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経営幹部が新たなテクノロジーに振り回されないためには
本稿は、2024 年 10 月 29 日に AWS Cloud Enterprise Strategy Blog で公開された “How Executives Can Avoid Being Disrupted by Emerging Technologies” を翻訳したものです。
経営幹部は、ビジネスをますます破壊する急速なテクノロジーの変化を予測し、新たな市場と提携の機会を見つけなければなりません。経済、社会、地政学、気候、消費者、テクノロジーの変化を数値化したアクセンチュア社のグローバル・ディスラプション・インデックス によると、破壊の速度はわずか 5 年前と比較して 50 倍に加速しています。経営幹部はどのようにして時代の先端を行くことができるでしょうか?
テクノロジーのトレンドを予測することは重要
破壊的なテクノロジーを予測し、それらを活用する体制を整えることで、先見の明のある経営陣は、事業の陳腐化を防ぎ、成長、効率性、イノベーションの新たな道筋を発見することができます。企業は、テクノロジーを早期に特定し、採用することで、生産性を向上させ、ワークフローを合理化し、顧客体験をパーソナライズし、戦略的意思決定に役立つデータ主導の洞察を引き出すことができます。
Amazon は、eコマースの分野で早期に事業を展開し、オンラインインフラとロジスティクスに多額の投資を行い、業界のリーダーとなりました。Apple は 2007 年に iPhone を発売し、タッチスクリーン技術、モバイルアプリ、洗練されたユーザーエクスペリエンスにより、携帯電話業界に革命をもたらしました。Netflix はビデオオンデマンドを導入することで従来のケーブルテレビや DVD レンタルのビジネスモデルを破壊し、Uber はアプリベースのライドシェアリングによりタクシーやリムジン業界を一変させました。これらの企業は、新興技術を特定し活用することで、新たなビジネスチャンスを生み出し、市場シェアを獲得し、収益を増加させ、革新的なリーダーとしての評価を確固たるものにしてきました。
あなたは「テクノロジーの予言者」になれるか
新たなテクノロジーは、コストや使いやすさ、使いやすさに対する知覚価値、新たな標準規格など、さまざまな要因により、予測が難しいことで知られています(訳者注:知覚価値とは、顧客が製品やサービスに対して抱く総合的な価値のことであり、お金に限らず健康の増進や様々な経験の向上なども含まれます)。新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックのような予期せぬ混乱は、入念に練られた予測を一夜にして時代遅れにしてしまう可能性があります。
また、アーリーアダプターは、入手しやすい情報を過信しすぎたり、もはや実行不可能な投資をあきらめられないという問題にも直面します。テクノロジーの成功は、それを支えるインフラや補完的な製品に左右されますが、それらの製品は相互依存のウェブを形成しており、予測が困難です。経営陣は、新たなテクノロジーに関する情報を常に把握し、最も重要なテクノロジーを積極的に採用する必要があります。
テクノロジーのトレンドを特定する方法
絶対確実な「テクノロジーの予言者」になることはできませんが、学習、適応、革新に適した組織の生態系を育成することは可能です。そのためには、テクノロジーに対する認識、関与、機敏性を企業の組織構造に組み込む多面的な戦略が必要です。経営陣がテクノロジーのトレンドを特定するために、次の4つの能力を開発することをお勧めします。
1. テクノロジーのモニタリングと調査を行う
これは、業界トレンドの何気ない観察を越えたものであり、テクノロジーの現状を調査するための体系的なアプローチを必要とします。有望なイノベーションを特定し、ビジネスへの潜在的な影響を評価し、それらを迅速に試す専任のテクノロジー調査チームを編成することができます。このチームには、自社にとって最も重要なトレンドを迅速に絞り込むための使命と仕組みが求められます。また、研究機関や最先端のスタートアップ企業と提携し、現在および将来のビジネス上の問題の解決に役立つ新たなテクノロジーへの直接的なパイプラインを確保すべきでしょう。業界レポートやアナリストの見解を読んだり、テクノロジー関連のカンファレンスに参加したり、パートナー企業とネットワークを築くなど、業界におけるテクノロジーの進化の最新情報を入手し把握してください。
ヒント:新たなテクノロジーとそれが自社のビジネスに与える影響について、ブリーフィングを実施しましょう。 これらのテクノロジーを活用してビジネス上の問題を解決するボランティアを募ります。 これにより、指導者的なグループが構築され、事業部門に必要なテクノロジースキルが身に付きます。
ヒント:テクノロジー・スカウトチームは、目新しさだけを求めて新たなテクノロジーを探求するのではなく、具体的なビジネス価値の提供に重点を置かなければなりません。製品、業務、または顧客体験への影響についてチームに説明責任を負わせるための KPI を設定します。
ヒント:専任のテクノロジー・スカウトチームの設置が現実的でない場合は、組織内のリーダーで構成されるバーチャルなスカウトチームを編成するという賢明な代替策があります。異なる事業部門の利害関係者の多様な視点や専門知識を活用することで、新たなテクノロジーとその潜在的な影響をより深く理解することができます。
2. 好奇心と実験の文化を創り出す
この文化の変化には、従業員に情報を入手し続けるよう促す以上のことが必要です。革新的な思考が報われ、リスクを冒すことが奨励される環境を作りましょう。組織が従業員の集合知と創造性を活用することが目標です。
ヒント:CoE (Center of Engagement) を設置する。 ここでいう CoE とは、Center of Excellence ではなく、Center of Engagement (エンゲージメントの中心) のことです。 この CoE では、技術者とビジネスユーザーの全員が新たなテクノロジーを試し、その結果を報告することが奨励されます。CoE は小規模で迅速に運営され、現場での迅速なトレーニングを奨励し、成功と失敗を共有します。実験とコラボレーションを推進することで、どの新たなテクノロジーを組織全体でより迅速に採用すべきかを決定することができます。
ヒント:社内ハッカソンを開催し、テクノロジープロバイダーに参加を呼びかけましょう。これにより、スタッフがテクノロジーと全社的な実験に信頼を寄せるのに役立ちます。また、NASA が開発した測定システムである、Technology Readiness Level で評価することもできます。
3. テクノロジーロードマップ作成とシナリオプランニングにテクノロジーを活用する
洗練されたテクノロジーロードマップ作成とシナリオプランニングを行うには、複数の結果を想定し、対応策を準備する必要があります。技術的専門知識とビジネス感覚を兼ね備えた、小規模で多様な部門横断チームを編成します。これらのチームは、ダイナミックで順応性のあるップを作成するために、モデリング技術とデータ分析を使用します。これらのロードマップは、技術の急速な変化に対応できるよう、定期的に見直し、更新されます。
各テクノロジーについて、以下を検討します。
- 従業員がそれを受け入れるだろうか?
- ビジネス上の問題を解決できるか?
- ビジネスユーザーに説明できるか?
- 導入にコストをかけられるか?
ヒント:興味のある新たなテクノロジーについて、1 ページのポジションペーパーを作成する。
- その技術に対する現在のアクション (つまり、観察、評価、テスト、積極的な実験、運用、または廃止など) をリストアップする。
- その技術が自社ビジネスにどう関連するのかについて、パラグラフを追加する。
- 各技術について、どの事業部門が恩恵を受けられるか、また関係する人々やパートナーについて、セクションを追加する。
- 半年ごとにポジションを更新する。
この簡潔なポジションペーパーを、協力関係を築きたいサプライヤー、パートナー、顧客と共有することを検討しましょう。「X というテクノロジーについて、あなたはどの程度ご存知ですか?」と尋ねる従業員に、このペーパーはインパクトを与えるでしょう。
4. 外部パートナーシップを結ぶ
どんなに規模が大きく、資金力のある組織であっても、すべてのテクノロジー開発に遅れずについていくことは不可能です。パートナーの多様なネットワーク (実績のあるテクノロジーベンダーから、柔軟な対応力を持つ新興企業、学術機関から業界の同業者まで) と関わることで、洞察力を得たり、最先端のイノベーションにアクセスしたりすることができます。こうしたパートナーシップには、正式な研究協力から、業界コンソーシアムへの参加、新たなテクノロジーに焦点を当てたベンチャーキャピタルファンドへの投資など、さまざまな形態があります。
ヒント:プロバイダーのロードマップについて話し合い、新たなテクノロジーのテストを申し出てください。実際のビジネス上の問題の解決に役立つのであれば、パートナーとしての優先順位が上がり、正式採用が加速するでしょう。さらに良いことに、そのテクノロジーのメンテナンスはテクノロジーパートナーが行うため、自社でメンテナンスを行う必要はありません。
ヒント:社外のイノベーションを評価し、統合するための正式なプロセスを確立しましょう。そのプロセスには、潜在的な技術提携や買収を評価する専門チームの編成が含まれるかもしれません。このような取り組みを行う企業は、社外のイノベーションと社内の能力を組み合わせるメリットを享受することができます。
今すぐ始めましょう。今なら間に合います。昨日ならもっと良かったのですが。
デジタル革命は、リーダーが技術革新に遅れずについていくことを要求しています。AI 、 IoT 、クラウド、サイバーセキュリティ、サステナビリティなど、破壊的なトレンドに遅れずについていくために、テクノロジーのモニタリング、実験、ロードマップ作成、外部パートナーシップを活用することができるのです。