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Amazon Q と Bedrock を使った SAP 生産性向上ユースケース

生成 AI の概要

生成人工知能 (生成 AI) は、会話、ストリー、画像、動画、音楽など新しいコンテンツやアイデアを生成できる AI の一種です。AI 技術は、画像認識、自然言語処理 (NLP)、翻訳などの従来とは異なるコンピューティングタスクで、人間の知能をまねようとしています。

生成 AI では、巨大なデータで事前に学習された大規模な機械学習 (ML) モデルがサポートされています。生成 AI では、次の 2 種類のモデルを認識する必要があります。

  • 基盤モデル (FMs) は、一般化されたラベル無しのデータでトレーディングされ、パターンと関係性を学習させ、次の系列の項目を予測する ML モデルです。
  • 大規模言語モデル (LLMs) は、FM のサブクラスの 1 つで、系列の次に来る単語を予測するようにトレーディングされています。

マッキンゼーの調査では、63 のユースケースで生成 AI が年間 2.6 兆から 4.4 兆米ドルの付加価値を生み出す可能性があると推定されています。これは、英国の GDP 3.1 兆米ドルと比べても非常に大きな数字です。

多くの SAP のお客様は、この新しい技術からどのようにビジネスの成果を向上できるかを尋ねています。いくつかの質問例は次のとおりです。

  • SAP お客様向けに利用可能な生成 AI 活用ユースケースは何ですか ?
  • 生成 AI は SAP お客様にどのようなビジネス価値を提供できますか ?
  • 生成 AI を活用して SAP 環境をモダナイズするために何を提供していますか ?
  • 生成 AI 活用はどこから始めるべきですか ?
  • お客様の生成 AI 活用は、誰が支援できますか ?
  • SAP のビジネスプロセスに生成 AI の導入をどのように成功させますか?

最近、AWS と SAP は戦略的な協業を拡大し、クラウド ERP (Enterprise Resource Planning) を変革し、企業が生成 AI の活用を支援しています。この協業アナウンスには以下の取り組みが含まれています。

  • SAP AI Core の Generative AI Hub は、Amazon Bedrock の生成 AI モデルと連携できます。これにより、SAP お客様が高パフォーマンスの大規模言語モデルと基盤モデルにアクセスして、カスタマイズされた AI アプリケーションを構築できるようになります。
  • SAP は、将来の SAP Business AI オファリングの学習と構築に AWS Trainium と Inferentia チップを使用する予定です。これにより、AI モデル開発プロセスを加速できます。実際の検証では、SAP エンジニアが同等の Amazon EC2 インスタンスで 23 日かかるところを、2 日で生成 AI LLMs の学習とファインチューニングを行いました。

このブログは、SAP お客様の質問に答え、AWS での生成 AI 活用のジャーニーを始めることを支援し、SAP への投資からより多くの価値を引き出すことを目的に書いています。

生成 AI はどう SAP お客様を支援するのか

AWS チームは、多くの SAP お客様との会話から、お客様が検証や実装を行っている一般的な生成 AI の活用ユースケースを特定しました。以下のリストは網羅的なものではありませんので、他にビジネス課題を解決するためのユースケースを検討したい場合はご連絡ください。

No ペルソナ ユースケース ビジネスベネフィット 関連 AWS サービス
ビジネスユースケース
1 販売在庫分析者 倉庫の在庫状況のリアルタイムインサイトを収集し、在庫切れと過剰在庫の状況を回避 製品の入手可能性や価格の安定性に関するお客様の信頼向上 Amazon Bedrock
2 Order-to-Cashの分析者 生成 BI 機能を使用してセルフサービスレポートを作成 Order-to-Cash プロセスを最適化し、処理時間とプロセスのボトルネックを削減し、意思決定を向上 Amazon Q in QuickSight
3 セールスアカウントマネージャー 販売ドキュメントを要約および分析することで顧客インサイトを獲得 顧客の注文とニーズを 360 度ビューで把握し、アップセリングの機会を創出 Amazon Q Business または Amazon Bedrock
4 調達管理者 RFP (提案依頼書) で記載した要件に対する複数の回答と見積もりを確認 RFP 回答の分析における生産性を向上させ、調達の意思決定を迅速化 Amazon Q Business
5 マスターデータ管理者 生成 AI を使用して、複数の言語での製品説明と画像を生成 SAP におけるマスターデータの生産性と正確性を向上させ、グローバル運用での非効率を回避 Amazon Q Business または Amazon Bedrock
6 エグゼクティブ (VP、SVP など) SAP レポートからリアルタイムインサイトを取得し、C レベル向けの電子メールを生成 CxO レベルと取締役会レベルでの意思決定を加速 Amazon Bedrock
7 財務監査管理者 SAP に集められた様々な財務取引に基づき、会社の方針に従ってリルタイム監査インサイトと異常を収集 監査コンプライアンスを迅速に処理し、異常に対する不要なエスカレーションを回避 Amazon Bedrock
8 支払債務管理者 調達から支払いまでのプロセスにおけるリアルタイムインサイトから、請求書の照合と異常の検出を実施 支払いを迅速に処理し、ベンダーとの関係を改善し、異常に迅速に対処 Amazon Bedrock
9 法務担当者 保険の補償範囲を理解するために保険ポリシー文書を要約 請求プロセスの完全性を確保し、長期的には顧客とベンダーとの関係を改善 Amazon Q Business または Amazon Bedrock
10 従業員 調達プロセスに関する会社の方針を理解 コンプライアンスを確保し、サービスと設備の調達を加速 Amazon Q Business
11 従業員 従業員福利厚生、補償範囲、請求プロセスに関する会社の方針を理解 従業員の生産性と福利厚生に対する満足度を向上 Amazon Q Business
技術的なユースケース
12 SAP ABAP 開発者 Eclipse IDE で ABAP プログラムを生成することで SAP プロジェクトを加速 開発者の生産性を最大 70% 向上 Amazon Bedrock
13 SAP ABAP 開発者 グローバル展開のための多言語印刷フォームを生成 印刷フォームを 1 回作成し、翻訳が優れた LLM により固定テキストと SAP の長いテキストを処理して、グローバルに展開 Amazon Bedrock
14 SAP ABAP 開発者 適切なドキュメントが不足の場合でも、プログラムから技術仕様とテストスクリプトを作成 SAP コンサルタントと開発者の仕様とテストスクリプトの正確性を向上 Amazon Q Business
15 SAP システム管理者 システム管理のタスクを迅速に完了 SAP システムの保守における生産性の向上とミスの削減 Amazon Q Developer

AWS の生成 AI サービス

AWS は、SAP お客様向けに、事前パッケージ化された生成 AI アプリケーション、独自の生成 AI アプリケーションの構築、独自の大規模言語モデル (LLMs) の開発など、生成 AI サービスを提供しています。

生成 AI スタック AWS サービス その他のサービス SAP コンテキスト
独自の大規模言語モデル開発 AWS Trainium は、AWS が 1000 億パラメータ以上のモデルの深層学習トレーニングに特化して開発した第 2 世代の機械学習アクセラレータです。一方、AWS Inferentia アクセラレータは、AWS が Amazon EC2 上の深層学習と生成 AI の推論アプリケーションに低コストで高性能を実現するよう設計したものです。 GPU、SageMaker、Ultra Cluster、EFA、EC2 Capacity Blocks、Neuron この最も高度なシナリオでは、SAP のお客様は社内の AI/ML 機能に大きな投資を伴います。事前トレーニングされた LLM がビジネスドメインに適合しないため、独自の LLM を構築するシナリオです。
独自の生成 AI アプリケーション構築 Amazon Bedrock は、FM を使用して生成 AI アプリケーションを構築およびスケーリングするための環境を提供します。これは、主要な AI 企業から高性能の FM を選択できる、完全マネージドサービスです。セキュリティ、プライバシー、責任ある AI に関する幅広い機能も提供されます。また、ファインチューニング、検索拡張生成 (RAG)、タスクを実行するエージェントの構築もサポートしています。 Guardrails, Agents, Fine-Tuning, Retrieval Augmented generation このコンテキストでは、SAP のお客様は Bedrock で利用可能な Anthropic Claude、Amazon Titans、Stability AI などの事前トレーニングされた LLM を活用したいシナリオです。提供される LLM は、プロンプトエンジニアリング、検索拡張生成、ファインチューニングなどの一般的な手法を使用することで、十分にユースケースを満たすことができます。
パッケージ化された生成 AI アプリケーション Amazon Q は、ビジネスに合わせてカスタマイズできる、作業向けの生成 AI アシスタントです。会社のデータ、情報、システムに接続することができます。
Amazon Q in QuickSight は、自然言語プロンプトを使用してビジネスデータからインサイトを簡単に作成・活用できる生成 BI アシスタントです。これにより、ダッシュボードやストーリーの作成が加速し、ビジネスプロセスでの意思決定が迅速化されます。
Amazon Q in AWS Supply Chain は、サプライチェーンプロセスの最適化を支援する生成 AI アシスタントです。
Amazon Q in Connect は、顧客の質問に対する応答とアクションを提案し、迅速な問題解決と顧客満足度の向上を実現します。エージェントは、リアルタイムの会話中に、さまざまなリポジトリからのナレッジ記事、Wiki、FAQ にアクセスできます。
Amazon Q Developer

SAP のお客様の大半は、おそらくこのカテゴリに該当し、事前構築された生成 AI サービスを活用してイノベーションを始めるでしょう。

数ステップの設定作業を実行することで、従業員の生産性を向上させるための独自の生成 AI アシスタントを構築できます。また、企業の意思決定を加速するために、ビジネスユーザがセルフサービスでレポートを作成できるように独自の生成 BI 機能を構築できます。

Amazon Q Developer は、ソフトウェア開発ライフサイクルの加速に役立ちます。

SAP ユースケースにおける Amazon Q と Amazon Bedrock の比較

Amazon Q と Bedrock の提供内容について詳しく見ていきましょう。これらは、事前構築されたサービスと生成 AI 機能を揃っているサービスにより、SAP のユースケースの大半をカバーし、生成 AI の採用を加速します。
Amazon Q Business は、エンタープライズデータに基づいて質問への答え、文書の要約、コンテンツ生成、タスク実行ができるように構成できる、マネージドサービスの生成 AI アシスタントです。AWS クラウドサービス内のさまざまなサービスに組み込まれています。ここでは 2 つの提供内容について説明します。

  • Amazon Q Business は、社内ポータル、SharePoint、Amazon S3 バケットなどの企業データソースと連携することで、独自の生成 AI アシスタントを作成するのに最適なオプションです。これらのナレッジベースを活用して質問に答えられる機能により、企業がメリットを得るための最も手軽な方法となります。
  • Amazon Q in QuickSight は、ユーザーにセルフサービスのレポーティングプラットフォームを提供することで、生成 BI の利活用が始められます。ユーザーは、SQL 文、結合メカニズム、その他の技術要素を理解しなくても、自然言語で独自のビジュアルダッシュボードやストーリーを作成できます。
  • AWS Supply ChainAmazon Connect は、特定のビジネスシナリオ向けに構築されたマネージドサービスです。これらのサービスを使用すると、Amazon Q がデフォルトで組み込まれることで、重要なビジネスプロセスの生産性が向上します。

一方、Amazon Bedrock は、開発者に完全マネージド型の機械学習サービスを提供し、カスタム AI モデルとアプリケーションの構築、デプロイ、スケーリングを可能にします。さまざまな大規模言語モデルを評価、選択、調整する機能を備えています。モデル開発とトレーニング、モデルホスティングとデプロイ、監視とオブザベーション、セキュリティとコンプライアンス、スケーラビリティとコスト効率、さらに幅広い AWS エコシステムとの統合のための管理環境を提供します。Amazon Bedrock は、インフラストラクチャとオペレーションをマネージドで実施しているため、AI アプリケーションの開発プロセスを簡素化し、開発者がモデル開発とアプリケーションロジックに集中できるようにします。

Amazon Q と Bedrock がサポートするセキュリティ標準

  • Amazon Q Business では、ユーザーのアクセス許可に基づいて適切なコンテンツにアクセスできるようデータのアクセス制御をサポートしています。Okta、Azure AD、Ping Identity などの外部 SAML 2.0 対応の ID プロバイダーと Amazon Q Business の Web エクスペリエンスを統合することで、ユーザー認証と認可を管理できます。
  • Amazon Bedrock は、お客様のプロンプトを AWS モデルの学習やサードパーティへの配布に使用することはありません。各モデルプロバイダーは、自身のモデルをアップロードするためのエスクローアカウントを持っています。Amazon Bedrock の推論アカウントにはこれらのモデルを呼び出す権限がありますが、エスクローアカウント自体には Amazon Bedrock アカウントへの送信権限はありません。さらに、モデルプロバイダーは Amazon Bedrock のログやお客様のプロンプトにアクセスできません。
  • Amazon Bedrock は、お客様の学習データを基盤モデルの学習やサードパーティへの配布に使用することはありません。使用タイムスタンプ、ログインしたアカウント ID、サービスによってログに記録されたその他の情報など、その他の使用データもモデルの学習に使用されることはありません。

Amazon Q と Bedrock を SAP に連携する方法

前述の考慮事項を踏まえ、Amazon Q と Bedrock を活用して SAP 環境で生成 AI 機能を有効にする方法について、いくつかのアーキテクチャガイダンスを説明します。これらは SAP での生成 AI の使用事例を網羅したリストではありません。アーキテクチャガイダンスは、ランドスケープと要件によって異なる可能性があります。

SAP ユースケースでは、まずSAP BTP の Generative AI Hub を検討

ブログ AWS と SAP の生成 AI サービスを活用しセキュアでスケーラブルなビジネス環境にでは、SAP AI Core サービスが大規模言語モデルなどの AI アセットをお客様に公開し、SAP BTP エコシステム上で実行される SAP アプリケーション向けの統一インターフェースを提供しています。
このジョイントリファレンスアーキテクチャ (JRA) では、SAP AI Core の Generative AI Hub を Amazon Bedrock へのアクセスとライフサイクル管理レイヤーとして使用し、アプリケーションが基盤モデルを利用できるエンドポイントを提示しています。
Generative AI Hubを通じて、SAP は SAP エコシステム全体でコンテンツフィルタリング、SAP 固有のリスク軽減、セーフティガードレールを一元的に適用し、潜在的なビジネスおよび法的リスクに対する規制準拠のアプローチを提供しています。

AWS for SAP Generative AI Hub

図 0. SAP AI Core を通じて Amazon Bedrock 呼出し

SAP インサイトの参考構成 (例:ユースケース 1 )

下の画像は、カスタムレポートの作成がなくても、セールスマネージャーが SAP Fiori Launchpad から直接在庫状況を問い合わせることができる機能を説明しています。これにより、従来のカスタム開発するための約 14 人日の ABAP 開発とテスト工数を削減できる可能性があります。
ユースケースの流れ:

  1. 英語でのクエリ: “Product highest inventory value at Chennai Warehouse”
  2. “The product with highest inventory value at Chennai Warehouse is Infrared Camera with total value of $1700”

Figure 1 SAP insight

図 1. SAP インサイト

SAP Datasphere と SAP S/4HANA との統合機能を備えた SAP HANA Cloud を活用しています。このシナリオでは、SAP Build Apps でユーザからの自然言語でのクエリを受け、API Gateway が提供する REST API をトリガーできます。この REST API 自体が Lambda 関数をトリガーし、Amazon Bedrock で提供される Retrieval Augmented Generation (RAG) をトリガーします。これは SAP HANA Cloud からのデータと連携できます。この構成は、AI Core 上の SAP Generative AI Hub を使用して、レイテンシを最小化しパフォーマンスを向上させるように変更することも可能です。

Figure 2 SAP Insight architecture diagram図 2. SAP インサイトアーキテクチャ図

ビジネスユーザー向けのセルフサービスレポーティングの参考構成 (例:ユースケース 2)

Amazon Q in QuickSight が、ビジュアル作成とストーリーを通じて、ビジネスユーザーが自身でセルフサービスレポートを作成できる方法を、以下の画像で説明します。これにより、専門のデベロッパーやアナリティクスチームを関与しなくても、さまざまなレポートの作成に要する時間を数日から数時間に短縮できる可能性があります。

ユースケースの流れ:

  1. ターゲットオブジェクトに沿ったストーリーを作成するために英語のプロンプトを入力します
  2. ストーリーを作成するために含める必要なダッシュボードのビジュアルを選択します
  3. ビルドをクリックします
  4. タイトルは Amazon Q によって自動的に生成されます
  5. セクションは Amazon Q によってストーリーの流れで作成されます
  6. 最後に結論が生成され、推奨事項生成で完成になります

Figure 3 Self service reporting with Q in Quicksight図 3. Amazon Q in QuickSight によるセルフサービスレポーティング

SAP Datasphere と SAP S/4HANA との統合機能を備えた SAP HANA Cloud を活用しています。Athena は、データフェデレーション機能を使って SAP HANA Cloud からデータ参照するように構成できます。ビジネスユーザーは、Athena を通してデータを取得し、Amazon Q in QuickSight で自然言語プロンプトを使ってビジュアルダッシュボードやストーリーを作成できます。
SAP のデータソースウィザードは、この構成を実現するための関連 Lambda 関数を作成します。

Figure 4 Self service reporting architecture guidance図 4. セルフサービスレポーティングの参考構成

SAP 向け生成 AI アシスタントの参考構成 (例: ユースケース 2、3)

下の画像は、Amazon Q が SAP Work Order アプリケーションの作業手順書とチャットすることで、保守エンジニアを支援する方法を説明しています。これにより、数百ページの印刷や、特定の情報を探すための各ページの確認が不要になり、プラント保守の生産性、正確性、作業品質が向上します。

ユースケースの流れ:

  1. メンテナンスオーダーには、バルブの修理方法を説明した作業手順 PDF を添付しました
  2. SAP にアップロードされたら、その PDF は Amazon Q Business でクロールされ検索可能になります。ユーザーは「How to repair the control valve if it has leakages ?」のように、ドキュメントを問い合わせることができます

Figure 5 Generative AI assistant for SAP図 5. SAP 向けの生成 AI アシスタント

SAP ERP または S/4HANA には、トランザクションデータ (構造化データ) と文書 (非構造化データ) の両方が含まれています。
トランザクションデータは Amazon AppFlow を使用して Amazon S3 バケットに抽出できます。これを Redshift にロードするか、または Athena で直接読み取ることができます。Amazon Q in QuickSight は、Redshift または Athena のいずれかをデータソースとして使用し、自然言語プロンプトを使用したセルフサービスレポーティングの生成的 BI 機能を可能にします。これにより、SQL やプログラミングの知識がなくてもビジネスユーザーが独自のダッシュボードやストーリーを作成できます。ポイント 1、4、6 を参照してください。
SAP トランザクションに添付された請求書、契約書、見積書等の文書は、AWS SDK for SAP ABAP または SAP Content Server を使用して S3 バケットに抽出できます。これらの非構造化データは、Amazon Q Business でクロールされインデックス付けされ、AWS IAM Identity Center によってエンドユーザーのアクセスが制御できます。

Figure 6 Generative AI assistant for SAP architecture diagram図 6. SAP 向け生成 AI アシスタントの構成図

上の図のステップの説明:

  1. AWS SDK for SAP ABAP を通じて、SAP レポート、添付ファイル、アーカイブデータを Amazon S3 バケットに抽出します
  2. Amazon Q は、Amazon S3 バケットに抽出されたデータ (購買発注書、請求書、マテリアルマスター、品目マスター、保守発注書、作業指示書など) をクロールします
  3. Amazon Q は、プロジェクト情報、作業ログ、現場写真、現場安全観察、日次調査などを含む他のデータソース (SharePoint、Jira、Zendesk など) からもクロールします
  4. S3 からの構造化データとレポートは、Athena 経由又は Redshift にロードでき、その後 Amazon Q と QuickSight を使用して、S3 に保存できるストーリーボードやレポートを作成できます
  5. AWS IAM Identity Center を統合して、Active Directory、Okta、その他のアイデンティティプロバイダーでユーザー認証ができます
  6. ユーザーは Web ブラウザから Amazon Q と QuickSight にアクセスでき、Fiori などの SAP フロントエンドに埋め込むこともできます

ABAP Assistant for SAP の参考構成 (例:ユースケース 12)

下の画像は、Bedrock の機能を Eclipse 開発ツールに統合することで、ABAP コードとドキュメントを生成する方法を説明しています。この機能により、ABAP プログラミングを高速化し、ABAP ドキュメントの作成を支援することで、SAP での Clean Core 実装を加速できると考えられ、開発者の生産性が 70% 向上すると期待できます。

SAP ABAP Assistant プラグインを使えば、SAP 開発者は Eclipse IDE から ABAP コードと ABAP ドキュメントを生成できます。ABAP Assistant Eclipse プラグインは Eclipse IDE にインストールされ、開発者の個人パソコンで動きます。

ユースケースの流れ:

  1. ビジネス要件に基づいて ABAP プログラムを作成するためのプロンプトを書き、Amazon Bedrock を呼び出します
  2. プロンプトから ABAP プログラムが自動生成されます

Figure 7 ABAP assistant for SAP図 7. SAP 向け ABAP アシスタント

Figure 8 ABAP assistant for SAP architecture diagram図 8. SAP 向け ABAP アシスタントの構成図

上の図のステップの説明:

  1. ABAP 開発者は、コマンドラインインターフェース (AWS CLI) を使用して AWS IAM Identity Center で認証を行い、プラグインで使用される認証情報を取得します。
  2. ABAP 開発者は、SAP システムを Eclipse の ABAP プロジェクトとして追加します。
  3. ABAP 開発者が ABAP Assistant プラグインを呼び出すと、設定された AWS Identity and Access Management (IAM) ロールを引き受け、Amazon Bedrock を呼び出すために必要な認証情報を生成するために AWS Security Token Service (STS) が呼び出されます。
  4. ABAP Assistant プラグインは、Amazon Bedrock サービスを呼び出して ABAP コードとドキュメントを生成し、結果を Eclipse に返します。

まとめ

私たちは、さまざまな生成 AI の SAP ユースケースとその潜在的なビジネス価値について説明しました。また、SAP 環境での変革を始め、加速させるのに役立つ AWS のサービスオファリングについても説明しました。

これから、お客様の SAP 環境のために生成 AI の力を解き放つことが可能になりました。Amazon Q と Bedrock を使えば、これまでにないほど簡単に始められます。Amazon Q のドキュメントブログをご確認し、Amazon Q 搭載の生成 AI アシスタントの設定方法を学んでください。ステップバイステップのガイド、サンプル構成、ベストプラクティスがあり、SAP に添付されたドキュメントの要約から、意思決定を加速するための推奨事項の生成まで、あらゆることをサポートできる Q モデルをすばやく展開できます。

Amazon Q in QuickSight を使って、ビジネスユーザー向けのセルフサービスレポーティングを始め、生成 BI アシスタントとして、ビジュアルダッシュボードやストーリーを簡単に作成することで、意思決定スピードを向上させます。

Amazon Bedrock のドキュメントブログもご確認ください。Bedrock は、大規模言語モデルを構築し、本番規模で展開するための包括的な基盤を提供します。Bedrock を使えば、事前学習済みモデルを調整し、安全にホストし、SAP アプリケーションに統合できます。

AWS Generative AI for SAP ワークショップを試して、Bedrock、Amazon Q、QuickSight の機能を体験してください。このワークショップは現在、SAP AI Core の Generative AI Hub を含めるように改訂中です。PartyRock も忘れずに探索して、Bedrock 搭載のプレイグラウンドで AI 生成アプリの構築を体験してください。

最後に、Amazon Bedrock の生成 AI モデルを統合する SAP AI Core の Generative AI Hubを検索してみましょう。これにより、SAP お客様は高性能な大規模言語モデルと基盤モデルにアクセスして、AI アプリケーションを構築できるようになります。

AWS for SAP ブログを確認し、SAP への投資からより多くの価値を得る方法について情報を収集してください。今日から Amazon Q と Amazon Bedrock を使い始め、ビジネスに生成 AI の力を解き放ちましょう!

SAP on AWS ディスカッションへの参加

お客様のアカウントチームと AWS サポートチャネルに加えて、最近 re:Post – AWS コミュニティ向けの質問と回答のサイトをローンチしました。AWS for SAP ソリューションアーキテクトチームは、AWS for SAP のトピックを定期的に監視し、お客様やパートナーの皆様をサポートできる議論や質問に回答しています。質問がサポート関連でない場合は、re:Post に参加してコミュニティのナレッジベースに貢献することをご検討ください。

クレジット

このブログへの貢献に感謝したいチームメンバー: Gyan Mishra, Adren D Souza, Derek Ewell, Beth Sharp, Spencer Martenson。

翻訳は Specialist SA トゥアンが担当しました。原文はこちらです。