AWS Startup ブログ
「Amazon との業務提携で、物流の課題を解決したい」ecbo 社による、AWS のスタートアップ支援プログラム活用事例
「アマゾンウェブサービスジャパンのスタッフの方々は、スタートアップ企業と距離感が近い印象を受けます。だからこそ、いつでも気軽に相談しあえました。それに、AWS の各種スタートアップ支援プログラムがあったことで、安心してサービス開発に専念できました」
そう話してくれたのは、ecbo株式会社(以下、ecbo)の Founder&CEO 工藤 慎一 氏。
2019年9月18日、ecbo はアマゾンジャパン合同会社(以下、Amazon)との業務提携を行いました。ecbo の提供する宅配物受け取りサービス「ecbo pickup (エクボ ピックアップ)」の加盟店が、Amazon の新サービス「Amazon Hub カウンター」の受け取り場所に加わったのです。
ecbo はこの業務提携だけでなく、サービス構築の基盤としても AWS を用いています。また、スタートアップ企業向けの支援プログラムである AWS Activate(※)や、AWS を利用中のスタートアップおよびデベロッパーのためのコワーキング & イベントスペース AWS Loft Tokyo も積極的に活用されています。
今回の業務提携により、どのような未来を描こうとしているのでしょうか。そして、AWS の各種スタートアップ支援プログラムを利用されたご感想は? 工藤 氏と以前から交友のあるスタートアップ事業開発部 本部長 畑 浩史が、工藤 氏と ecbo エンジニアの筑井 友啓 氏にお話を伺いました。
※1……AWS 上で構築、拡張するのに必要なリソース(最大 100,000 USD の AWS Activate クレジット、24 時間年中無休の技術サポート、トレーニング特典など)をスタートアップ企業に提供するプログラム。
小学3年生で学んだビジネスの面白さ
畑:工藤さんとは以前からちょくちょく連絡を取り合っていますけど、改めてこういう場で話すのは不思議な感じですね(笑)。
工藤:そうですね(笑)。今日はどうぞよろしくお願いします。
畑:まずは、ecbo さんが展開しているサービスの概要について教えてください。
工藤:ecbo は「ecbo cloak (エクボ クローク)」と「ecbo pickup」という2つのサービスを展開しています。
「ecbo cloak」は荷物一時預かりシェアリングサービスです。事前予約をすることで、近くにあるカフェや郵便局、カラオケ店など50業種以上の店舗・施設の遊休スペースに荷物を預けることができます。全国47都道府県の1,000以上の店舗・施設でサービスを利用可能になっています。アプリの操作もわずか数タップだけで完了するため、とても簡単です。
例えば、旅行をしていて現地に着いたときに「スーツケースをどこかに預けて観光したいけれど、コインロッカーが近くにない。もしくは空いているコインロッカーがない」というケースがありますよね。そうした課題を解決できます。
「ecbo pickup」は「ecbo cloak」の一部荷物預かり店舗を活用して、ユーザーが宅配物を受け取れるサービスです。今回の業務提携は、この「ecbo pickup」加盟店で、Amazon で購入した商品を受け取れるようになる、というものです。
畑:工藤さんはどのようなモチベーションで ecbo を創業したんですか?
工藤:もともと私はマカオの出身で、両親は経営者をしています。小さい頃から、「商売は単にお金を稼ぐためにするのではない。世の中に新しい価値を創造して、人々を幸せにするために取り組むべきだ」という教育を受けて育ってきました。
自分で商売を始めたのは、小学3年生のときです。当時、私が熱中していたトレーディングカードゲームの価格相場が、日本よりも中国の方が高いことに気づきました。日本でカードを購入して中国で販売すれば、利益をあげられるとわかったんです。
商売を通じてお金を稼げたことはもちろん嬉しかったですが、それ以上に「ニーズのある場所に何かを流通させることで、誰かが幸せになってくれること」が嬉しかったです。実際、カードを買ったときも、売ったときも、大勢の方々に感謝してもらえました。
畑:小学3年生で、ビジネスの楽しさに気づいたわけですね。
工藤:その後も、大学生になるまでなんらかの形で商売を続けました。大学在学中には Uber Japan の立ち上げ期のインターンを経験し、改めて「需供バランスの課題を、テクノロジーで解決すること」の重要性に気づきました。「ならば、私は物流が抱えている課題を解決するプラットフォームをつくろう」と考えたことが、ecbo の創業につながっています。
AWS Activate は、サービス立ち上げのハードルを下げてくれた
工藤:畑さんと最初にお会いしたのは、2017年8月に開催された「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo(※)」でしたよね。
畑:はい。工藤さんがイベントのピッチコンテストの練習をされているとき、偶然お会いしたのが最初ですね。
※……独立系ベンチャーキャピタルの B Dash Ventures が主催するスタートアップの祭典。
工藤:お会いした後も、カジュアルにチャットなどで意見交換するようになりましたね。畑さんに限らず、アマゾンウェブサービスジャパンのスタッフの方々は、スタートアップ企業と距離感が近い印象を受けます。いつどなたに相談しても、気さくに返事をしてくれます。
畑:そう言ってもらえると、ありがたいです。その後 ecbo さんには、スタートアップ企業向けの支援プログラムである AWS Activate にご参加頂きました。
工藤:AWS Activate は本当に助かりましたね。創業期のスタートアップ企業は、限られた資金のなかでプロジェクトを進めていく必要があります。そのなかで、15,000 USD もの支援があるのは大きい。AWS のサーバー代金を気にせずプロダクトを開発できたことで、精神的な負担がかなり軽減されました。
畑:その後、「ecbo pickup」をリリースし、今回の Amazon との業務提携に至ります。
ecbo、Amazonと業務提携!Amazon購入商品を、宅配物受け取りサービス「ecbo pickup」対応店舗でかんたん受け取り
工藤:Amazon で流通する荷物を「ecbo pickup」で受け取り可能になれば、ビジネスインパクトは非常に大きいです。この取り組みをきっかけに、物流のコスト構造が改善していけば嬉しい。より多くの荷物が運搬・売買されるようになれば、結果的にお客さまにとっての価値に結びつくと考えています。
「AWS Loft Tokyo へ週に1回のペースで通っていました」
畑:エンジニアの筑井さんにもお話を伺わせてください。どのような業務を担当されていますか?
筑井:私は2018年4月に ecbo に入社しました。現職では、ネイティブアプリや API の開発からインフラ構築まで、幅広い業務を担当しています。ecbo ではシステム構築基盤に AWS を用いていますが、入社後に私が新規導入したマネージドサービスとしては、Amazon Elasticsearch Service が挙げられます。
ecbo が提供しているアプリケーションはその性質上、地図上検索の処理性能が非常に重要です。もともとの設計ではそれほどパフォーマンスが出なかったのですが、「Amazon Elasticsearch Service を用いれば改善できそうだ」と考えて、導入しました。想定どおりに、パフォーマンスはかなり良くなりました。
畑:AWS を活用してくださっていて、ありがとうございます。その他に、スタートアップ企業支援のプログラムなどは利用されていますか?
筑井:さきほど工藤から説明のあった AWS Activate はもちろんですが、私は AWS Loft へ頻繁に足を運んでいます。一時期は週に1回のペースで通っていました(笑)。
畑:週に1回とは、かなり活用していただいていますね(笑)。
筑井:AWS Loft はコワーキングスペースなので、場内にいる方々と相談しあいながら作業できるのがいいですよね。技術的なノウハウをお互いに共有できるので、仕事がはかどります。窓から見える景色がいいので気分転換にもなりますし、販売されている飲みものも美味しいです。目黒という立地も便利ですよね。
畑:今後、他に利用したいと思っているものはありますか?
筑井:AWS の各種マネージドサービスをもっと使いこなしたいので、ファーストステップとして何をすべきかを、ソリューションアーキテクトの方々に相談したいです。マネージドサービスの種類もかなり多いので、専門家に相談した方が、適切なアーキテクチャ設計ができると思いますから。
どこでも荷物を預けられて、どこでも荷物を受け取れる世の中に
畑:最後に、サービスをどう成長させていきたいかを伺いたいです。
工藤:今後は「ecbo のプラットフォームが利用可能な店舗数がコンビニよりも多い」状態を目指したいです。街にあるすべての店舗が物流のハブとなり、どこでも荷物を預けられて、どこでも荷物を受け取れる。そんな世の中が実現できたらいいと考えています。
荷物の行く先は、人の行く先でもあります。だからこそ、物流の課題を解決すれば、新しいコミュニケーションや新しい経済が生まれるはずです。その世界観を、今後も広めていきたいです。
畑:実現が楽しみですね。では、筑井さんからもお願いします。
筑井:ecbo は新しいサービスを通じて、世の中に新しい価値観を提供しようと挑戦を続けています。ですが、多くのアイデアはまだまだ、本当にヒットするかどうかが未知数です。だからこそ、エンジニア組織は効率よくプロダクト開発を進めて、試行回数を増やしていきたい。アーキテクチャ選定や開発体制の構築なども含め、ビジネスをグロースさせやすい仕組みを整えていきたいです。
畑:おふたりのお話を伺っていると、目指す世界観と、それを実現したいという気持ちがひしひしと伝わってくるんですよね。今後も ecbo さんの事業をお手伝いさせていただいて、一緒に事業を成長させていきたいです。今回はどうもありがとうございました!
おわりに
物流が抱える課題を解決するため、日々の進化を続けていらっしゃる ecbo 社。工藤 氏と筑井 氏の両名とも、実現したい世界観を聡明に語る姿が印象的でした。
ecbo では、AWS 上で構築、拡張するのに必要なリソース(最大 100,000 USD の AWS Activate クレジット、24 時間年中無休の技術サポート、トレーニング特典など)をスタートアップ企業に提供するプログラム AWS Activate や、AWS を利用中のスタートアップおよびデベロッパーのためのコワーキング & イベントスペース AWS Loft Tokyo などを有効活用され、サービス開発に役立てていらっしゃいました。
また、「今後はシステムの適切な設計についてソリューションアーキテクトの方々に相談したい」とも語られており、より AWS のスタートアップ支援プログラムの利用の幅を広げられようとしています。
AWS では今後も、各スタートアップ企業さまの成長のお手伝いができるように、各種支援プログラムを展開してまいります。本稿をご覧になって「自社でもスタートアップ支援プログラムを活用したい」を思われた方は、ぜひご相談ください。
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