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O2 Telefonica と Nokia、 5G コアネットワークを AWS へ移行

本記事は、「O2 Telefonica Moves its 5G core network to the Cloud with AWS and Nokia」(2024年5月7日公開)を翻訳したものです。

O2 Telefónica は新しい「5Gクラウドコア」を発表しました。この5Gクラウドコアはヨーロッパのネットワーク機器プロバイダーである Nokia とアマゾンウェブサービス(AWS)の技術を使用して、完全にクラウド上で構築されます。

より多くの通信事業者が、ネットワークワークロードをクラウドに移行する価値を認識しています。今年前半、日本の主要なモバイルオペレーターである NTTドコモが、AWS と協力して全国規模の 5G オープン無線アクセスネットワーク(RAN)を日本で商業展開することを発表しました。また、2021 年には DISH との協力で、米国国内の5Gネットワークを迅速的に構築・拡大することを発表しました。

一方で、本日の発表も重要です。通信事業者が既存のネットワークと加入者を、AWS 上で稼働する新しい 5G クラウドネットワークに移行する初めての事例です。

5G クラウドネットワークは、モバイル加入者をインターネット、音声、およびその他のネットワークに接続する「パケットコア」の進化形です。これは、加入者が 5G スタンドアローンネットワークを利用する際に、モバイルデータストリームが集約される場所です。新しい 5G クラウドコアは、加入者がプロバイダーの 5G スタンドアロンネットワーク(「5G Plus」)を利用する際に、より良いネットワーク体験を提供します。このアプローチで、コアネットワーク機能はクラウドネイティブアプリケーションとして設計され、より迅速かつコスト効率よく更新できるため、O2 Telefónica に運用上の利点ももたらします。これは、新機能が常に必要とされる 5G 時代において、特に重要です。ハードウェアを購入したり、専用のプライベートクラウドをデプロイ・管理する代わりに、ソフトウェアを更新し、クラウドでの容量を柔軟に予約またはキャンセルできます。これにより、O2 Telefónica は加入者に新しい 5G サービスを展開しやすくなり、加入者への最適なサポートと新たな収益化の機会を提供します。

O2 Telefónica の Director Mobile Access Network である Matthias Sauder 氏はそのメリットについて以下のようにコメントしました。「私たちは、データセキュリティと主権能力の向上、および優れたパフォーマンス、効率性、弾力性により、AWSをを選びました。これにより、我々のお客様に優れた5G体験と新しいデジタルアプリケーションを提供できます。」

次に、O2 Telefónica および Nokia と協力して、最も安全なクラウドである AWS を使用して、ネットワーク品質の向上と高いセキュリティ基準を実現する方法について詳しく見ていきます。

O2 Telefónica のネットワークアーキテクチャは、クラウドでの高可用性とスケーラビリティを念頭に設計されています。O2 Telefónica は、AWSリージョンとアベイラビリティゾーンを活用して、Nokia 5G コアを大規模に運用するための回復力、高い耐障害性のアーキテクチャを構築しました。例えば、計画作業もしくは計画外イベントが発生した際に、トラフィックは自動的に他のサーバーにルーティングされ、サービスのレジリエンスを実現します。結果として、サービスの中断なくメンテナンスを行うことができ、ネットワークの可用性が向上します。これは、モダンな 5G アプリケーションにとって特に重要です。このアーキテクチャで O2 Telefónica は Nokia のコンテナ化されたクラウドネイティブネットワーク機能(NFs)のオーケストレーションのために、Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)を使用しています。これは、AWS リージョンや AWS Outposts におけるコンピューティング重視型からスループット重視型まで、さまざまなタイプのワークロードに対応する、Amazon Elastic Cloud Compute(EC2)をノードとして使用しています。

政府や規制が厳しい業界から小規模企業やスタートアップまで、世界中のお客様が Amazon Web Services (AWS) を信頼して下さり、最も機密性の高いデータやアプリケーションをAWS上で構築しています。これは O2 Telefónica が AWS を選んだ主な要因の一つです。O2 Telefónica のデータコアネットワークは、モバイルネットワークの中心部分であり、すべてのアプリケーションとデータが集約される場所です。すべてのデータは、O2 Telefónica のオンプレミスまたはヨーロッパ内の AWS インフラストラクチャに保存され、完全にエンドツーエンドで暗号化されています。O2 Telefónica は、AWS とオンプレミスの様々な Nokia NFs 間の IP ネットワーキングに Amazon Virtual Private Cloud(VPC)を使用しており、無線アクセスネットワーク(RAN)サイトなどのオンプレミスサイトへの高性能、安全、レジリエントな接続には AWS Direct Connect を使用しています。O2 Telefónica は、セキュリティ、品質、およびデータ保護の高基準を包括するクラウドセキュリティフレームワークを開発しました。加入者データを保護するために、データ暗号化キーの管理に Amazon Key Management Service(KMS)AWS CloudHSM を使用しています。これらサービスには専用の改ざん防止ハードウェアデバイスがフルマネージドで提供されます。さらにこのアーキテクチャは、すべてのAWSコンピュートインスタンスの基盤となる AWS Nitro System を活用して、データの分離、暗号化、コストパフォーマンス最適化、および速いイノベーションなど、O2 Telefónica の要件を実現し、ネットワーク運用者を加入者データにアクセスできないように制限します。そして、AWS Nitro System により、AWS は通信事業者ネットワークのトポロジ全体にクラウド連続体を提供し、EC2、ネットワーキング、およびEKSサービスをクラウドネイティブアーキテクチャの基本的な構成要素とします。耐障害性、パフォーマンス、拡張性に優れたブロックおよびネットワークアタッチドストレージには、Amazon Elastic Block Storage(EBS)とAmazon Elastic File Storage(EFS)をそれぞれ使用しています。AWS アカウントおよび組織のポリシーの一貫性のあるスケーラブルなガバナンスには、O2 Telefónica は AWS Control Tower を使用しています。様々な AWS リソースの自動展開および管理には、Continuous Integration/Continuous Deployment(CI/CD)サービスのスイートを使用しています。これらの CI/CD およびオブザーバビリティツールセットには、AWS CloudFormationAWS CodePipelineAWS CodeBuild、Amazon Elastic Container Service(ECR)、および Amazon CloudWatch が含まれます。

O2 Telefónica は、AWS が Amazon EKS 内で Multus Container Network Interface(CNI)プラグインをサポートしていることからトラフィック分離も可能になり、また、高速パケット処理を含む様々なネットワーク機能要件に従って個別の CNI プラグインを使用できます。さらに、異なる種類のトラフィック(例えば、制御プレーンとユーザープレーン)を分離して、VPC 間および VPC-to-オンプレミス接続に異なるルーティングおよびセキュリティポリシーを適用するために、O2 Telefónica は Multi-VPC Elastic Network Interface (ENI) アタッチメントを使用しています。Amazon EKS での Kubernetes 更新の頻度を最小限に抑えるために、O2 Telefónica は Amazon EKS 延長サポートを使用しています。Kubernetes のマイナーバージョンを Amazon EKS が一般提供された時点から最大26か月間使用できます。

「O2 Telefónica の5Gクラウドコアネットワークに選ばれたことを非常に誇りに思います。AWS の経験、成熟度、信頼性、セキュリティ、およびパフォーマンスが、O2 Telefónica の 5G クラウドコアネットワークの構築を支援し、彼らの未来のネットワークビジョンを実現するのに役立っています。」と、AWS EC2 VP の Jan Holfmeyr は述べています。

テレコム向けの AWS クラウドソリューションについて詳しくは、AWS for Telecom をご覧ください。

著者について

Amir Rao

Amir Raoは、AWS の EC2 エッジサービスのテレコプロダクトマネジメントディレクターです。彼のグローバルチームは、テレコのお客様向けの AWS EC2 エッジサービスの構築に焦点を当てており、OSS/BSS、5Gコアおよび IMS、5G RAN(CU/DU)、および他の固定/モバイルネットワークアプリケーションドメインのための AWS サービスとインフラストラクチャを含みます。彼のチームは、Wavelength や Integrated Private Wireless (IPW) などの AWS 製品を管理することによって、企業のデジタルトランスフォーメーションにつながる 5G ネットワークの収益化にも焦点を当てています。現在の役職に就く前は、通信業界ビジネスユニットの AWS ソリューションポートフォリオの GM でした。彼のリードで、テレコお客様による AWS クラウドの採用が進み、テレコビジネスのバリューチェーンとテレコネットワークのトポロジー全体にわたる複数のソリューションが提供されました。Amir は、AWS、Motorola Solutions, Huawei, Nokia, Microsoft などの Tier 1 テクノロジープロバイダーで20年以上のグローバルな業務経験を持っています。キャリアを通じて、彼は2005年の CDMA、2006年の WIMAX、2012年の LTE、2019年の 5G MEC(Wavelength Zones)、2019年の AWS Outposts as NFVi、2021年には Dish と AWS クラウド上で5Gネットワークの構築、Swisscom と AWS クラウド上で 5Gコアの構築を経験しました。彼はスタンフォード大学経営大学院とロンドンビジネススクールの卒業生です。

Fabio Cerone

Fabio は現在、AWS のマネージングディレクターであり、2019年に EMEA 地域向けのテレコビジネスユニットを設立しました。AWS に入社する前は、大規模なビジネス(10億ドル超)をスケールするセールス経験を持ち、通信業界でソフトウェアソリューションとサービスのビジネス開発を行いました。彼は Ericsson や Telecom Italia などの大手通信会社で働いてきました。Ericsson では、テレコクラウドビジネスラインのグローバルヘッドとして、サービスプロバイダーのクラウド導入への変革を推進しました。Fabio は、グローバル視点(コーポレートのグローバルエグゼクティブ役職)とローカル視点(顧客セールスエグゼクティブ)の両方でセールス成長とビジネス変革を推進し、成功を収めたダイナミックなエグゼクティブです。テックセクターで24年の経験を持ち、彼のキャリアは、セールス、デリバリー、ビジネス開発の様々な顧客対応役職から、会社全体の変革プログラムを推進し、新しい分野でのセールスを促進するジェネラルマネージャー役職まで成長しました。彼の専門知識は、通信業界、通信システムとアーキテクチャ、通信ソフトウェア、クラウドインフラとサービス、管理ソフトウェアとプラットフォーム、モビリティ(5Gへの進化を含む)、システムインテグレーションビジネスに焦点を当てています。Fabio のリーダーシップと管理経験は、高パフォーマンスな組織の開発、コラボレーション、所有権、アカウンタビリティ、および顧客重視の文化の確立において重要な貢献をしました。

翻訳はソリューションアーキテクトの陳誠が担当しました。