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AWS IoT SiteWise Assistant による製造業における意思決定の変革

このブログは “Transforming industrial decision making with AWS IoT SiteWise Assistant” を翻訳したものです。

今日のめまぐるしく変化する産業界では、重要な情報にすばやくアクセスして解釈できるかどうかが、円滑な運用とコストのかかるダウンタイムの分かれ目になります。多くの組織は、断片化されたデータがさまざまなダッシュボードやドキュメントに分散していることに悩まされており、包括的な洞察をタイムリーに得ることが困難になっています。AWS IoT SiteWise Assistant が一般公開されたことを発表できることを嬉しく思います。これは AWS IoT SiteWise の新機能で、製造業のユーザーが運用データを操作してよりよい洞察を得るためのものです。

AWS で IoT データを活用

AWS は、製造業、消費材、自動車、ヘルスケアなどの業界全体で革新的なソリューションを実現する専門的な IoT サービスを幅広く提供しています。AWS IoT サービスは、イノベーションを加速し、簡単かつ大規模にクラウドからエッジまでの IoT アプリケーションを保護し、優れた AI と ML の統合に役立ちます。昨年、AWS は、その実行能力とビジョンの完全性 (its ability to execute and completeness of vision) により、ガートナー社の 2024 Magic Quadrant for Global Industrial IoT Platformsでリーダーに選ばれました。

図1: グローバル産業用IoTプラットフォームのマジッククアドラント

AWS IoT SiteWise は、産業機器から大規模にデータを簡単に収集、保存、整理、監視できるようにするために開発されたマネージド型 IoT サービスであり、データ主導型のより良い意思決定を支援します。AWS IoT SiteWise を使用すると、企業はさまざまな産業機器やプロセスからデータを効率的に収集し、そのデータをモデル化して自社の設備や施設を正確に表し、情報をリアルタイムで処理および分析し、直感的な標準装備のツールにより運用を視覚化し、高度な分析や機械学習アプリケーションのための他の AWS サービスとシームレスに統合することができます。

AWS IoT SiteWise Assistant の導入は、この強固なデータ基盤の上に成り立っています。Assistantは、分散した情報を統合し、多様なユーザーニーズを満たすように加工することで、現代の製造業の複雑さに対処します。製造のお客様の状況に合わせた要約、Q&Aによる深い洞察、意思決定を促進するためのデータ分析を通じて、産業データの理解と分析のための統一されたアプローチを提供します。

図 2: SiteWise Monitor Dashboard の AWS IoT SiteWise Assistant

AWS IoT SiteWise Assistant の主な機能

要約:雑音を断ち切る

製造現場では、重要な情報が複数のダッシュボードや文書に分散していることが多く、産業ユーザーが業務の全体像を迅速に把握することは困難です。AWS IoT SiteWise Assistantの要約機能は、ユーザーが複雑な状況の本質をすばやく理解できるようにし、簡潔でコンテキストに沿った要約を一目で確認できるようにすることで、これらの問題に対処します。設備間の関係性、履歴データ、機器ユーザーマニュアル、組織の標準作業手順書などを考慮して、お客様の産業環境に関する状況に応じた理解を活用し、特定の産業環境に合わせた意味のある洞察を導きます。AWS IoT SiteWise Assistant のコンテキスト認識機能により、ナレッジベースや運用が拡大し発展しても、要約は関連性が高く実用的なものに保たれます。

あなたが工場長として勤務するところを想像してみてください。工場の操業状況を確認する必要があります。AWS IoT SiteWise Assistant を使用すれば、さまざまなダッシュボードで何ページものデータをふるいにかけるのに貴重な時間を費やす代わりに、施設内のアクティブなアラートやアラームの総合的にかつ分かりやすくした概要を受け取ることができます。重要な問題、影響を受ける設備、潜在的な影響を強調した概要は瞬時に把握できるため、迅速な優先順位付けとリソースの割り当てが可能になり、運用効率が向上します。

図 3: ダッシュボードにアラームを要約する AWS IoT SiteWise Assistant

詳細分析:Q&A でインサイトを発見する

要約機能を使うことで、業務における関心分野の概要をすばやく包括的に把握できますが、実際の製造現場は複雑であり、より詳細な調査が必要な場合があります。AWS IoT SiteWise Assistant を使用すると、ユーザーは自然言語でアシスタントと Q&A で会話したり、フォローアップの質問をして特定の問題を掘り下げたり、関連するデータポイントを調べたりすることができます。この機能は、さまざまなユーザーエクスペリエンスニーズの課題に対応します。AWS IoT SiteWise Assistant では、さまざまな役割やユースケースに合わせて特注のダッシュボードを複数作成して管理する代わりに、さまざまなユーザー要件に適応する柔軟な自然言語インターフェイスを提供します。たとえば、警告アラームの概要を確認した後に、メンテナンス技術者が「この設備の過去の動作実績はどうですか?」と尋ねる場合があります。または「同様のアラームが記録に残っているか?」アシスタントは、AWS IoT SiteWise データおよび組織のナレッジベースとの緊密な統合を活用して、状況に応じた詳細な回答を提供します。このような質問の深掘りにおいて文脈を保持したまま質問を続けることが出来ます。

図 4: AWS IoT SiteWise Assistant の詳細説明とフォローアップ QA

分析:意思決定の加速

AWS IoT SiteWise Assistant は、要約機能と詳細分析機能を組み合わせて分析と意思決定を迅速化します。このアシスタントは、大まかな概要と詳細な洞察の両方をオンデマンドで提供することで、ナレッジベースが拡大し進化しても、産業ユーザーが情報に基づいた意思決定を迅速かつ自信を持って下せるよう支援します。

品質エンジニアが生産上の異常を調査しているとします。まず、最近のアラームと生産データをまとめることから始めます。パターンに気づいたら、Q&A 機能を使用して履歴データを調べ、イベントの関連性を明らかにし、潜在的な原因を分析します。さまざまなダッシュボードや文書から、手作業でまとめるのに何時間もかかっていたような知見を、数分以内に集めました。このような素早い分析は、より迅速な問題解決と業務効率の向上につながります。

図 5: トラブルシューティングの推奨事項を提供する AWS IoT SiteWise Assistant

シームレスな統合とデータへのアクセス方法

組織によってニーズや技術的スキルはさまざまであることを理解した上で、AWS IoT SiteWise Assistant は柔軟で既存のワークフローやシステムに簡単に統合できるように設計しました。AWSでは主に 3 つの統合オプションを提供しています。

カスタムソリューション用の新しい API: 開発者は新しい API を通じて AWS IoT SiteWise Assistant の機能にオンデマンドでアクセスできるようになり、既存の IoT アプリケーションへのシームレスな統合が可能になります。

IoT AppKit ウィジェットの更新 : チャットボット、折れ線グラフ、KPI ゲージなどのアシスタント対応ウィジェットで IoT AppKit を強化しました。これにより、大規模な開発作業を行うことなく、ダッシュボードやアプリケーションに AI を活用した分析機能を簡単に追加できます。

アシスタント対応の SiteWise Monitor Portal (プレビュー) : アシスタント対応の SiteWise Monitor Portal には直感的なインターフェイスが用意されており、コードを書かなくてもデータから得られた洞察を可視化できます。これにより、産業ユーザーは関心のある産業データに関するクイックダッシュボードをAWS IoT SiteWise で作成し、SiteWise Assistant と直接やり取りできるようになります。このポータルにより、技術的な専門知識に関係なく、組織全体のユーザーがアシスタントの機能にアクセスできるようになります。この機能は現在プレビュー段階です。

これらの統合オプションにより、AWS IoT SiteWise Assistant は分散した情報にアクセスするための統一されたインターフェイスを提供し、誰もが簡単にインサイトにアクセスできるようにしながら、既存のインフラストラクチャに適応できるようになります。

セキュリティとプライバシー

産業データは機密性が高く専有情報であることが多いです。AWS IoT SiteWise Assistant はお使いの AWS 環境内で完全に動作するため、お客様のデータがお客様の管理下を離れることはありません。アカウントで管理されているお客様自身のデータとドキュメントのみが活用されるため、情報が他のお客様や業界間で共有されることはありませんのでご安心ください。

AWS IoT SiteWise Assistant は、AWS IoT SiteWise の運用コンテキストに基づいてデータのみをクエリし、そのデータを参照して Amazon Kendra インデックスを通じて設定されたナレッジベースで詳細情報を検索します。標準作業手順書、マニュアル、その他のナレッジベースのドキュメントは、複製されるのではなく、AWS IoT SiteWise でそのままの状態で保存されるため、エンタープライズナレッジコンテキストのセキュリティとプライバシーがさらに強化されます。どのようなガイダンスが提供されても、検証または監査を目的とした情報源が提供されます。

図 6: ソースの引用を提供する AWS IoT SiteWise Assistant

結論

AWS IoT SiteWise Assistant は、産業データの分析におけるパラダイムシフトです。ユーザーが複雑な状況を要約し、自然言語クエリでデータを深く掘り下げ、情報を迅速に分析できるようにすることで、産業環境におけるよりスマートで迅速な意思決定への道が開かれます。関連付けるデータの増大、知識情報の増大、ユーザーエクスペリエンスのニーズの多様化といった主要な課題に対処し、現代の製造業の運用に適した統一されたソリューションを提供します。

詳細については、機能ページ入門ガイドをご覧ください。

著者について

Pradeep Kaushik
Pradeep Kaushik は、アマゾンウェブサービスのシニアプロダクトマネージャー (テクニカル) で、製造および産業セクター向けの高度なテクノロジーに重点を置いています。ロックウェル・オートメーションでの17年を含む22年以上の経験を持つ彼は、IoT、デジタルツイン、拡張現実、産業分析と AI を専門としています。Pradeep の専門知識は、ビジネス管理、製品開発、エンタープライズアーキテクチャ、ソリューションに及びます。AWS では、AWS IoT SiteWise、AWS IoT TwinMaker、AWS IoT Events などの産業サービスにおけるイノベーションを率いています。
Johnny Wu
Johnny Wuは AWS の AWS IoT SiteWise チームのシニアデベロッパーアドボケイトです。2014 年に AWS に入社し、IoT サービスに移る前は NoSQL サービスに数年間携わっていました。Johnny は、ビルダーがより少ないリソースでより多くのことを行えるようにすることに情熱を注いでいます。彼は、インダストリアル IoT を通じて顧客が簡単にインサイトを得られるようにすることに重点を置いています。

このブログの翻訳はソリューションアーキテクトの大井が担当しました。