Amazon Web Services ブログ
Amazonでの売上を加速させるための需要予測活用の改善
Amazon で商品を販売する消費財企業にとって、需要予測を改善することは収益最大化の大きな一歩となる可能性があります。
消費財企業が Amazon のフルフィルメントセンターに自社製造商品を配送するためには十分な時間を必要とします。そのため変動する商品需要を正確に予測し見通す必要があります。多くの消費財企業がすでに Amazon ベンダーセントラルを使用しており、自社のビジネスインテリジェンスツールを使用してベンダーセントラルのデータを保存、分析したいと考えています。AWS サービスはそうした消費財企業のニーズを支援するべく、Amazon での発注(PO; purchase order)データを自動的に取り込み、Amazon Forecast が提供する機械学習(ML; machine learning)アルゴリズムを使用して将来を見据えた、きめ細かい時系列需要予測を生成する支援をして、消費財企業の OTIF(On-time, in-fulll; 納期通りに注文量を納品すること)のパフォーマンスを改善します。 このブログで取り上げるアーキテクチャにより、消費財企業が自らの環境で直接データを調達、分析、操作、連携することができるようになります。
Amazon での消費財販売
企業が Amazon で商品を販売するには 2 つの方法があります。
- ファーストパーティ(1P)販売 – PO を通じて消費財メーカーから Amazon が商品を購入し、消費者需要予測に応じて地域の Amazon フルフィルメントセンターに商品在庫を保管します。
- サードパーティ(3P)販売 – 3P販売者は Amazon 上で消費者に商品を直接販売できます。販売パートナーは在庫を所有し、小売価格を設定し、在庫、出荷、返品を管理します。Fulfillment by Amazon(FBA)を使用して倉庫管理業務を支援し、代わりに独自商品のイノベーションとビジネス成長に時間を集中させる選択をする 3P 販売業者もいます。
多様な商品、商品ラインごとに 1P モデルと 3P のモデルを使い分ける大規模な販売業者もいますが大きな違いは在庫の所有者です。Amazon 上で 1P ベンダーか 3P ベンダーかに関係なく、消費者が望んでいる商品が入手できる状態であり、かつ在庫がある状態にすることで消費者のニーズを満たす、ということがゴールなのです
消費財業界における課題: OTIF 配達実現のための正確な需要予測
多くの大手消費財企業は Amazon の 1P ベンダーであり、Amazon はさまざまな在庫管理単位(SKU; stock keeping unit)の数量の PO をメーカーに電子送信します。消費財メーカーは PO を受信すると、指定された日付までに、さまざまな SKU を受注した数量、特定の Amazon 配送場所に配送しなくてはなりません。これらの義務を果たすべく企業は Amazon に商品を納品するために、計画、製造、在庫管理する十分な時間を必要としており、また正確に需要予測を行うために信頼できるデータから得られるインサイト、つまり ML のアルゴリズムによってもたらされるインサイトを必要としています。
最近の McKinsey & Companyの記事によると、「パンデミックの間に消費財のオンライン販売は急増しました…そしてその傾向に衰退の兆しはありません。マッキンゼーの消費者心理調査によると、米国の消費者は COVID-19 の危機収束後もオンライン上でより多くのお金を消費すると考えて」います。これは、Amazon サプライチェーン内の配信場所への運用パフォーマンスの管理に注力することがますます重要になって来ている兆候です。
Amazon: 需要予測の精緻化
さまざまな製品カテゴリにわたって正確な意思決定を行う予測モデルを開発するために、Amazon は10年以上の長い道のりを歩んできました。当初は Amazon はルールベースの統計予測を使用していました。これが ML アルゴリズムに進化し、最終的には変動する消費者の需要をより正確に Amazon 自身が予測できるディープラーニングアルゴリズムへと進化しました。
これに気づいた AWS の顧客は、Amazon で使用されているのと同じ予測ソリューションを要求するようになりました。その結果、AWS は Amazon Forecast をリリースしました。これは、時系列予測や ML に関する深い専門知識を必要としない、フルマネージドなクラウドベースの需要予測サービスです。
データ分析を自動化し、ML 適用で変動する商品需要を正確に予測
1P ベンダーの多くは予測データを手動で収集しています。以下に示すアーキテクチャフレームワークでは、いくつかの基盤となる AWS サービスを使用してデータ収集プロセスを自動化しています。API を使用して Amazon ベンダーセントラルから過去、現在の PO データと商品カタログデータ、および診断レポートをプログラムで取得し、実際の需要を理解します。Amazon との統合を自動化することで、ベンダーが大規模にパフォーマンスを改善、維持できるようにし、Amazon でのビジネス成長を支援します。そしてこのソリューションは ML を使用することで、変動する今後数週間のベンダー PO の需要予測にも役立ちます。最終的にベンダーは、ポイント予測を使うのではなく、分類 A、B、C という SKU の単位で正しい確率予測(probabilistic forecasts)を立てることができます。
図 1: Amazon 出品パートナー向け、データ収集自動化リファレンスアーキテクチャ
はじめてみましょう
週次で正確な注文の需要予測をしているので、消費財企業は売上と利益の両方で成果改善への取り組みを始めることができます。
このソリューションにより次のようなことができるようになります:
- Amazon PO データのインポート: Amazon PO データをより簡単にインポートして、組織全体でシームレスにデータにアクセス、管理、共有します。
- 予測精度の向上: Amazon Forecast の ML を使用して予測精度を向上させ、確率予測を作成して、変動するベンダー PO の需要を数週間前に予測します。
- 商品変更の影響を追跡: 商品の重量やサイズが変更されていないか追跡して、メーカー側基準に準拠していることを確認します。
- OTIF ペナルティの削減: OTIF メトリクスを改善して Amazon.com でのオーガニックランキングを強化し、チャージバック費用を削減し、消費者が購入できる商品の在庫を確保できるようにします。
- すばやく SKU 在庫を確認: SKU の販売スピードに合わせて正しい確率的予測を行い、主要商品の在庫を維持し収益を向上させます。
需要予測を自動化して改善したいと考えているなら、AWS は運用を改善するため問題やその他の重要な課題を克服するために役立ちます。 AWS アカウントチームに連絡して、今すぐ始めてみましょう。
著者について
Charles Laughlin
Charles Laughlin は、AWS 消費財業界のワールドワイドテクノロジーリーダーです。 2019 年より AWS に在籍し、Make、Move、Market の各ビジネス領域でソリューションを構築するなど、消費財企業のテクノロジー戦略の定義、遂行支援の責任者です。AWS での消費財業界のお客様と協力して、最先端の AWS テクノロジーとソートリーダーシップでビジネス変革を支援しています。
Jeetesh Srivastva
Jeetesh Srivastva は、AWSシニアマネージャー、スペシャリストソリューションアーキテクトです。AWS アナリティクスサービスを専門としており、Amazon Redshift、AWS LakeFormation、その他 AWS アナリティクスサービスを使用してスケーラブルなソリューションを実装するべくお客様と協力しています。銀行/金融、およびホスピタリティ業界のお客様にオンプレミスおよびクラウドベースの分析ソリューションを提供してきました。
Mihnea Spirescu
Mihnea Spirescu は、AWSにおけるグローバル消費財バーティカルチームのシニアソリューションアーキテクトです。自身のキャリアを通じて、システム管理、フルスタック開発、ソリューションアーキテクチャなどの分野で多くの役割を担ってきました。AWS での豊富な経験を活かし、あらゆる規模の消費財企業がワークロードをクラウドに移行し、クラウドネイティブのアーキテクチャとソリューションをよりよく理解、実装できるよう支援しています。
翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。