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中堅中小企業に向けたデータガバナンス戦略の作成方法

(この記事は、 How to Create a Data Governance Strategy for Your Small or Medium Business を翻訳したものです。)

「データガバナンス」という言葉を聞くと、医療や金融サービスなどの規制の厳しい業界を連想するかもしれません。しかし、あらゆる業界の賢明な企業は、データを効果的に活用することで競争上の優位性がもたらされることを認識しています。データに基づく意思決定に関する 2021 年のレポートによると、「データおよび分析の専門家の 66% がデータガバナンスプログラムを実施する際、最大のメリットとしてデータ品質の向上を経験しています。この傾向はすでに成熟したデータガバナンスの枠組みを導入している組織では 83% に上昇します。」

企業はリモートコラボレーションや在宅勤務時のセキュリティを強化するために、データワークフローの一部をクラウドに移行しているかもしれません。気づいていないかもしれませんが、データ中心のビジネスアプローチを確立するための第一歩を踏み出したということです。クラウドにおいて、組織のデータは確立されたパターンとプロセスを通じて信頼性が高くなければなりません。これにより、あなたのチームはビジネスイニシアチブについて正確な洞察を得ることができます。

データガバナンスが見落とされると、障害になる可能性があります。一方でお客様からは次に挙げる理由で専門家による支援が求められています。

  • ビジネスデータの価値を伝える推進者がいない
  • 予算の制約
  • 従来のチームメンバーのスキルギャップ
  • ツール自体がガバナンスの役目を果たすと考えている

ガバナンスはイノベーションに対する制約と見なされることがあります。この見解は主に、ガバナンスがこれまでどのように導入されてきたか、つまり指揮統制型のアプローチを活用した万能の解決策として導入されてきたことに由来しています。もう 1 つの要因は規制順守、つまり短期的な目標を達成するために長期的なイノベーションを犠牲にすることです。

データガバナンスとは

データガバナンスとは、組織のデータ整合性、可用性、使いやすさ、セキュリティを確保するためのプロセスです。ビジネスにとっての重要性を考えると、それをどのように管理するかが非常に重要です。一般的なガバナンスのカテゴリには次のものがあります。

  • トランザクションデータ
  • リファレンスデータ
  • 顧客データ
  • 製品データ

データガバナンスにはポリシー、手順の策定、テクノロジーの活用、プロセスの運用、データ所有文化の確立が含まれます。つまり、データの取り込み、処理、アクセス、そして最終的な廃棄の方法に適用される内部標準を設定することです。また、政府機関、業界団体、およびその他の関連する第三者が設定した基準への準拠も保証します。

中堅中小企業には大量の顧客データを管理、および維持するためのリソースや時間がない可能性があります。しかし、不十分なデータ管理がもたらす真のコストは金銭だけではありません。データの紛失や破損は、顧客からの信頼低下につながります。データガバナンスとは、組織が独自のデータを管理および保護するためのベストプラクティスを確実に順守するためのポリシーを確立することです。

ここで問題となるのは、中堅中小企業がデータガバナンスについて考慮すべきかどうかということです。

データガバナンス戦略がないことのリスク

企業は組織の人員が 10 人でも 100 人でも、データガバナンスを強く考慮する必要があります。効果的な戦略を実施することで、次の 5 つの一般的な課題を軽減できます。

  1. 信頼性の低下:信頼性が低い、または不正確なデータは企業の評判を傷つけ、場合によっては取り返しのつかないこともあります(とくに競争の激しい業界では)。
  2. データ管理コストの増加:重複データや冗長データの保管コスト、コンプライアンス違反の罰金もデータ管理コストの一因となります。
  3. データの悪用:ガバナンスがなければ、同じデータセットから異なる結論や誤った結論が導き出される可能性があります。
  4. 規制およびコンプライアンス違反:規制機関によって課される罰金は大企業ほど簡単には吸収できない可能性があります。
  5. セキュリティイベント:管理されていないデータに対し、外部の第三者や権限のないユーザーが情報にアクセスする可能性があります。

ビジネス要件に基づくデータガバナンス戦略の実施方法

ガバナンスアプローチは組織の事業運営状況を考慮する必要があります。たとえば、競争の激しい業界で状況の変化への対応が遅れると、ビジネスに多大なコストがかかる可能性があるため、機敏な意思決定を採用する必要があります。

多くのデータガバナンスのフレームワークが存在しますが、同じビジネスは 2 つとないため、意思決定者と共に有意義な基盤を構築するのために役立つ活動に焦点を当てます。

Models of data governance diagram explained in text below

図1: データガバナンスのモデル

1. 目標と優先順位の設定

最初のステップは組織の具体的な優先事項、目標、およびビジネスの成果を特定することです。例としては次のようなものがあります。

  • データセキュリティの強化によるリスクの最小化
  • 規制要件への準拠
  • コスト削減の実現
  • 分析データの価値の向上

ビジネスの成果に責任を負う関係者(CIO 、 CTO 、 CDO)と成功の測定に用いる指標を特定します。たとえばデータ品質、セキュリティ、リネージ(データソースから使用までのデータの流れ)などの指標があります。経営陣に技術担当の役員がいない場合は、会社のデータを密に扱う部門とその責任者を見つけてください。

2. 評価と分析­

具体的な成果を特定したのち、データガバナンスの推進者を選びましょう。技術やビジネスの領域に精通している人材が求められます。彼らは以下を支援します。

  • データ管理および統制プロセスを評価し、特定されたビジネス成果をサポートするか否かを判断する
  • データ収集、保守、伝達プロセスの分析

3. 定義

ビジネスの成果とリスク指標に基づいて主要業績評価指標 (KPI) を設定します。多くのお客様はデータガバナンスに直接関連するプロセスの管理者を含むチームを構築したいと考えています。このチームのメンバーは以下のとおりです。

  • データ所有者:データがすべてのシステムで一貫して安全に管理されるようにする責任があります
  • データ管理者:特定のデータセットのセキュリティを維持する責任があります
  • データスチュワード:データの品質を確保する責任があります

企業規模によっては、個人が複数の役割を担う場合があります。効果的なデータガバナンスの鍵はプロセスを定義した上で、標準化するための意思決定と実行権限を持つ個人に対し、データ領域の責任を割り当てることです。決定と行動には次のものが含まれます。

  • データ資産に対するデータドメインの定義
  • 各ドメインのアクセスと権限の定義
  • 各データドメインにおいて、データを記録するために用いるシステムの定義
  • 決定された内容に基づいてポリシーを策定する

4. 実行

データガバナンスチームによって定義されたポリシーとプロセスを実装するツールを選択します。業界にはいくつかのツールが存在しますが、要件に合った適切なツールを選択する必要があります。たとえば、 AWS Lake Formation は大規模なセキュリティ管理とガバナンスを簡素化する機能を提供し、データストアへのアクセス制御も可能にします。

見落とされがちな領域の 1 つとして、ガバナンスチーム以外への教育があります。データガバナンスの基準とポリシーを組織に知らせるためのコミュニケーション計画を作成します。一般的に共有すべき情報には次のものが含まれます。

  • データガバナンスに関するルールとポリシー。企業は新入社員を教育し、既存の従業員の知識を更新するために、これを毎年のトレーニングとして取り入れています
  • データガバナンスの利点および、データガバナンスが日々の業務でより良い意思決定を行うためにどのように役立つのか
  • データの問題やセキュリティイベントが発生した場合の連絡先とエスカレーションルール
  • 必要に応じたデータガバナンスプロセスの継続的な変更

5. 評価と統制

データガバナンスは継続的かつ進化し続けるプロセスです。だからこそ、目的地ではなく旅として考えるべきです。データガバナンスのポリシーと手順を運用したのち、次のステップをおすすめします。

  1. 特定のビジネス成果の KPI に基づいてレポートを作成することにより、データガバナンスプロセスの有効性を測定および評価します
  2. 評価に基づいて、データガバナンスプロセスに変更を加えます
  3. エンドユーザーからのフィードバックを求め、データライフサイクルを改善します

AWS クラウドはこのプロセスにどのように役立ちますか?

AWS はテクノロジーをさまざまな方法で適用して組織を変革できるよう支援します。これにより、もっとも重要な資産を管理し、イノベーションを実現し、達成できることの可能性を再考できるようになります。

15 年間にわたり 150 万人以上のお客様がデータサービスを利用してきた AWS は、もっとも経験豊富で信頼できるクラウドサービスプロバイダーの 1 つです。AWS ではデータガバナンスを進めるうえで役立つサービスを提供しています。

  • モニタリングと監査証跡
    • Amazon CloudWatch はログ、メトリクス、イベントからモニタリングデータと運用データを収集します
    • Amazon CloudTrail はユーザーのアクティビティと API の使用状況を追跡します
  • セキュリティとデータアクセス管理
  • データセキュリティと一元管理
    • Amazon Macie は機械学習を用いて機密データを検出する、フルマネージド型のデータセキュリティおよびプライバシーサービスです
    • AWS Lake Formation はセキュリティ管理とアクセス制御の簡素化に役立ちます
  • データ統合、変換、検出、保存

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次のステップ

企業は安全かつ費用対効果の高い方法でデータを最大限活用することを求めており、データガバナンスをビジネス目標に合わせるための経営陣によるスポンサーシップの必要性を取り上げました。責任を明確に定義した所有権の割り当てにより、成功に必要な説明責任を果たすことができます。データガバナンスを繰り返し実装することで、明確に定義された KPI と指標に対して効果的かつタイムリーな評価が可能になります。

反復的かつ適応的なアプローチを採用することで、データガバナンスのメリットが加速します。ビジネス目標の達成を可能にするデータガバナンス戦略の策定をお手伝いします。中堅中小企業のモダナイズについて詳しく学び、 AWS の専門家にお問い合わせください

翻訳はソリューションアーキテクトの酒井 賢が担当しました。原文はこちら です。