUR 2.0 でこれらの値の欠落がない場合、Data Exports for FOCUS 1.0 においても影響を受ける可能性は低いでしょう。今後の FOCUS 1.0 エクスポートでは、残りの 8 個の適合性ギャップの解決について調査を予定しています。FOCUS 1.0 一般提供版における適合性ギャップの概要については、ユーザーガイドの FOCUS 1.0 with AWS columns conformance gaps を参照ください。また、プレビュー版に存在する適合性ギャップのリストとの比較も可能です。

“ AWS のようなクラウドプロバイダーが、 FOCUS の仕様による恩恵をお客様が受けられるよう、継続的に投資を行っていることを大変喜ばしく思います。今回のリリースにより、FOCUS のサポートが「プレビュー」段階を脱し、より多くのお客様が本番環境で活用可能になりました。この数ヶ月間で AWS が Data Exports for FOCUS 1.0 の整合性向上のために行った追加の取り組みによって、お客様は請求データからより多くの洞察を得られるようになり、最終的にクラウドからより大きな価値を引き出すことが可能となりました。FOCUS がもたらす請求データの標準化により、お客様はデータパイプラインの管理にかける時間の削減やより迅速にデータの理解によって、有用な洞察や成果の創出の多くの時間を充てることが可能となりました。”

— J.R. Storment, Executive Director, FinOps Foundation

クラウド財務管理を実践していくにあたり、FOCUS 1.0 と CUR 2.0 をどのように使い分ければよいのか?

CUR 2.0 は、最も詳細なコストと使用状況データをAWS から取得したい場合や、より複雑なクラウド財務管理タスクを実行したい場合にお勧めです。例えば、CUR 2.0 では、Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS)  や  Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) のコンテナコストの詳細な内訳を得るために、分割コスト配分データを受信するか選択可能です。なお、分割コスト配分データは現在の FOCUS 1.0 の仕様では非サポートです。

5 つのAWS 固有列を含む FOCUS 1.0 (一般提供版)エクスポートは、複数のクラウドベンダーやソフトウェアベンダー間でコストと使用状況データの標準化検討時にお勧めします。標準化された列と値のセットにより、データの正規化を行うことなく、複数のプロバイダーからのコストおよび使用状況データを容易に統合可能です。FOCUS 1.0 は CUR 2.0 ほど詳細なデータは提供しません。しかしながら、主要なクラウド財務管理タスクの多くを実行するのに十分な情報を備えています。また、この仕様はオープンソースコミュニティによって新しいリリースで機能が拡張され、より多くのタスクをサポートできるよう進化を続けています。

AWS はどのように FOCUS プロジェクトに関与しているのか?

AWSは 2023 年 10 月に FinOps Foundationと FOCUS オープンソースプロジェクトに参加しました。AWS のコストレポーティング製品チームのリーダーたちは、運営委員会と FOCUS 管理グループの両方で役職を担っています。運営委員会は仕様に関する戦略的な指針の提供と承認を担当しており、管理者はすべてのFOCUS のコントリビュータとともに仕様の開発を主導する責任を負っています。FOCUS の仕様開発は、公開 GitHub リポジトリを通じて管理されています。

AWS は運営委員会メンバーとして、FOCUS 1.0 および 1.1 のリリースを承認しました。また、管理者としても FOCUS 1.0 と 1.1 の一般提供版の仕様リリースに対してコンテンツの提供やレビューを行ってきました。現在計画中の FOCUS 1.2 リリースおよび今後のリリースについても、運営委員会と管理グループの双方の立場からお客様のニーズを代表し続けていきます。

Data Exports for FOCUS 1.0 はどのように始められるのか?

AWS Billing and Cost Management (請求とコスト管理) コンソールの Data Exports (データエクスポート) ページにアクセスし、「FOCUS 1.0 with AWS columns」という新しいテーブルのエクスポートを作成するところから始められます。FOCUS 1.0 一般提供版エクスポートの作成後は、プレビュー版エクスポートは不要となります。また、Cloud Intelligence Dashboards (CID) のデータエクスポート用テンプレートを使用することで、FOCUS 1.0のエクスポートを作成し、SQL クエリでデータを分析するための Amazon Athena と AWS Glue の環境を自動的にセットアップも可能です。 データ可視化に素早く取り掛かりたい場合は、CID から FOCUS 1.0 ダッシュボードをデプロイすることも可能です。

本記事はソリューションアーキテクトの畠 泰三が翻訳を担当しました。原文はこちら

Zach Erdman

Zach Erdman

Zach Erdmanは、AWSのコマースプラットフォームにおいて、請求およびコスト管理のためのData Exportsを担当するシニアプロダクトマネージャーです。データエンジニアや FinOps スペシャリストが、クラウドのコストと利用状況データをより簡単に取り込み、処理し、理解できるようにするためのツール開発に注力しています。

Bowen Wang

Bowen Wang

Bowen は、AWS Billing and Cost Management サービスを担当するプリンシパルプロダクトマーケティングマネージャーです。財務部門やビジネスリーダーがクラウドの価値をより深く理解し、クラウドの財務管理を最適化する方法を見出せるよう支援することに注力しています。以前は、テクノロジースタートアップの中国市場への参入を支援していました。