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EDF は Oracle Utilities Solution を Amazon RDS へ移行
本記事は、Mark Teuton, Martin Price, Asif Mujawar による「EDF Completes Groundbreaking Migration to Run Oracle Utilities Solution on Amazon RDS」の翻訳記事となります。
英国の電力会社 EDF は、事業成長のための取組みを進めています。同社は、英国内の事業体向けの電力供給において最大の市場シェアを占めており、今後もサービス拡大を計画しています。2019 年、EDF はビジネスソリューションを支える IT をモダナイズするためのイニシアチブを開始しました。2024 年までに B-to-B ビジネスが大幅に拡大すると見込んでいたため、競争力を維持するには、拡張性、パフォーマンス、信頼性に優れたインフラストラクチャが必要と考えていたからです。
これまで EDF は、ビジネス ソリューションをオンプレミスで管理し、Oracle Exadata をデータベースサービスとして使用して Oracle Utilities アプリケーション ( Meter Data Management と Customer Care and Billing ) を利用していました。しかし、オンプレミスのインフラストラクチャはキャパシティが限界に達し、Oracle サポートも End of Support に近づいていたため、EDF はクラウドへの移行を熱望していました。
2018 年、EDF はアマゾンウェブサービス ( AWS ) を優先クラウドプロバイダーとして選択し、将来の IT 環境に AWS を使用する戦略を策定しました。EDF は、オンプレミスインフラストラクチャの技術的陳腐化に対処し、将来の成長に備えるために、この Oracle Utilities アプリケーションを AWS に移行しました。EDF のビジネスソリューション担当シニアマネージャーである Mark Teuton 氏は次のように語っています。「 Oracle Exadata ベースの請求アプリケーションを AWS 移行を実現したのは、私の知る限り、当社が初めてでした。その結果、同社はエネルギー効率の高いインフラストラクチャを使用することで、ITオペレーションコストを 52% 削減し、パフォーマンスを向上させ、二酸化炭素排出量を削減しました。
AWS との未来を選択
移行にはいくつかの重要な要件がありました。まず、EDF のインフラストラクチャには、スケーラビリティとパフォーマンスが不可欠でした。「AWS を利用することで、必要な柔軟性と俊敏性が得ることができました」と Teuton 氏は言います。
さらに、EDF は Oracle Utilities を引き続き使用したいと考えていました。競争の激しい市場で差別化を図るために必要な機能を備えているからです。したがって、このプロジェクトでは、Oracle 固有のアプリケーションと大量データを AWS に移行する必要があり、顧客への影響を最小限に抑える必要がありました。
AWS へ移行することは、EDF の企業戦略に適合していました。「AWS を利用することで得られる市場へのアクセス、成熟したコンピューティング、ネイティブビルド機能など AWS で利用できる様々なソリューションの数々は、エネルギー小売業者として非常に魅力的でした」と Teuton 氏は言います。
成功に向けた取り組み
ビジネス上の重要性を踏まえ、EDF は概念実証を行い、Oracle アプリケーションを AWS 上でオンプレミスで実行するのと同じかそれ以上のパフォーマンス測定値で実行できることを確認しました。同社は、事実上あらゆるワークロードに対して安全で、サイズ変更可能なコンピューティング容量を提供する Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)と、フルマネージドの商用データベースである Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)for Oracle の両方で概念実証を試しました。Amazon RDS for Oracle は、クラウドでの Oracle のセットアップ、運用、およびスケーリングを容易にするフルマネージドの商用データベースです。この検証では、EDF は Oracle Exadata のワークロードを Amazon RDS for Oracle に複製しました。「実際の本番ワークロードを利用した Exadata 上のベンチマークと同じものを Amazon EC2 と Amazon RDS の上で実行することができました」とTeuton 氏は言います。「AWS でワークロードを実行できるという明確な証拠が得られました。」EDF は、この Oracle Utilities のアプリケーションを Amazon RDS for Oracle 上で実行することを決定しました。これにより、オンプレミスのインフラストラクチャと比較して、オペレーションリスク、手動によるスケーリングとバックアップ、およびメンテナンスのコストが削減されます。
EDF は他に2 つの重要な決定を下しました。まず、2 つのオンプレミスの Oracle solutions (Meter Data Management と Customer Care and Billing) の使用から、これら2つのサービスの機能を1つにまとめた Oracle Customer to Meter ( C2M ) をクラウド上のソリューションとしてアップグレードにすることを決定しました。C2M アプリケーションは引き続き Oracle Utilities アプリケーションとしてサポートされており、EDF は Amazon RDS for Oracle 上のデータベースを使用するため、テクノロジー全体にわたって Oracle のサポートを引き続き受けられます。次に、EDF はトランスフォーメーションを行うために 2 つのパートナーを選びました。1 つは AWS パートナーで Oracle 移行のエキスパートである Navisite、もう 1 つは AWS パートナーであり、デリバリーおよび開発活動全体を主導する Tata Consultancy Services (TCS) です。
移行準備のため、専門家から意見収集
概念実証が成功した後、EDF はビジネスクリティカルなアプリケーションのカットオーバーを最小限のダウンタイムで実行する方法など、様々な課題に取り組み始めました。そのためには、新しくアップグレードしたソリューションの機能と、クラウドに移行される膨大な量の顧客データの完全性に対する高い信頼性が求められました。同社はまた、秋の大規模な販売ラウンドの前に本番稼働する必要があるというスケジュール上のプレッシャーにも対処しなければなりませんでした。
これらの課題を克服し、AWS 移行の利点を活用するために、EDF は新しいアプリケーションをクラウドで構築し、最終的に履歴データとライブデータをロードできる戦略を策定しました。同社は、オンプレミスの既存のアプリケーションとの並行運用期間を一定期間実行できました。次に、新しいアプリケーションが既存のアプリケーションと同じように動作していることが示されたら、EDF はカットオーバーを完了します。
クラウドで開発することで、同社は開発、統合テスト、パフォーマンステスト、トレーニングに必要な複数の環境を迅速に立ち上げたり停止したりすることができました。これにより、新しいオンプレミスサーバーの納品を待ったり、フェーズ間でサーバーを転用したりする代わりに、プログラムのフェーズをオーバーラップさせる柔軟性が高まりました。その結果、EDF はタイムライン上のあらゆる課題を軽減しました。
移行を容易にするために、EDF は AWS Schema Conversion Tool (AWS SCT) を利用しました。これは、移行元のデータベーススキーマとデータベースコードオブジェクトの大部分を移行先のデータベースと互換性のある形式に自動的に変換することで、異なるデータベース間での移行難易度を予測できるツールです。EDF は、企業がデータベースを AWS に迅速かつ安全に移行するのに役立つ AWS Database Migration Service (AWS DMS) も使用しました。「AWS DMS を使い始めたとき、サービスに関する社内の知識やスキルはありませんでした」と Teuton 氏は言います。「AWS は、AWS DMS の専門家と専門のソリューションアーキテクトを支援してくれました。これは私たちにとって大きなメリットでした。」プロジェクト全体を通して、継続的なサポートを提供するために、2 つの異なるタイムゾーンの AWS DMS サポートエンジニアがアサインされました。また、AWS パートナーの Navisite は EDF および TCS のデリバリーチームと協力して、専門スタッフを派遣してくれました。
膨大な量のデータと実行環境の数を考慮すると、EDF は他の課題も解決しなければなりませんでした。たとえば、EDF のオンプレミス環境と AWS 間のネットワークのキャパシティが最大容量に達していました。データベースの AWS スペシャリストソリューションアーキテクトチームは、EDF がこのネットワーク制約を克服し、Oracle データベースで発生した大規模な差分更新を管理できるようにサポートしました。これにより、移行元と移行先のデータベース同期を維持し、テストサイクル中に EDF のテストアプローチに合わせて、AWS DMS レプリケーションを開始および一時停止して調整しました。データベース専門のソリューションアーキテクトが、EDF がレジリエンスがあり、スケーラブルでコスト効率の高いデータベースシステムを構築できるように、対象プラットフォームについて AWS Well-Architected のレビューを実施しました。このサポートを通じて、EDF は Oracle Exadata ベースのワークロードを Amazon RDS for Oracle で実行することの利点を理解することができました。
EDF は、Amazon RDS for Oracle で 1 回の実行で 2,000 万人の利用者を対象に 2 つの請求サイクルを実行できました。これは、オンプレミス環境では実現できなかったことです。EDF は Amazon EC2 向けに設計された、使いやすくスケーラブルで高性能なブロックストレージサービスである Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) が提供する柔軟性から多大な恩恵を受けました。Amazon EBS の様々なデータベースアクセスパターンに合わせてストレージタイプ io1 と gp2 を数秒で切り替えることができるため、EDF はダウンストリームシステムの更新や本番環境の問題に対する緊急のデータベースクローンの提供に関するサービスレベルアグリーメントの改善を継続できます。Amazon RDS を利用することで、オンプレミスで時間がかかり、イノベーションを遅らせていたメンテナンスや管理上の問題に対応することができました。EDF は Amazon RDS for Oracle のマルチ AZ デプロイオプションを使用して、追加機能やライセンス費用をかけずに、RTO を 120 秒未満に改善し、RPO をゼロにすることで、重要なワークロードを保護しています。今では、オンプレミスで Oracle を使用する問題に対処するのではなく、アプリケーションとデータベースの設定を最適化して UX を向上させることに集中できるようになりました。また、Amazon RDS for Oracle のメンテナンスを自動化することで、EDF は Oracle パッチをよりタイムリーに、チームの手作業なしでテストおよびリリースできるようになりました。
Oracle Utilities の Amazon RDS for Oracle への移行
主要なデータセットを移行し、10 日間にわたって変更を確認した後、EDF は 2021 年 11 月のある週末に Oracle ワークロードを AWS に移行しました。カットオーバー前の金曜日にすべてを同期させた後、同社はビジネスソリューションをオフラインにし、それ以上変更を加えないようにしました。土曜日に、チームはデータセット全体の調整ポイントを監査し、機能と 90 億件のデータレコードを検証しました。土曜日の夕方までに、チームは本番環境を AWS に切り替えました。EDF は、日曜日まで新しい本番環境での通常どおりの業務に追いついた後、月曜日の朝にユーザーがアクセスできるように業務準備を無事完了することができました。
移行には、20 万人の企業からの請求およびメーターデータが含まれていました。同社は、機能上またはオペレーション影響をほとんど受けずに、合計 15 TB の 150 億件のデータを移行しました。「顧客が目にした唯一の影響は、48 時間にわたってアカウントにアクセスできなかったことです」と Teuton 氏は言います。「この変革の結果、お客様に提供していたサービスは、移行の前日も翌日も同じでした。」
EDF は、このサービスが英国のエネルギー市場における主要な年次イベントに対応できることを確認するために、週末のサービス終了後も数か月間移行状況を監視し続けました。これらのイベントでは、顧客のメーターデータを特定期間の請求と照合し、その期間の使用量に基づいて顧客に請求または払い戻しを行うために大量の計算能力が必要になります。これは、ピーク時のニーズに合わせてスケールアップしてから再びスケールダウンするように設計されたアーキテクチャの理想的なユースケースです。EDF は、2022 年 3 月に新しいインフラストラクチャに関するこのプロセスを初めて完了しました。これにより、新しい環境が機能していることが証明され、移行プロジェクトが正式に終了しました。
情報に基づいた意思決定
ビジネスリーダーと IT チームの両方から選出された強力な経営陣のリーダーシップにより、情報に基づいた迅速な意思決定が可能になりました。専任の EDF プログラムチームが移行の中心となり、ビジネスの方向性を定め、直接的な知識を提供してくれました。TCS と Navisite のチームは、本番稼働開始の週末にチームの多くが初めて顔を合わせたにもかかわらず、プロジェクトの期間中、EDF と協力していました。
プロセス全体を通じて、カスタマーソリューションマネージャーが AWS の関与を調整しました。カスタマーソリューションマネージャーは、すべてのアクティビティを監督し、サポートと専門知識が利用できるようサポートしました。AWS は複数の AWS インフラストラクチャイベント管理 (AWS IEM) アクティビティで移行をサポートしました。これにより、移行の重要な時期に、AWS チームが情報に基づいた迅速なサポートを提供する準備ができていることが確認されました。
今後の取組み
EDF は、定期的なパフォーマンスレビューを通じてワークフローの改善を続けています。同社は、またオンデマンド価格よりも低価格を提供する柔軟な価格モデルである Savings Plans と、企業が同等のオンデマンド容量よりも最大 72% 節約できるリザーブドインスタンス(RI)を使用して、運用コストをさらに削減しています。
「AWS に支えられているので、お客様に優れたサービスを提供できるという自信を持って、大胆な選択をすることができます。また、この移行は、お客様への新しいサービスの出発点となり、AWS 活用も加速しました。」と EDF のソリューションおよびアーキテクチャ責任者の Mark Askew 氏は言います。
一方、EDF は、すでにより多くのモダナイズプロジェクトを計画しています。今後の展開には、ガス市場への再参入や、会社のインフラストラクチャのより多くの部分を AWS に移行することが含まれます。
「二酸化炭素排出量の観点とコストの観点が、オンプレミスから移行する大きな要因でした。まだ完了していませんが、この移行により、EDF が IT による二酸化炭素排出量の削減に向けて自信を持って取り組むためのパターンが確立されました。」とTeuton 氏は言います。
本記事の翻訳は、ソリューションアーキテクトの青山智が担当しました。原文は、https://aws.amazon.com/blogs/industries/edf-completes-ssgroundbreaking-migration-to-run-oracle-utilities-solution-on-amazon-rds/ を参照ください。