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スタートアップや日本を代表するテック各社の CTO、VPoE が金沢に集結【CTO Night & Day 2024 Kanazawa – Day1 ダイジェスト】

CTO Night & Day は、スタートアップや日本を代表するテック企業における、CTO や VPoE など技術経営者のための招待制カンファレンスです。参加者同士によるディスカッション、経験や事例の共有などを通じて、経験年数や企業規模を超えた幅広い知識と人脈の交流の場を提供し、技術経営者のコミュニティが醸成、活性化され、業界全体が発展していくことを目的としています。

2014 年より、宮崎、京都、金沢、長崎、福岡、オンラインなど形を変えながら年1 〜 2 回実施し、延べ 1,200 人以上の CTO/VPoE が参加されています。11 年目となる 2024 年は、日本の地域活性化や年初の地震からの復興支援の願いも込め、石川県金沢市にて開催し178名にご参加頂きました。オフサイトならではの学びとネットワーキングの場を提供いたしました。今回は同市大手町の「KKRホテル金沢」にて 2024 年 7 月 25 日に行った Day1 の模様を、ダイジェスト形式でお届けします。

Morning Session

午前中に開催されたのは、CTO Night & Day に参加される CTO・VPoE へ向けて、本編が始まる前に AWS 社員が特定のテーマに基づいてノウハウを共有する Morning Session です。4 つのトラックに分かれ、前半パート・後半パートでセッションを実施しました。参加者の方々は、興味のあるセッションのテーブルに着座し、耳を傾けていました。

印象的だったのは、各セッションの発表終了後に、参加者の方々から登壇者へ複数の質問が寄せられていたことで、語られたテーマは組織づくりやガバナンス向上、生成 AI の導入、技術的負債への向き合い方といった開発組織の重要課題であり、各 CTO・VPoE にとってより深掘りしたくなる内容だったようです。

<前半パート>

1-A. Amazon に学ぶ、カルチャーを元にした組織づくり

1-B. Supabase に学ぶ、爆発的に成長するスタートアップの秘密

1-C. 監査ログ活用の実践 – 上場に備えて今からできること

1-D. Amazon.com における負債回収と持続的進化

<後半パート>

2-A. (Amazon/AWS 流)自律的な組織を生み出すためのメカニズムとサービスフィードバックの実践例

2-B. 生成 AI の技術トレンドと実践事例:成功と失敗から学ぶ

2-C. アジリティと両立する AWS のガバナンスコントロール

2-D. SaaS 開発と プラットフォーム エンジニアリングの未来

復興支援ランチ

お昼は Morning Session の感想を言い合ったり、名刺交換や雑談をして親睦を深めたりという光景が各テーブルで見られました。また、このランチでは復興支援も兼ねて、石川県金沢市の企業のお弁当(獅子丸、金澤 口福屋、Natuleg)が配布されました。

Opening

午後からはいよいよ、CTO Night & Day の本編がスタート。冒頭ではまず、石川県 副知事の浅野 大介 氏よりコメントをいただきました。

石川県 副知事 浅野 大介 氏

石川県には優れた技術や製品、人を有する企業がたくさんあります。同時に、社会課題も数多く抱えています。「今回 CTO Night & Day に参加されている技術経営者の方々に、石川県のさまざまな要素を知っていただき、県内の企業や人との交流をしていただくことで、新しい何かが生まれることを期待しております」と浅野 氏は言及。そして、「金沢市を満喫し、2 日間の日程を充実させてください」と結ばれました。

AWS ジャパン 事業開発マネージャー Startup 担当 加藤 寛

次に、CTO Night & Day 運営事務局でイベント全体の統括を行うアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)事業開発マネージャー Startup 担当の加藤 寛よりごあいさつをしました。CTO Night & Day のイベント概要やそのビジョン、これまでの歴史などを冒頭で説明。そのうえで、今回のイベントは石川県の復興支援という側面もあり、スタートアップ各社と石川県の企業との交流・ディスカッションの場も設けていることを説明しました。

また、ダイバーシティ・エクイティ & インクルージョンの観点から、昨年までの CTO Night & Day より多くの女性の技術経営者が参加されていることにも言及。さらに、今回のイベントで実施予定の新しい取り組みについて説明し、「ぜひ、みなさんには 2 日間楽しんで、学んでいただければと思います」と述べました。

AWS ジャパン 常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部 統括本部長 佐藤 有紀子

最後に AWS ジャパン 常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部 統括本部長 佐藤 有紀子が登壇。能登半島地震で被災された方々に対してのお見舞いの言葉と復興への願いについて述べました。そして、CTO Night & Day が 2014 年から開始され、これまで延べ 1,200 名の CTO・VPoE の方々に参加いただいたことを説明。「こうした場所を私たちが提供できたことを誇りに思いますし、みなさまと歩んできたこれまでの 10 年間に感謝を申し上げます」と語ったうえで、開会の宣言をしました。

Keynote Session

Notion CTO Fuzzy Khosrowshahi 氏

ここからはイベントの目玉である Keynote Session を開始。今年は Notion の CTO である Fuzzy Khosrowshahi 氏をお招きし、グローバルで活躍してきたご自身のキャリアや、Notion における AI の利活用などをお話しいただきました。

Google や Slack、そして現職の Notion と著名テック企業で実績を残してきた Fuzzy 氏。セッション冒頭ではその経験を踏まえ、Learnings from my career(私のキャリアから学んだこと)というテーマで、Fuzzy 氏が仕事や私生活で大切にしていることを語りました。

「Kazoku comes first(どのような状況に置かれていても、家族を最優先にすることを忘れない)」「Stay cool under pressure(重圧のかかる場面であってもクールで居続ける)」など複数の金言が語られましたが、とりわけ多くの CTO・VPoE が共感していたのが「Stay close to the code(いつもソースコードの側にいる)」という言葉。経営・マネジメントレイヤーになったとしても、日常的に技術に触れ続けることの重要性が述べられました。

セッション中盤からは、Al に関連した Notion のプロダクト製品戦略が語られました。Notion では LLM を使ったサポート機能「Notion AI」をユーザーに提供し、プロダクトの利便性を高めてきました。その実績を元に「LLM を導入して新機能を作る際には、ユーザーにとって直感的であること、機能がユーザー体験を向上させることを常に意識する」と Fuzzy 氏は説明。ユーザーの多くは習慣を変えることを嫌うため、どれほど便利な機能であってもユーザーフレンドリーでなければ利用してもらうことは難しいと述べました。

セッション後半では、Key learning so far at Notion(Notion でこれまでに学んだ重要な点)について解説。Notion 入社前と後とで、自身の考え方や働き方がどのように変化したのかを Fuzzy 氏は語りました。

Fireside Chat

AWS ジャパン Digital Service Solutions Manager, Solutions Architect 廣瀬 太郎(写真左)、Notion CTO Fuzzy Khosrowshahi 氏(写真右

ここからは Fuzzy 氏に加えて AWS ジャパン Digital Service Solutions Manager, Solutions Architect の廣瀬 太郎が登壇し、Fireside Chat を実施しました。セッション内で廣瀬は「この会場に集まっている CTO・VPoE には、ビジネスやプロダクトをグローバルに展開したい方も多くいます。そんな方々へのアドバイスはありますか」と質問しました。

Fuzzy 氏は「過去に働いてきた Google や Slack、そして Notion でもそうですが、早期の段階でプロダクトをインターナショナルフレンドリーにしていました」と解説。複数言語対応を行うなどグローバル展開を前提とした設計・機能にすることに加えて、海外拠点を開設するとか現地の人々を採用することの重要性についても説きました。

また、Notion がグローバルに事業や組織を展開するなかでの技術経営者としての工夫について、Fuzzy 氏は「スピーディーに意思決定をして、組織全体の行動速度を速められるようにすること」「世の中を良くするために『真理を求める』ような行動をし、自らの考えの透明性を高めること」などを述べました。

廣瀬は「優秀な社員を採用するための方法」についても質問。Fuzzy 氏は「良さそうな人がいるならば、経営メンバーたちがその人と直接会い、相手のことを理解する」とのこと。そのうえで、「ただ優秀かどうかだけを見るのではなく、Notion の文化にマッチするかどうかも確認している」と言います。

また、Keynote Session にてプロダクトに AI を組み込む方法などが語られたことに関連した議論も、Fireside chat では行われました。「生成 AI の世界は日進月歩だが、どのようにしてこの激しいトレンドの変化と向き合っているか」「基盤モデルのプロバイダたちへ期待することは何か」などのテーマについて、Fuzzy 氏が自身の考えを述べました。セッション終盤では、会場から寄せられた質問に対して回答しました。

CTO アンカンファレンス

アンカンファレンスとは、講演者の話を聞くセッションの形態とは異なり、参加者自身がテーマを出し合いそのトピックについて自分たちで話し合い、参加者全員で作り上げるカンファレンスです。トピックごとに、少人数のチームに分かれてディスカッションを行いました。

トピックとして挙げられたのは、採用や評価制度、組織作り、制度設計、ダイバーシティ推進、技術的負債の解消、セキュリティ向上といった企業にとっての重要課題ばかり。どのテーブルでも熱のこもった議論が行われました。また、Notion CTO Fuzzy 氏への Ask the Speaker テーブルや、英語のみのディスカッションテーブルも設けられました。

Networking Party

各セッションを終えた後は、創業 130 余年の歴史を持つ金沢市の老舗懐石料亭旅館「金城樓」にて、全員参加の Networking Party が催されました。乾杯の音頭をとったのは、Notion CTO Fuzzy 氏です。

Fuzzy 氏は今回の CTO Night & Day 2024 Kanazawa が素晴らしいイベントであること、そして貴重な出会いがあったことなどに触れたうえで、乾杯をしました。宴会場に並べられたのは、石川県の食材をふんだんに使った料理の数々。参加者のみなさんは、滋味あふれる品々に舌鼓を打ちながら、和気あいあいと会話を楽しまれていました。

この後は、Day2 のダイジェストへと続きます。