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AWS Cloud Digital Interface で実現する柔軟なクライアントプレビュー
カラーグレーディングやフィニッシングなど、高性能かつリアルタイムのポストプロダクションワークフローがクラウドに移行するにつれて、適切なローカルディスプレイデバイスでリファレンス品質の動画を表示できることが極めて重要になってきています。
さらに、リモートでのチーム作業がますます快適になっていく中、クリエイティブ分野の意思決定者は、どこにいても肩越しのフィードバックを提供できるよう、質の高い、リアルタイムビューをいまだに期待しています。
そのため、ポストプロダクションワークフローのニーズを満たすための新たな課題が生まれています。
Autodesk Flame、Streambox Spectra VM、および Colorfront Streaming Server が AWS Cloud Digital Interface (AWS CDI) をサポートするようになりました。これに加え、昨年はクラウドにおけるカラーグレーディングおよび AWS Elemental MediaConnect のための非常に忠実度の高いワークフローが発表されるなど、上記課題を解決するための、さまざまな要件に対応したオプションが増えてきました。
AWS CDI とは?
AWS CDI は、AWS クラウド内で質の高い非圧縮動画を伝送することを可能にするネットワークテクノロジーであり、高い信頼性と 8 ミリ秒という短いネットワークレイテンシーを実現します。
図 1: オンプレミス動画ワークフローに使用される SDI ケーブル
高性能の接続と非圧縮ライブ動画を必要とするワークロードは、これまでシリアルデジタルインターフェイス ( SDI ) 接続を使用するか、標準的なネットワークを介した SMPTE ST-2110 が使用されてきました。AWS CDI は、仮想 SDI ケーブルであると考えることができます。AWS CDI を利用すると、AWS Cloud 内のコンピューティングインスタンスおよびサービス全体で同様のワークロードを構築することが可能になり、信頼性が高く、高性能で相互運用可能な非圧縮動画の伝送を実現します。
Flame における AWS CDI による動画プレビュー
Autodesk Flame の 2023.3 リリースの一部として、Autodesk は、AWS 上で稼働している Flame ワークステーションでの CDI による動画モニタリングのサポートを追加しました。これにより、超低レイテンシーの非圧縮動画を、AWS 上で実行されている他のソフトウェアに最大解像度 4K、色深度 12bit、60フレーム / 秒 (fps) で伝送できるようになりました。
図 2: AWS CDI ワークフローをサポートする、アップデートされた Flame 2023.3 ユーザーインターフェイス
今回のリリースにより、Broadcast Monitor の設定セクションで CDI を Broadcast Monitor のターゲットとして選択できるようになり (1)、ネットワークの構成、CDI シグナルのルーティング、伝達関数メタデータの付加が可能になりました (2)。すべてのColor Spaceがサポートされており (3)、かつ、Flame のすべての Broadcast Timing もサポートされています (4)。
また、CDI との統合により、Streambox や Colorfront などの他のパートナーソリューションにも非圧縮動画を伝送できるようになりました。これらのソリューションは、動画をパッケージ化してさまざまな宛先に転送し、質の高い肩越しのプレイバック、リファレンス品質のモニタリング、軽量のリモートストリーミングを可能にします。
Streambox Spectra VM における CDI の活用
AWS は IBC 2022 において、Flame on AWS のテクノロジープレビューをデモンストレーションしました。Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスでエンコーディングを実行する Streambox Spectra VM に接続し、CDI による動画のモニタリングを行いました。このインスタンスは、低帯域幅でエンコードされた2つのストリームをエクスポートしました。1 つは、Chroma+ ハードウェアデコーダーを使用したポイントツーポイント (P2P)、もう 1 つは、Streambox Cloud によるもので、ユーザーが、iOS、tvOS、macOS、または Windows の Streambox Player で視聴セッションにログインすることを可能にしました。
「今年 AWS CDI に出会い、非常に刺激を受けました。すでに AWS 上でクラウドアプリケーションを実行しているバーチャルストリーミングメディアエンコーダー、 Streambox Spectra との相性が抜群であることが、すぐにわかりました。数週間のうちに、CDI SDK を使用して CDI エンコーディングとデコーディングのプロトタイプを実行し、オレゴンからアイルランドへの 4K のフィードを 120 ms のレイテンシーでテストしました」— Alex Telitsine | CTO at Streambox Inc.
Streambox Chroma+へのP2Pストリームは、LG C1シリーズの有機ELテレビ(OLED TV)の駆動に使用されました。この構成は、HDR10に必要な10ビットの精度と、3-4フレームのレイテンシーでUHD動画のプレビューを可能にしました。AWSヨーロッパ (ロンドン) リージョンからアムステルダムのRAIコンベンションセンターまで、通信状態が不安定になりがちな展示会のパブリックネットワーク経由でも、CDIのシグナルはイベント中ずっと安定していました。
IBCの後、StreamboxとAutodeskは協業し、Spectra VMをFlameと同じEC2 GPUインスタンスで実行できるようにしました。このコラボレーションにより、コンピューティングインスタンスを追加する必要がなくなり、パフォーマンスや品質を犠牲にすることなく効率が向上し、全体的なコストが削減されました。
図 3: Streambox とのコラボレーションによる、AWS CDI を使用したFlame の IBC 2022 でのデモ構成
「AWS パートナーネットワークの一員として、IBC のプロトタイプを作成するために、私たちは AWS および Autodesk Flame 開発チームとジョイントコールを行いました。目標は、Reference Video Streaming の実演、そしてアムステルダムで行われる IBC ショーに向けてコラボレーションをアピールすることでした。Autodesk および AWS チームと協力し、プロジェクトを立ち上げて実行し、ライブデモを行うことができてよかったです!」 — Alex Telitsine | CTO at Streambox Inc.
図 4: IBC デモアーキテクチャ
Streambox Cloud を使用して、同じシグナルを Flame から HDR10 対応ディスプレイの iPad Pro に解像度 1080p でストリーミングしました。また、ユーザーは標準モバイルデバイスでログインしてストリームをリアルタイムで視聴でき、世界中のどこでもセッションを視聴できることが実証されました。
Colorfront、Streaming Server に CDI サポートを追加
柔軟な CDI プレビューのオプション拡大の一環として、Colorfront は 2022 年 12 月 7 日にストリーミング製品 Colorfront Streaming Server の CDI 入力のサポートを発表しました。
Streaming Server は、非圧縮 CDI 動画をプロ仕様かつリファレンス品質の HEVC コーデックに変換します。Colorfront Advanced Streaming Gateway や Colorfront のStreaming Player と組み合わせることにより、4K プロジェクターからモバイルデバイスまで、さまざまなリモートディスプレイで承認と QC が実行できるようになります。
図 5: Colorfront Streaming Server を使用して、スイート内のクライアントモニターを含む複数のリモート視聴者にサービスを提供する AWS 上の Flame
Colorfront の Web ベースの招待システムには、セッション管理者を追加したり、セッションを作成したり、招待状を送信したりするためのシンプルなツールが用意されています。招待システムは、複数のクライアントに複数の安全なストリームを提供するために必要な SRT Gateway を自動的に構成します。
以下の手順に従って、マルチユーザーストリーミングセッションを構成したり、ストリームをローカルの Flame スイートにルーティングしたりすることができます。
図 6: Colorfront の招待ワークフロー
Colorfront Web UI では、適切な Streaming Server を選択し(1)、Streaming Session へのユーザーの招待を開始できます(2)。招待を受け取ったユーザーは (3)、セッションリンクをクリックするか、自分のデバイス ( Apple TV や iPhone など ) に表示されるコードを入力します。ストリームが接続されると、接続中のクライアントをColorfront Web UI でモニタリングできます(4)。
これにより、Flame ステーションの出力に迅速かつ安全かつ簡単に接続できます。
図 7: Colorfront Streaming Server と Streaming Player を使用した Flame のリファレンス動画
Flame ステーションからの入力は、伝達関数(3)を含め、自動的に検出されます(1)。 Streaming Server は、クライアントストリームのターゲット解像度とビット深度を設定するように構成できます (2)。
「詳細な SDK と、それに含まれる役に立つヒントや例のおかげで、AWS CDI の実装はわかりやすく、簡単でした。他の AWS パートナー、特に Autodesk Flame の開発チームとのコラボレーションにより、ワークフローを迅速に検証できたため、Streaming Server にフル機能の CDI を実装することができました」— Bruno Munger | Director of Business Development at Colorfront
AWS CDI を Colorfront の Streaming Server に統合したことにより、クラウドで作業するフィニッシングアーティストは、世界中のどこにいても同僚やクライアントとコラボレートできるようになりました。これは、ホームネットワークやモバイルネットワーク経由でも、Amazon EC2 インスタンスからスムーズで応答性の高い、リモート動画再生をユーザーに提供することによって実現されています。
図 8: 動画プレビューに Colorfront Streaming Server を使用するように構成された Flame スイート
まとめ
Autodesk、Streambox、Colorfront などの企業が AWS CDI を活用するにつれて、コンテンツ制作の動画プレビューワークフローのための健全な CDI エコシステムがAWS 上に急速に構築されつつあります。制作会社は、独自の要件と予算にマッチした、低レイテンシーかつ忠実度の高いストリーム向けのソリューションを設計することができます。
試してみるには?
以下一覧にある Autodesk の認定販売パートナーと AWS パートナーは、Flame をクラウドにデプロイした実績があり、お客様のワークフロー、デプロイ、構成のニーズに対応することができます。
Autodesk の認定販売パートナー:
Streambox 製品の詳細については以下をご覧ください:
https://www.streambox.com/autodesk-flame
Colorfront Streaming Server の詳細については以下をご覧ください:
https://colorfront.com/NEWS/CDI
Autodesk について
3D デザイン、エンジニアリング、エンターテイメントソフトウェアの世界的リーダーとして、最も幅広い製品ポートフォリオを提供している Autodesk は、Fortune 100 企業中 99 社を含む 1,000 万社を超えるお客様が、現実世界のプロジェクトパフォーマンスのデジタルデザイン、視覚化、シミュレーションを通じて継続的なイノベーションを実現できるよう支援しています。
参考リンク
AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)
AWS のメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
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翻訳は BD 山口、SA 金目が担当しました。原文はこちらをご覧ください。