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週刊生成AI with AWS – 2024/5/27週

みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの小林です。

6月 20 日、21 日はAWS Summit Japanが幕張メッセで開催されます。様々な生成AI関係のコンテンツを用意していますので、色々と眺めて頂いて「これが自分達でもできたら嬉しいな」という気づきを探してみてください。生成AIも言ってみれば「やりたい事を実現するためのツール」なので、何を実現したいかをイメージできていると、前に進みやすいのではないでしょうか。AWS Summit Japanはそのための良い機会ですので、ぜひご活用ください。

そして、AWS Summit Japanでは様々な業界向けのブースを設定します。今日は製造業のお客様向けのブース展示内容を少しだけご紹介します。製造業では熟練の技術者のノウハウ継承がひとつの課題になっており、生成AIによる解決が期待されている領域です。それに向けた解決策のひとつのアイデアとして、AIによる技能継承のサポートのデモを実施します。ブログ記事にまとめていますので、ぜひチェックしてみてください。

それでは、5 月 27 日週の生成AI with AWS界隈のニュースをお届けしていきましょう。

さまざまなニュース

    • AWSとSAPが戦略的協業の拡大を発表し、お客様の生成AI活用を支援
      AWSとSAPは長年にわたる協業関係を持っていますが、生成AIに関してもその協業関係を拡大することを発表しました。SAP AI CoreにAmazon Bedrockが統合され、Bedrockで利用可能な様々な基盤モデルをベースとしてお客様のデータでカスタマイズされたアプリケーションが実現できます。また、AWSが開発したアクセラレータであるAWS TrainiumとAWS Inferentiaを、将来のSAP Business AI製品のトレーニングと推論に活用する予定であり、これらを利用して大規模言語モデル(LLM)のトレーニングとファインチューニングを2日で完了したと発表しています。ぜひ、プレスリリースの原文をご覧ください。現時点では英文ではありますが、概要を紹介するブログ記事も公開されています。
    • AWS生成AI国内事例ブログ: コネヒト株式会社様、高度な質問検索機能を1ヶ月で実現
      ママリ」というママ向けQ&Aアプリ/情報サイトを展開するコネヒト株式会社様の事例解説ブログを公開しました。この事例では、Amazon BedrockAmazon OpenSearchServiceによる検索拡張生成(RAG)を1ヶ月で実現しています。検索拡張生成(RAG)のメリットですが、「誤字が含まれるキーワードによる検索」「文章による検索」を実行した場合、単純な全文検索と比較して、望ましい結果を応答できる可能性が高いことがわかりました。ユーザさんに対して、より意図に沿った検索体験を提供できる手応えを感じたというコメントを頂いています。「サービスのユーザ体験向上」という価値を生み出したい方にとっては、参考になる事例ではないでしょうか。
    • AWS生成AI国内事例ブログ: 第一興商様、ヘルプデスク業務負荷軽減のために生成AIを活用
      株式会社第一興商様が開発・展開するカラオケシステム「DAM」といえば、多くの人が一度はお世話になった事があるのではないでしょうか?DAMは業務用のカラオケ機器ですので、機器の不具合や状況確認に対応する業務は重要です。ヘルプデスクでは問い合わせ内容をCRMに記録するそうなのですが、その負荷と内容のばらつきに課題があり、その点をAmazon Bedrockを介して生成AIを活用することで解決しようと考えました。特筆すべきは、当初はBedrockでClaude 2を利用していたそうですが、Claude 3 Haikuの利用を想定した検証に着手されている事です。Claude 2よりもコストを90%以上削減、レスポンスまでの時間短縮を達成見込みとのことで、生成AIを組み込んだアプリケーション開発におけるBedrockの「良いモデルが出たら切り替えやすい」というメリットをご活用いただいています。
    • AWS生成AI国内事例ブログ: 三井物産様、生成AIによる入札書解析の完全自動化に挑戦
      三井物産株式会社様は三井物産グループ内における入札業務で活用できる、生成AIによるソリューションの開発に取り組んでいらっしゃいます。様々な入札案件に参加する場合、数百ページにおよぶ入札書を確認する必要があるそうです。ですが海外事業の場合、読み解くのに30-40時間を要する、正確な理解には業界知識が必要、担当者の異動で知見が引き継がれない場合がある、といった課題がありました。この解決のために、入札書をAmazon S3にアップロードすると自動で解析を行う仕組みを開発しました。入札書に含まれる情報抽出にはLegal-RoBERTa-largeというモデルを利用し、その情報をさらに細かく分割・整理するためにAmazon Bedockを介してJurassic-2 Ultraを活用。解析結果はWeb UIで担当者の方に参照いただく仕組みです。これにより入札書の解析時間を70%短縮、これは年間2,000時間の作業時間に相当します。またAWSのフルマネージドサービスを利用することで運用費削減・負荷に応じた柔軟なスケーリングが可能になったそうです。

サービスアップデート

    • Amazon BedrockのConverse APIを発表
      Amazon Bedrockのメリットのひとつは、統一されたAmzaon BedrockのAPIで様々な基盤モデルを呼び出せることです。今回、そのメリットを強化するConverse APIが公開されました。基盤モデルには、推論時のパラメータをはじめモデル毎に固有の違いがあります。これまでBedrockを介して基盤モデルを呼び出す場合、モデル毎のパラメータの違いは開発者が考慮し対応する必要がありました。Converse APIはこの手間を省き、様々なモデルをシームレスに呼び出すことを可能にします。また、Converse APIは複数回の会話のやりとりを行うマルチターン対話や、モデルのツール呼び出し(関数呼び出し)にも対応しています。
    • PartyRockがドキュメントファイルの処理に対応
      PartyRockは、Amazon Bedrockで稼働する基盤モデルを利用したアプリケーションを構築する方法をGUIで学び、試せるサービスです。今回、PartyRockにドキュメントヴィジェットが追加されました。ドキュメントヴィジェットはPDFやCSVを含むテキストファイル、Microsoft Wordなどのドキュメントに対応しており、他のヴィジェットと接続することでドキュメントの内容を要約したり、それに基づいた画像生成などが容易に実現できます。
    • OracleからPostgreSQLへの移行を生成AIで支援する新機能を発表
      AWS Database Migration Serviceは異種データベースの移行を容易にするサービスです。今回、DMS Schema Conversionという機能で、生成AIによるデータベース移行を支援できるようになりました。これは生成AIによるスキーマ変換支援機能で、移行先のデータベースでサポートされていないデータベース関数を利用している際に、それをエミュレートすることで移行作業の負荷を軽減するものです。生成AIによる支援機能を利用するには拡張パックの有効化が必要ですので、ご注意を。
    • Powertools for AWS Lambda(Python)がAgents for Amazon Bedrockをサポート
      オープンソースのライブラリ、Powertools for AWS Lambda(Python)Agents for Amazon Bedrockに対応しました。Agents for Amazon Bedrockは基盤モデルや外部システムとのAPIによる連携が必要な複雑なタスクを処理する自立型エージェントアプリケーションを開発するための仕組みです。Powertools for AWS Lambda(Python)を利用すると、OpenAPIのスキーマを自動生成し、Agents for Amazon Bedrockからのリクエストとそれに対する応答を構成することを容易にします。
    • Amazon SageMaker Canvasのスタートアップ時間が最大10倍高速に
      Amazon SageMaker Canvasはコーディング不要で機械学習技術による正確な予測を提供するサービスです。今回、サービスのスタートアップ時間が最大10倍高速になり、データ準備・カスタマイズ・機械学習や生成AIモデルのデプロイを高速に実行できるようになりました。

著者について

Masato Kobayashi

小林 正人(Masato Kobayashi)

2013年からAWS Japanのソリューションアーキテクト(SA)として、お客様のクラウド活用を技術的な側面・ビジネス的な側面の双方から支援してきました。2024年からは特定のお客様を担当するチームを離れ、技術領域やサービスを担当するスペシャリストSAチームをリードする役割に変わりました。好きな温泉の泉質は、酸性-カルシウム-硫酸塩泉です。