Amazon Web Services ブログ
RyanairがAWS上に構築した新しい乗務員アプリで業務効率を向上
ライアンエアー(欧州最大の航空会社で1日3,330便以上を運航)は、2034年までに旅客数を2倍に増やす計画を立てています。そのため、最前線のスタッフに効果的な業務遂行に必要なツールを提供することが不可欠です。最近、Amazon Web Services (AWS)と協力して、新しい客室乗務員向けアプリを開発しました。
複雑なスケジューリングの課題
ライアンエアーは90以上の拠点に客室乗務員を配置し、欧州全域で1日最大3,300便を運航しています。客室乗務員は4人1組のチームで働き、自身の拠点で1日を始め終えます。通常のシフトでは最大800人の乗客をライアンエアーの便でお迎えします。
乗務員のスケジューリングは本社の運航計画チームが管理し、航空機の定時運航と各シフト終了時の乗務員の帰還を確実にする任務を担っています。訓練、休暇、天候による混乱などを考慮すると、スケジューリングがいかに複雑になるかがわかります。
ライアンエアーの事業規模が拡大し続けるにつれ、計画チームには最新の計画ツールを提供する必要があります。これにより、乗務員のスケジュール管理に必要な手作業のプロセスを削減できます。これまで客室乗務員は、スケジュール変更を要求する際にチケットを提出し、長い待ち行列で待つ必要がありました。運航チームは平均して月に8,000件ものシフト交代のリクエストだけを手作業で処理していました。
Working Backwardsアプローチ
AWSでは、最も効果的な解決策は「Working Backwards(顧客の課題やニーズから逆算する)」ことで生み出されると考えています。そのため、ライアンエアーのようなお客様にAmazonの物流センターの見学や、エグゼクティブ向けブリーフィング、ビジョン策定ワークショップなどに参加していただき、同様のアプローチを体験していただいています。
ライアンエアーは2017年からAWSと協力関係を築いており、従業員アプリのインスピレーションは、ティルベリーにあるAmazonの物流センターの見学から得られました。見学中、物流と航空会社における複雑な業務での人員管理の類似点が明確になり、ライアンエアーチームは、Amazonのスタッフが従業員用モバイルアプリを使って仕事と生活をどのように管理しているかを体験しました。
「Amazonの従業員アプリを見たとき、私たちの乗務員にもこれが必要だと直感しました!」- ライアンエアー機内サービス部門ディレクター シネード・クイン
見学の後すぐに、ライアンエアーとAWSのチームは、Amazonの「Working Backwards」手法を用いて、客室乗務員のための革新的なソリューションについてブレインストーミングを行いました。ライアンエアーの機内サービス部門と人事部門は、AmazonのPeople Experience and Technology Solutions(PXT Solutions)チームと協力し、グローバルとローカルの両レベルでの人員管理の方法を検討し、ライアンエアーに最適なソリューションを見出しました。
構想から実現まで、PXT SolutionsチームのAmazonのプロダクトマネージャーとライアンエアーチームの間で継続的な連携が行われました。Amazonは、グローバルな従業員への変更展開や、組織全体でのオーナーシップ提供に関する自社の経験を共有しました。
2023年9月、シネード・クインのビジョンは、Ryanair Connectの立ち上げとして実現しました。このアプリは、ライアンエアーの客室乗務員が手のひらで簡単に仕事と生活を一元管理できるツールです。導入から4週間以内に、Ryanair Connectはライアンエアーの90以上の拠点と15,000人の客室乗務員に採用されました。
ライアンエアーのプロダクトマネージャー、ジョナサン・ドックレルは次のように語っています。「私の役割は、先を見通すことです。エンドユーザー(客室乗務員)や開発チームと密接に協力しながら、インパクトのある製品に仕上げていくプロセスを楽しんできました。以前に同様の経験をしたAmazonのプロダクトマネージャーにアクセスできたことが、このローンチの成功につながりました!」
Ryanair Connectは、AWSのサーバーレスサービスを使用して構築されており、数千人の客室乗務員からの需要に効率的に対応できるよう拡張可能です。イベントベースのアーキテクチャを採用し、ライアンエアーの基幹システムと統合されています。アクセスはAWS WAFとAWS Shield Advancedで保護されています。
客室乗務員の活躍を支えるRyanair Connect
Ryanair Connectにより、客室乗務員は自分のスケジュールとフライトの詳細をほぼリアルタイムで確認できるようになりました。また、年次休暇やシフト交代のリクエストもより便利に行えるようになりました。
フライトスケジュールを予定通りに実施するため、予期せぬ事態に対応できるよう各シフトには常に待機中の客室乗務員がいます。ライアンエアーの運航チームは、その日に必要な待機乗務員の人数を確実に把握しています。待機中の乗務員は、アプリを使って待機勤務から外れることを申請でき、ビーチで過ごしたり家族と時間を過ごしたりすることができます。
おわりに
Ryanair Connectアプリの成功を受けて、客室乗務員たちはさらなる革新を求めています。そこでライアンエアーチームは、客室乗務員の体験をさらに向上させ、業務を簡素化するためのロードマップを作成しました。この新しいロードマップには、生成AIの力をどのようにRyanair Connectに活用し、さらなる機能強化を図るかという検討も含まれています。
従業員が成長できるような適切なツールを提供し、企業文化を作ることは、多くの組織が目指す目標ですが、それを実現することは容易ではありません。ライアンエアーは2017年からAWSと協力関係を築き、信頼に基づいた強固な関係を発展させてきました。この協力を通じて、ライアンエアーは自社のビジネスの仕組みと将来の展望を共有してきました。
そして、AmazonとAWSは、150万人以上の従業員を抱えるまでに成長した経験から得た知見を共有しました。ライアンエアーが2034年までに3億人の旅客数を目指す中で、私たちは協力して、現在そして将来の従業員のニーズに応えるアプリを作り上げることができました。
AWSのクラウドサービスやソリューションを活用して従業員や顧客の体験を向上させる方法については、AWS トラベル&ホスピタリティをご覧ください。
ビジネスの加速についてご相談は、AWSの担当者までお問い合わせください。
翻訳はソリューションアーキテクトの矢形が担当しました。原文はこちらです。
Shane Routley
シェーン・ラウトリーは、AWSのシニアカスタマーソリューションズマネージャーとして、UKI(英国およびアイルランド)地域のエンタープライズ顧客のクラウド導入を支援しています。20年にわたるIT変革と製品管理の経験を持ち、顧客がビジネス価値を生み出すテクノロジーソリューションを提供できるよう支援しています。テクノロジーサービス、ヘルスケア、FMCG(日用消費財)業界での経験を持ち、現在は英国を拠点としています。