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小売業の未来を受け入れよう: AWS スマートストアソリューションの実現
AWS スマートストアソリューションでイノベーションを加速するための主な質問と戦略
小売の世界では、e コマースの台頭や、ショッピング体験におけるデジタル機器の普及が進み、デジタル変革が続いています。さらに、Covid-19 の大流行は、小売のデジタルツール、エクスペリエンス、テクノロジーの採用を加速させました。店舗が再開され、世界がニューノーマルに移行した今も実店舗は依然として重要な役割を果たすと考えられます。
新たな顧客ニーズに対応するため、小売企業はデジタルトランスフォーメーションのメリットを実店舗にもたらす方法を模索しています。実店舗がすぐに無くなるわけではありません。実際、実店舗は今や一層重要になっています。なぜなら店舗は、買い物客にとって、商品を発見し、リサーチし、見て、手にとって、購入するための人気の場所であり続けているからです。依然として実店舗が小売売上全体の売上の約 80 %を占めているのは、驚くべきことではありません。
アマゾン ウェブ サービス( AWS )のスマートストアソリューションは、クラウドベースのテクノロジーを活用し、顧客と小売企業双方の店舗体験を向上させる次世代の実店舗イノベーションです。NRF 2023 のブログ記事で紹介したように、AWS は実店舗における小売企業を支援する方法に改めてフォーカスしています。
ソリューションの選択肢はたくさんあり、どこから始めればいいのか、どこに焦点を当てればいいのか、圧倒されるかもしれません。そこで AWS がお役に立ちます。このブログでは、小売企業がクラウドジャーニーを歩んでいるのか、あるいはまだ歩みを始めたばかりなのかに関わらず、スマートストアの取り組みを評価し、優先順位をつけるために取るべき重要な質問と戦略を紹介します。
深く掘りさげることから始めましょう
スマートストアソリューションの導入に向け、小売企業はまず既存のインフラストラクチャ、オペレーション、顧客体験、データ能力について深く掘り下げることから始める必要があります。この深掘りする段階では、スマートストアソリューションから恩恵を受ける可能性のあるビジネス領域を特定するのに役立つだけでなく、重要な質問に対する洞察も得ることができます。
インフラストラクチャに関しては、小売企業は現在のシステムを評価し、システムの限界や改善すべき点を特定する必要があります。これには、POS システム、在庫管理ツール、その他のバックエンドシステムの評価も含まれます。主な質問は以下の通りです:
- システムは統合されており、拡張可能ですか?
- システム間でデータを収集、共有できていますか?
- 店舗で利用可能な帯域幅は十分に確保されていますか?サービス品質に関する制限はありますか?
- 取り扱う SKU の数と取引量はどのくらいありますか?
- 店舗サーバーを廃止しますか?それともハードウェアを再利用しますか?
深掘りのプロセスにおいて、オペレーションは小売企業にとって非常に重要な分野です。これには、人員配置、トレーニング、ワークフローなど、店舗運営の現状を評価し、改善点を特定することが含まれます。主な質問は以下の通りです:
- コスト削減と効率化のために、どのオペレーションを合理化できますか?
- 店舗のスタッフは、スマートストアテクノロジーを支えるために必要なデジタルツールやプラットフォームを備えていますか?
- 在庫管理と在庫補充のための、最適化されたビューとプロセスを持っていますか?
- すべての機器の故障を監視できますか?
- 顧客や従業員に対する安全対策はどうなっていますか?
- 棚割り計画の検証、スケジューリング、コミュニケーション、トレーニングなどのタスクを自動化していますか?
小売企業は、自社のデータ能力を評価し、データをどのように活用すれば、洞察と改善を促進できるかを判断する必要があります。これには、現在のデータ収集、分析ツールの評価だけでなく、新たな機能への投資が必要と思われる分野の特定も含まれます。主な質問は以下の通りです:
- 現在、どのようなデータを収集し、どのように分析していますか?
- 店舗運営を最適化し、顧客体験を向上させるために、どのようにデータを活用し、統合していますか?
- データプライバシーに関する、どのような懸念を考慮する必要がありますか?
- データビューにて顧客を360度把握できていますか?
最後に、顧客体験について、小売企業は、顧客が店舗とどのように接しているかを調査し、課題点や改善の機会を特定すべきです。これには、店舗のレイアウト、看板やディスプレイの効果、接客の質などを評価することも含まれます。主な質問は以下の通りです:
- 顧客一人ひとりのショッピング体験をパーソナライズするにはどうすればよいですか?
- 顧客の購入に至るまでの道のりや、彼らがどこに住んでいるのかを知っていますか?
- 店内で顧客にマーケティングができていますか?
- チェックアウトと支払いプロセスは合理化されていますか?
- 在庫数は正確ですか?在庫切れは頻繁に発生しますか?
これらの分野を深く掘り下げ、重要な質問を投げかけることで、小売企業は自社の現状をより深く理解し、スマートストアソリューションが最大の効果を発揮できる分野を特定することができます。これにより、取り組みに優先順位をつけ、スマートストアを目指すための明確なロードマップを策定することができます。
お客様にこだわる
前のセクションでは、顧客体験について考慮すべき重要な質問をいくつか取り上げました。顧客体験を最適化するもう一つの方法は、エンド・ツー・エンドのカスタマージャーニーを全体的に捉えることです。これには、ジャーニーの各ステップを特定し、各タッチポイントでの体験を向上させるために、どのスマートストアソリューションを活用できるかを判断することが含まれます。
このプロセスの最初のステップは、ブランドに対する最初の認識から購入後のサポートまで、カスタマージャーニーをマッピングすることです。この際、ジャーニーをオンラインでの閲覧、実店舗への来店、購入、カスタマーサポートへの問い合わせなど、個別のステップや接点に分解することが必要になります。ジャーニーをこれらのステップに分解することで、小売企業は各ステージにおける課題や改善の機会を特定することができます。図 1 と図 2 は、ファッションとコンビニエンスストアセグメントの例です。
図 1 – ファッション小売業の消費者ジャーニーにおける Amazon と AWS のソリューション連携
図 2 – コンビニエンスストアの消費者ジャーニーにおける Amazon と AWS のソリューション連携
カスタマージャーニーがマッピングされると、小売企業は、各接点での体験を向上させるために導入できるスマートストアソリューションの可能性を評価することができます。例えば、ジャーニーの前段階では、Hexa や Matterportなど AWS リテールコンピテンシーパートナーのイマーシブリテールやバーチャル試着の技術を導入し、顧客が自身の環境で商品をイメージできるようにすることが考えられます。
実店舗の段階では、小売企業は AWS Panorama コンピュータビジョンテクノロジーを使って、消費者行動の分析と洞察を得たいと思うかもしれなません。これにより、小売企業は顧客が店内を移動する際に、パーソナライズされたオファーやレコメンデーションを送ることができます。
購入の段階では、小売企業は POS /コマースプラットフォーム( AWS Retail コンピテンシーパートナーの NewStore 、XY Retail、VTEX、Spryker)やチェックアウトソリューション( Just Walk Out、Dash Cart、Amazon One )を強化することで、待ち時間を減らして全体的なチェックアウト体験を改善したいと考えるかもしれません。最後に、購入後の段階では、小売企業はチャットボットを導入したり、Amazon Personalize を使用してパーソナライズされたカスタマーサポートや広告を提供したりするとよいかもしれません。
小売企業は、スマートストアの導入に段階的なアプローチを取ることで、カスタマージャーニーの中でスマートストアソリューションが最も大きな効果を発揮できる領域を特定し、導入に向けた明確なロードマップを策定することができます。これにより、顧客がシームレスでパーソナライズされたショッピング体験を提供する小売店に再び来店する可能性が高くなるため、顧客体験を向上させるだけでなく売上とロイヤルティの向上にもつながります。
ジャーニー全体にわたってこれらのソリューションを統合することで、小売企業はあらゆるステップでデータ、分析、洞察を得ることできるようになります。 データを取得することで、顧客の行動や嗜好を理解し、マーケティングキャンペーンの効果を追跡、在庫管理を最適化、新たな成長機会を特定することができるため、小売企業は計り知れない価値を引き出すことができます。スマートストアソリューションがカスタマージャーニーのあらゆるステップ毎にデータを取得することで、より良い顧客体験、売上増加、業績向上につながるデータ駆動形の意思決定を行うことができます。
すべてを一つにまとめる
深く掘り下げることを終え、カスタマージャーニーを評価した後、小売企業はスマートストアソリューションが最も効果を発揮する分野に優先順位をつけます。これには、人流を最適化するための店舗レイアウトの改善、顧客データに基づくパーソナライズされたレコメンデーションの導入、在庫管理の改善のためのデータ活用などが考えられます。
優先順位のつけ方については、潜在的な影響と導入のしやすさの組み合わせに基づくべきです。小売企業は、顧客体験と売上に最も大きな影響を与え、かつ既存のインフラストラクチャやリソースの範囲内で導入可能なソリューションに焦点を当てるべきです。
AWS スマートストア は、クラウドベースのテクノロジーを活用し、顧客と小売企業の双方にとっての店舗体験を向上させる次世代の実店舗ソリューションです。発見と深掘りを完了し、影響度と実現可能性に基づいて優先順位をつけ、クラウド変革のジャーニーに乗り出すことで、小売企業は AWS スマートストアソリューションのメリットを享受し始めることができます。適切なテクノロジーと戦略によって、実店舗は今後も小売業界において重要な役割を果たし続けることができるはずです。
AWS と AWS リテールコンピテンシーパートナーがスマートストアソリューションで小売業の変革をどのようにサポートできるかをご覧ください。詳細は aws.amazon.com/retail/ をご覧ください。
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著者について
Justin Swagler
Justin Swagler は、AWS のワールドワイド・フィジカルリテール部門の責任者として、フィジカルリテールに関するグローバル戦略とソートリーダーシップをリードしています。Justin は、イノベーション戦略、リテールオペレーション、プロダクト開発、エグゼクティブリーダーシップ、消費財、小売、戦略分野で15年以上の経験を持っています。組織を戦略的に革新し、消費者体験を再発明することに情熱を注いでいます。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で学士号、ケロッグ経営大学院でMBAを取得。
翻訳は Solutions Architect 圓山が担当しました。原文はこちらです。