AWS Startup ブログ
スタートアップシティ福岡で、全国のテック企業各社が議論【CTO Night & Day 2023 Fukuoka – Day1 ダイジェスト】
CTO Night & Day は、スタートアップを中心とした企業における、CTO や VPoE などの技術経営者のための招待制カンファレンスです。参加者同士によるディスカッションや経験・事例の共有などを通じて、技術経営者としての経験年数や企業規模を超えた幅広い知識と人脈の交流の場を提供します。技術経営者のコミュニティが醸成・活性化され、業界全体が発展していくことを目的としています。
2014 年より、宮崎や京都、金沢、長崎、オンラインなど場所や形を変えながら年 1 〜 2 回実施してきました。第 12 回を迎える 2023 年はスタートアップシティ福岡市にて、オフサイトならではの学びとネットワーキングの場を提供いたしました。参加された CTO・VPoE の人数は合計 203 名と過去最大規模。今回は福岡県福岡市中央区の「ヒルトン福岡シーホーク」ホテルにて 2023 年 9 月 12 日に行った Day1 の模様を、ダイジェスト形式でお届けします。
前夜祭 Welcome Party
Day0(前夜祭)の Welcome Party は、開放感のある「天神モノリス」の会場にて実施しました。CTO Night & Day の大きな特徴は、参加者同士の交流や情報交換を重視していることです。CTO や VPoE 同士が開発組織の課題について相談することで、相手から解決のためのヒントをもらえる場合もあります。また、談笑を通じて生まれたネットワークが、新たな企画やビジネスのきっかけになることもあるのです。
そうした、貴重な“出会い”を創出する場として、Welcome Party は有効に機能しています。今回の CTO Night & Day は過去最大規模の参加者数ということもあり、Welcome Party にも多くの方が詰め掛けます。会場の至る所で、参加者同士の和やかな会話が見られました。Welcome Party 開始時には少し緊張した面持ちだった方も、周囲の参加者と話すうちにすっかり打ち解けた様子。いずれのテーブルでも、和やかかつ熱量の高い交流が行われていました。
AWS Morning Session / Ask An Expert(個別相談会)
Day1 のイベントは「ヒルトン福岡シーホーク」ホテルの会場にて開催。午前中に開催されたのは、AWS 社員が特定のテーマに基づいてノウハウを共有する AWS Morning Session。そして、AWS のソリューションアーキテクトが、お客さまの抱える課題をヒアリングしてアドバイスをする Ask An Expert(個別相談会)です。
CTO や VPoE の業務領域は非常に幅広いものです。アーキテクチャ設計・技術選定といった技術的なトピックや採用・育成・人員配置などの組織的なトピック、事業戦略の策定や予実管理のような経営的なトピックと、扱う内容はさまざま。
AWS Morning Session / Ask An Expert は、こうした各種の業務課題に対するノウハウや解決のためのアイデアを提供することを目的としています。6 つのトラックに分かれ、前半パート・後半パートでセッションを実施しました。参加者の方々は、興味のあるセッションのテーブルに着座し、耳を傾けていました。
<前半パート>
T1 1st Party Data は宝の山?今注目される企業間データコラボレーション
T2 クラウドコストの予実管理 ~IPO に向けて今からできること~
T3 クラウド時代のエンジニア像とは? ~採用・育成・組織づくり~
T4 [AWS Startup ゼミ]よくある課題を一気に解説!~御社の技術レベルがアップする CTO 向け総集編 2023~
T5 Amazon のプロダクトマネジメント
T6 Ask an Expert for CTO
<後半パート>
T1 進化的アーキテクチャを構築する
T2 Generative AI on AWS コトハジメ ~最新サービスの話から Alexa で考える生成系 AIとのインタラクションまで~
T3 令和の時代におけるライブ動画配信サービスの作り方
T4 [AWS Startup ゼミ]よくある課題を一気に解説! ~御社の技術レベルがアップする CTO 向け総集編 2023~
T5 CTO のための Amazon カルチャーとマイクロサービス
T6 Ask an Expert for CTO
Welcome Lunch
12 時からはホテル内のダイニングスペースにて、Welcome Lunch を開催。Day0 の Welcome Party には参加できなかった方々も Welcome Lunch には駆け付けてくださり、ほぼ全員が参加しての会食となりました。
午前中に実施した AWS Morning Session / Ask An Expert の感想を言い合ったり、各社の事業内容を紹介したり、たわいない雑談で親睦を深めたりと、各テーブルで会話が盛り上がりを見せていました。
これほど大勢の技術経営者たちが一堂に会する機会はめったにありません。そのため、積極的につながりを作ろうと、参加者同士が名刺交換をする光景も Welcome Lunch では多く見られました。
Opening, Icebreak
午後からはいよいよ、CTO Night & Day の本編がスタート。冒頭ではまず、福岡市長の高島 宗一郎 氏よりコメントをいただきました。
福岡市長 高島 宗一郎 氏
福岡市はスタートアップエコシステムの支援を積極的に行っています。そのため、経営と技術の懸け橋となる CTO や VPoE の方々をお迎えできることを大変うれしく思っていると、高島 氏は感謝の言葉を伝えました。そして、各セッションが実りある場となることや、イベントを通じて数多くのネットワークが構築されることへの期待を述べた後に「本日はようこそ福岡市へお越しくださいました」と結びました。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 事業開発部 シニアマネージャー 野澤 紅美
次に、CTO Night & Day イベント全体の統括を行う、アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業開発部シニアマネージャーの野澤 紅美よりごあいさつをしました。
CTO Night & Day のイベント概要について述べた後、今年のテーマが「創造と変革」であると言及。Day1 では国内外のゲストをお迎えして、新しいテクノロジーを用いてサービスを創造する知見について語っていただくこと。そして Day2 では主に参加者の方々から、変革を目指す過程で経験した失敗からの学び、あるいは技術経営者として成長するうえでの学びなどを語っていただくことを説明しました。
そして、今回の CTO Night & Day が過去最大規模であることに触れた後に、「この 2 日間でみなさまが、業務の創造や変革につながる学びを持ち帰ってくださることを願っています」と述べました。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 技術統括本部長 巨勢 泰宏
最後はアマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 技術統括本部長の巨勢 泰宏がごあいさつ。前日の Welcome Party で、参加者の熱量の高さに感銘を受けたことにまず触れました。
そのうえで、AWS の沿革について説明しました。かつて、AWS がサービスを開始した際には「クラウドは事業としてうまくいかない」という旨の意見が、各所から寄せられたといいます。しかし、AWS の経営陣はそうした論調を気にすることなく、自信を持って事業を展開しました。
その自信の根拠には、AWS 社内で何十回も行われた、事業についての“議論”がありました。Amazon には、ミッションステートメントとして掲げる Working Backwards(お客さまを起点に考える)という価値観があります。AWS の事業を開始する前に、経営陣はこの価値観に基づいて数え切れないほどの議論を重ね、事業のアイデアを洗練させたのです。
このエピソードを踏まえ、巨勢は「今回の CTO Night & Day では、参加者の方々同士で数多くの議論とチャレンジを重ねて、イノベーションに繋げていただければ幸いです」と述べました。あいさつの後は、会場のみなさんにアイスブレイクをして打ち解けてもらい、各セッションへと続きました。
Session1:創造と変革を導く CTO のための、グローバルテックトレンドと世界市場展開
<スピーカー>
Algolia Co-Founder/Board Member & Y Combinator Group Partner Nicolas Dessaigne 氏(写真左)
<モデレーター>
WiL パートナー 代田 常浩 氏(写真右)
急激に変化するテクノロジーへの対応と世界市場への展開は、創造と変革を導く技術経営者にとって避けて通れない課題です。本セッションでは、グローバルに活躍される Nicolas 氏にこれらの最新のトレンドと戦略をお伺いし、技術経営者の方々に新たな視点とインサイトを提供しました。
Algolia 社が提供する全文検索サービス「Algolia」は、サービスの機能やユーザー体験がテクノロジーの進歩と密接に関係しています。使い勝手の良い検索を実現するには、同義語の判定やテキストのベクトル変換など高度な技術を組み合わせる必要があるためです。Nicolas 氏は Algolia 社がどのような技術を活用して、サービスの利便性を向上させてきたのかを解説。また、シードアクセラレーターの Y Combinator に関連した活動内容と実績についても言及しました。
セッション中盤からは、モデレーターの代田 氏が参加して fireside chat を実施。近年台頭しているスタートアップが扱う技術の傾向や AI・LLM といった技術が市場に与える影響、最新のテクノロジーを活用して適切にサービス開発を行う方法などが語られました。また、Algolia 社が複数の国に拠点を持ちサービス展開していることを踏まえて、ビジネスを世界展開するうえでの知見も Nicolas 氏は説明しました。
セッション終盤では会場の方々からの質問を受け付け、回答を行いました。そして、Nicolas 氏は最後に「テクノロジーの世界で、そしてスタートアップで新しい挑戦をしたいと思っているならば、ぜひ大きな一歩を踏み出してください。素晴らしいアドベンチャーになると思います。困難なことも多いですが、私は Algolia を創業して後悔したことは一度もありません。みなさんにも、ぜひこういった経験をしていただきたいです」と結びました。
Session2:日欧 AI ユニコーンスタートアップが見る生成系 AI 時代の技術経営
<スピーカー>
Synthesia COO, CFO & Co-Founder Steffen Tjerrild 氏(写真中央)
Preferred Networks VP of Consumer Products 福田 昌昭 氏(写真右)
<モデレーター>
アマゾン ウェブ サービス ジャパン Head of Startup Solutions Architect 塚田 朗弘(写真左)
昨年末から今年にかけて話題に上ることが急激に増えてきた生成系 AI ですが、Synthesia 社や Preferred Networks 社といった AI スタートアップでは、それ以前から AI 技術をコアに据えてビジネスを組み立ててきました。いわば AI 領域における先駆者の方々が、この先の未来に何を見ているのか、そして、まだ不確実性の高い AI 技術をどのように経営判断に組み込んでいるのかなどを、日欧のユニコーンスタートアップ 2 社に伺いました。
セッション冒頭では、Steffen 氏が自社の沿革や事業内容について説明しました。Synthesia 社は AI 搭載動画作成プラットフォームを運営しています。テキストのファイルをアプリにドラッグアンドドロップするだけで、AI のアバターが話す動画を作成できるサービスを提供しているのです。セッション内ではアバターによるスピーチも行われ、会場からは動画と音声の品質の高さに驚きの声が漏れていました。
次に福田 氏が登壇し、Preferred Networks 社の概要について解説しました。同社は AI やディープラーニングといった最先端の技術を活用し、社会課題の解決を目指すスタートアップ です。同社の設立は 2014 年。日本において、まだほとんどの企業が AI やディープラーニングなどの技術に取り組んでいない時代から、これらの分野をリードしてきました。自動運転技術や産業用ロボットの高度化、病気の早期診断、エンターテインメントへの最新技術の導入など、幅広い事業領域を扱っています。
両社の紹介の後に、パネルディスカッションを実施しました。「生成系 AI やディープラーニングなどのポテンシャルがまだ世の中でそれほど理解されていない段階から、なぜこの技術に投資するという判断ができたのか」「自社の経営戦略・技術戦略にどのように関与してきたのか」「自社の事業の価値を最大化するために取り組んでいることは何か」といったテーマが語られました。
セッション内で、Steffen 氏は AI 領域における開発競争の激化について触れ「自社の技術力やプロダクトを改善するのはもちろんだが、他社の持つ技術も積極的に取り入れてイノベーションを創出することが重要」と提言。また、福田 氏は近年の生成系 AI の流行について「人間の生産性を大きく向上させられるチャンスであり、この転換期に自社が培ってきた技術基盤や知見を活用していきたい」と述べました。
このセッションでも、終盤では会場の方々からの質問を受け付けました。会場からは、AI を用いた事業開発・プロダクト開発のために必要な要素について、鋭い質問が数多く寄せられました。
「CTO 60sec」の様子。
また、CTO Night & Day では各セッションの終了後に「感想戦」を実施しているのも特徴です。これは、各テーブルに着座している参加者同士でセッションの感想を言い合うことでより理解を深め、かつ CTO 同士のつながりを強くするための取り組みです。「感想戦」の後には、指名された CTO が 60 秒間のスピーチを行う「CTO 60sec」も実施しました。
unconference!
続いては、事前アンケートで収集した各種のテーマごとに少人数のグループに分かれてディスカッションを行う「unconference!」を実施しました。テーマは採用や育成、評価、技術選定、セキュリティ、ダイバーシティ向上など、技術経営者たちが普段の業務で向き合っている課題です。
考えていることや悩んでいることについて、参加者同士で議論しました。セッション終盤では議論の結果を発表し、学びを参加者全員で共有しました。
Networking Dinner CTO Night
各セッションを終えた後は、ホテル内の宴会場にて全員参加のパーティーである Networking Dinner CTO Night が催されました。みなさんが思い思いにおいしい食事や和やかな会話を楽しみ、CTO Night & Day 2023 Fukuoka の Day1 が終了しました。
この後は、Day2 のダイジェストへと続きます。