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どのように実験の文化を築くことができるのか?

本記事は 2024 年 5 月 9 日に公開された ”How Can You Build a Culture of Experimentation?” を翻訳したものです。

世界中の何百人もの企業幹部と話をしたところ、彼らは迅速に行動してイノベーションを起こすというアイデアは気に入っているものの、企業のレガシーシステムや制約の中でそれを実現するのは難しいと感じていることがわかりました。生成 AI の可能性を考えると、迅速なイノベーションは急務です。しかし、イノベーションを促進するには、実験が容認されるだけでなく、当たり前の文化を築く必要があります。

この記事では、低コスト、低リスク、低摩擦で、企業に大きな利益をもたらす実験を奨励する文化を徐々に築いていく効果的な方法を説明します。私が NASA のジェット推進研究所 (Jet Propulsion Laboratory: JPL) の IT 最高技術・イノベーション責任者を務めていたときに、この方法がうまくいっていました。JPL の実験文化のおかげで、チームは現在の宇宙ミッションにクラウドを利用するようになりました。これにより、より迅速な意思決定が可能になり、必要に応じて方向転換できるようになりました。迅速な実験は、拡張現実、3D プリント、データ視覚化、大規模な機械学習の民主化など、多くの新しいテクノロジーの導入にもつながりました。既存の従業員、インターン、新入社員がこれらのイノベーションを迅速かつ安価に導入できたことは、組織全体の助けとなり、実験者のキャリアに大きな利益をもたらしました。

実験の文化を築くために、最初に組織で実施する実験と実施しない実験を定義します。これにより、期待値を定め、十分な開発と管理を行わずに提案した実験が、本番環境に移行してしまう恐れを軽減できます。

次に、2 週間以内に解決できる可能性の高いビジネス上の問題を選びます。テクノロジーや特定のソリューションではなく、お客様のニーズから逆算して、実際のビジネス上の問題に集中します。ソリューションは時間とともに進化します。洞察につながる成功指標を決定するには、実験者に希望する結果を説明した 1 ページまたは 2 ページの資料を渡してもらい、各実験後の結果をもとに更新してもらいます。これらのビジネス上の問題を、将来の実験者がトレーニングやイテレーションのためにアクセスできるユースケースのライブラリに保存してください。これは、従業員が小さいながらも実際のビジネス上の問題を解決しながら新しいスキルを学ぶ素晴らしい方法です。

第三に、ビジネス組織と機能組織全体にわたる実験者を見つけましょう。多くの組織は、関心と知識が豊富な人材がいることに驚きます。新しいことに挑戦するには、承認と激励が必要です。たとえば、処方的分析の専門家は、AI、機械学習、生成AIを簡単に導入できます。

第四に、部門横断的なアプローチをとりましょう。少なくとも 1 人の IT 従業員、関心のある事業部門のエンドユーザー 1 人、またアドバイスや啓発を行うサイバーセキュリティ専門家で構成される 2 人から 4 人のチームを選任します。

第五に、実験の成功を測定します。投資利益率 (Return On Investment: ROI) の測定に固執しないでください。ROI 文書の作成には、実験の実施にかかる時間よりも多くの時間と費用がかかります (そして勢いを失います)。エンドユーザーコミュニティからの Return On Attention (ROA)、つまり影響を受けるエンドユーザーからの関心度を測定します。ROA を 1 ~ 10 の範囲で評価します。10 は 100% 積極的でポジティブな関心であることを示します。JPL では、少なくとも 2 つのエンドユーザーコミュニティから 8 ポイントを獲得すれば、投資資金が得られることが分かっていました。それから、ROI を測定し、完璧 (またはそれに近い) に向けて繰り返すことができるのです。私は他の企業と協力して同様のアプローチを開発することに成功しました。このようにすることが、問題に最も近い人、そしてしばしば解決策を持っている人がいるような組織の端から創造性を解き放つことに役立ちます。

第六に、実験の話をします。新しいテクノロジーでビジネス上の問題を解決したら、対面デモを行い、複数のデモを紹介するオープンハウスを開催することを検討してください。注釈付きのデモを録画して、セルフサービスの視聴機能を作成します。自分の取り組みが金メッキの科学実験だという批判を避けるために、自分がプロのビデオグラファーではないという期待値を設定することが重要です。特に他のエンドユーザーコミュニティが彼らの意見を受け入れる可能性が最も高いので、エンドユーザー (ビジネス) 参加者の功績を称えることを忘れないでください。そうすれば、将来の実験への参加に対する需要が高まります。ソーシャルメディアやアワードプログラムを利用して、参加者に利益をもたらしましょう。

このアプローチに従えば、始めるのに多額の予算は必要ありません。予算が多すぎると、ソリューションが複雑になりすぎます。時間をかけすぎると、新たに発生するビジネスクリティカルな問題が原因で主要な実装担当者を失うことになります。高い結束力と集中力を確立するために、2 週間 2 ~ 4 人だけで始めましょう。最も成功している企業では、許可を求めることなく利用できる少額の予算を CIO/CTO や事業部門が設定しています。大胆な人には、10 倍の ROI を約束してください。予算を得るのに役立ちます。JPL ではその目標を達成するのに何の問題もありませんでした!

また、エリート主義や反感を助長する可能性があるため、「唯一無二」のイノベーショングループを設立することも避けてください。エンドユーザーと一緒にイノベーションを起こし、自由に賞賛を贈ってください。自社で考えるべきことを外部に委託することは避け、特定の技術の専門家と手を組み、自分でビジョンを維持しましょう。コンプライアンスコントロールを含む自動化により、実験をより簡単かつ迅速に行うことができます。気づかれないように実験を行い、成功してから公開することを検討してください。そうすれば、実験への恐れが減ります。事業を変革できる可能性のある、潜在的に無限の利益をもたらす低リスク、低コストの実験を行っていることを関係者に思い出させましょう。

実験の文化で成功するには、ビジネスの成果がすべてです。各実験はストーリーを伝え、簡単に元に戻せるものでなければなりません。これにより、リスクと反対意見が減ります。実験における唯一の本当の失敗は、あなたの組織が何も学ばないことであり、私たちはそれが起こるのを見たことがありません。上記の手順は、組織全体のすべてを一度に変更する必要がないため、既存の企業でかなり簡単に試すことができます。ビジネスプロセスを何度も 10% 改善できれば、会社に大きな変化をもたらすことができます。組織は楽しく働ける職場となり、社内のアイデア形成や人材の採用、再教育、定着に役立ちます。そして、それはたしかに価値のある目標です。

ご意見、結果、アイデアをお聞かせください。

Live long and experiment!

この記事は、カスタマーソリューションマネージャーの仁科 みなみが翻訳を担当しました。原文はこちらです。