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クラウドジャーニーの歩み方 – Mobilize (移行準備)フェーズ – #5
まえがき
みなさん、こんにちは。カスタマーソリューションマネージャー (CSM) の上原です。お客様がクラウドサービスの導入や利用拡大を進める中で、日々直面する様々な課題の解決をご支援しています。本ブログでは、過去にクラウド移行の経験がなく、どのように進めたらよいかお悩みを感じているお客様に対し、まず第一歩を踏みだしていただくことの重要性や、それをご支援するプログラムを紹介していきます。なお、AWS のクラウド移行およびクラウド活用の全体の道のりについては、「クラウドジャーニーの歩み方 (前編) 」でも紹介していますので、全体感を把握されたい方はご参照ください。
まずはクラウドジャーニーにおける10のハードルに関して振返ってみましょう。
クラウドジャーニーにおける10のハードル
クラウド移行には、4つのフェーズがあります。 Assess (評価) から始まり、Mobilize (移行準備) に入り、Migration (移行) へと進みます。さらに、クラウド利用によるビジネスの価値を高めるため、Modernization (最適化) へ取り組む流れとなります。 本ブログは、 Mobilize (移行準備)フェーズ において「5.移行の経験不足のため不安があり移行がすすまない」に関して、課題の深堀りと解決策についてお話します。
Mobilize (移行準備) フェーズでの課題
「5.移行の経験不足のため不安があり移行が進まない」
実際に、これまでご利用の環境からクラウドへ移行を進めるためには、プロジェクト全体計画や、移行パスに応じたシステム毎の移行計画、更にそれら実行に必要な人材や作業手順(システム移行手順・アプリ正常性確認手順)等を整える必要があります。
しかし、これまでクラウド移行を進めた経験が不足していると、例えば以下のような不安や課題により、具体的な実行計画、手順作成への歩みが止まってしまうことが多いようです。
- クラウド移行の進め方自体がイメージできない
- 社内のどの部門、関係者と調整を進める必要があるかわからない
- 移行準備として、何をいつまでに、どのような責任分担で進めればよいかわからない
- クラウドに移行することによる、システムへの影響範囲がイメージできない
- 社内で移行プロジェクトが認知されておらず、協力が得づらい
前段の評価 (Assess) フェーズを通して想定された、クラウド移⾏による期待効果 (例︓ビジネスの俊敏性やスタッフの生産性向上、コスト削減など) が実際にどれだけ⾃社ケースで享受できるのか、実感がない状態では社内でプロジェクトの優先度を⾼めることが難しく、関係者が特定できたとしても協⼒が得ら れずに、全社プロジェクトとして推進することが難しくなってしまいます。
数多くのお客様の現場でこのような課題に時間を費やし、移行に向けた一歩が踏み出せずに、効果を得る機会損失につながってしまうケースを見てきました。
このような状況で我々が常々お伝えすることの1つとして、”小規模でもまずは実際にやってみる事”が何よりも重要である、ということです。自社環境でトライアルアンドエラーの気持ちをもって一歩目を踏み出し、そこから多くの学びを得て軌道修正するアプローチが、クラウドの利活用を進める上では最も効率的だと考えます。その結果、得られた経験・知見をベースに、例えば机上の想定効果の確からしさを確認する、移行の各種手順やステークホルダーを明確にする、また手を動かしてみて、初めて見えてくる懸念や問題も多くあることから、大規模に移行を進めるための課題の洗出しの機会にもつながると考えています。
ただし、例え小規模であっても実際に業務で使われるシステムを、AWSに詳しい人材が少ない状態で移行するには不安がある、というのもその通りだと思います。AWS では、まず移行の第一歩目を不安なく進めていただく為に、移行スペシャリストが事前準備の段階からお客様と併走することで、Lift & Shift で移行する一連の工程を体験いただけるプログラム ”Migration EBA” をご用意しています。
Migration EBA とは?
AWSの移行スペシャリストが事前準備の段階からお客様のシステム移行作業に伴走、実際の移行はワークショップ形式 (2-3日間) で作業をお手伝いする、短期集中型の無償支援プログラムです。
本プログラムは、移行作業全体を AWS メンバーと体験できる機会を通して、お客様ご自身で作業を行うためのノウハウを獲得、その後の作業に活かしていただくことをコンセプトとしています。特徴としては、デモやトレーニング環境ではなく、お客様ご自身の環境、かつ実際に業務利用されるシステムの移行を通して、より実践的な経験が得られることだと考えます。それにより、固有環境に依存する要件 (ロケーションや通信経路、スループット等) や、詳細な移行手順やカットオーバーのお作法に至るまで、お客様環境に応じて最適な移行方法をアウトプットとして確立することが可能です。
また、あくまでもお客様主体のプログラムとなり、AWS の移行スペシャリスト支援の元で、お客様ご自身で手を動かして頂く構成としていますので、移行作業全体を通して求められるスキルを認識、ご習得いただく機会としても有効です。
本プログラムを通して移行の全体像を把握、お客様実環境での手順を確立いただく事に加え、移行完了後、数週~1カ月程度の運用実績をベースに、事前に想定した期待効果が本当に得られるか、分析・評価を行うことも非常に重要です。クラウド移行により得られる効果が実績として可視化できれば、社内で協力者も増え、全社規模での円滑なプロジェクト推進の実現につなげることができます。
まとめ
今回はクラウド移行の経験不足といったテーマで、まず第一歩目を踏み出すことの重要性や、それをご支援する無償プログラムについてお話してきました。例え小規模システムであっても、まずは進めてみる中で得られる気づきや学びはとても多く、後続作業の解像度をあげると共に、全体進捗のスピードアップにもつながります。また、移行が失敗したとしても、そこから学びを得て早期に修正し、正しい活動や手順につなげていただく事が何より重要です。クラウド移行に向けた一歩が踏み出せないお客様のきっかけ作りとして、是非本プログラムをご活用頂ければ幸いです。
カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 上原 研太、安部 俊作
参考リンク
クラウドジャーニーの歩み方 – Assess (評価) フェーズ – #1
クラウドジャーニーの歩み方 – Assess (評価) フェーズ – #2
クラウドジャーニーの歩み方 – Mobilize (移行準備) フェーズ – #3
クラウドジャーニーの歩み方 – Mobilize (移行準備) フェーズ – #4