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大和総研が CRM システムを商用データベースから Amazon Aurora PostgreSQL に移行 (Part 3/3)


このブログは、大和総研様の商用データベースからの移行についてのシリーズ記事の第三回目になります。これ以前の記事については「大和総研が CRM システムを商用データベースから Amazon Aurora PostgreSQL に移行 Part 1Part 2」をご参照ください。今回は、Aurora PostgreSQLへの移行後の効果や課題についてご紹介します。

本番リリース

2020 年 4 月に要件定義が開始し 2 年半後の 2022 年 10 月に当該システムがリリースされました。現時点で安定して稼働していますが、本番リリース直後に対処が必要な課題が発生しました。

AWS 移行後の課題

・リリース直後の負荷高騰

本番リリース時の Aurora クラスターは、Writer インスタンス 1 台と Reader インスタンス 1 台の 2 台で構成していました。これは、システムの初期リリース時の想定負荷に合わせた設計でしたが、実際にはリリース後に予想以上の負荷によりデータベースサーバーの負荷が高騰し、パフォーマンス問題が発生しました。お客様はワークアラウンドとして Aurora インスタンスのスケールアップと Reader インスタンスを2台追加することでこのパフォーマンス問題を解消しました。

・パフォーマンス遅延

特定の機能を実行した時に処理が遅延する事象が発生しました。事象について調査したところ、該当機能を実行した時の SQL で遅延が発生していました。さらに調査した結果、テスト環境と本番環境でデータの値に差異があり、テスト環境では本番とは異なる実行計画で実行されていることがわかりました。これにより、大量の読み込みが発生し SQL が遅延している状況でした。対処として、該当 SQL に対して読み込みを抑えるようなチューニングを実施することで、問題を改善しました。

AWS 移行による効果

AWS への移行がリリースされてから約 1 年半が経過し、移行による効果として以下 3 つを確認しています。

・リソースの最適化

Aurora PostgreSQL への移行により、リソース管理の柔軟性が大幅に向上しました。従来のシステムでは数年先を見越してリソースを確保する必要がありましたが、Aurora PostgreSQL ではニーズに応じて迅速にリソースを調整できるようになりました。これにより、ビジネスの成長や変化に合わせて最適なリソース配分が可能となり、効率的なシステム運用が実現しました。
さらに、マネージドサービスの活用により、運用管理の効率が飛躍的に向上しました。多くの機能がマネージドサービスを通じて提供されるため、リリース後の運用管理が大幅に簡素化されました。これにより、開発部門は戦略的なプロジェクトにより多くの時間とリソースを割り当てることが可能になりました。また、移行前と比較してライセンスコストなど運用費用は、大幅な削減を実現しました。

・柔軟なスケーリング

リリース直後の負荷高騰に対して、柔軟なスケーリングで対処できたことはオンプレミスのデータベースではできなかった対応の一つであり移行による効果と言えます。また、先に紹介した問題の解消後、ワークロードの分析とチューニングを実施して負荷を軽減することで、Reader インスタンスの台数も減らすことができました。最終的には、Writer インスタンスと Reader インスタンスを本番リリース当初の 1 台ずつに戻すことができています。さらに、上記パフォーマンス問題の経験から、その後のリリースの時には事前のチューニングとモニタリングを強化し、必要に応じて Reader インスタンスの台数を増やすことで、問題発生を事前に防ぐような運用を実現することができました。

・パフォーマンス管理

オンプレミスのデータベースでは、データベースのリソース状況を確認するためには問題発生時点のレポートを作成してそれを元に調査する運用でした。このため、リアルタイムの監視が難しく、パフォーマンス問題が発生した後に原因を調査するといったリアクティブな対応が多くなっていました。AWS への移行により Amazon RDS Performance Insights を使ってリソース状況をリアルタイムで確認できるようになりました。現在では、毎朝 Performance Insights のダッシュボードで主要なメトリクスを確認して、問題がありそうな事象があれば対応するといったプロアクティブな活動を行っています。このように、監視業務の効率化、リアルタイムでの問題発見、プロアクティブな対処が可能になった点も、AWS 移行による効果と言えます。

まとめ

大和総研様では、今回の AWS への移行で、単なるコスト削減を超えて、システムの柔軟性とプロアクティブな運用による安定したシステム運用を実現することができました。この結果、システムを利用している大和証券の担当者様からは満足度が高いシステムであるという評価が得られました。
データベースエンジンの変更は一般的に二の足を踏むことも多い中、大和総研様で今回のデータベースエンジン変更を実現できた要因については、お客様の理解と協力がありました。移行担当の責任者である久保様は、

「今回のデータベースエンジン変更について、お客様とは移行するメリットだけではなく移行した時のリスクやそのリスクに対する回避案についてディスカッションしました。結果としてリスクテイクが必要なケースもありましたが、お客様自体がクラウド移行に向けて前向きに検討したことで、AWS 移行を進めることができたと考えています。」

と述べられています。

今後、さらに柔軟で付加価値の高いサービスを迅速に提供するために、AWS のサービスを活用していく予定です。

終わりに

三回にわたって、大和総研様の商用データベース移行についてご紹介しました。今回、事例化に当たりまして、大和総研の小野寺様、岩波様、久保様、プラ様、守屋様には、多大なご協力をいただき心より感謝申し上げます。

今回のデータベース移行の実績を契機に、大和総研様では他社へのデータベース移行支援も積極的に展開される予定です。データベース移行を検討中の方は、以下の問い合わせフォームからご相談ください。

https://it-solution.dir.co.jp/inquiry_seminar

(写真左から)

株式会社大和総研 クラウドソリューション部 部長 守屋 史明様

株式会社大和総研 リテールフロントシステム部 データサイエンティスト プラスティ バンダラ バラッマネ様

株式会社大和総研 リテールフロントシステム部 部長 久保 諭史様

株式会社大和総研 システムインフラ設計部 小野寺 正樹様

株式会社大和総研 システムインフラ設計部 岩波 祥平様

また、ブログ掲載にあたり、

株式会社大和総研 クラウドソリューション部 石川 真由美様

ご多用の中、ご調整ならびにご対応・協力いただきありがとうございました。改めて感謝申し上げます。