AWS Startup ブログ

Amazon QuickSight と Snowflake の組み合わせで柔軟なデータ操作を実現。Srush 社の AWS 活用

株式会社Srush は「データを誰にとっても身近なものにする」というミッションを掲げ、「誰でも簡単に・思い通りのデータ分析」ができるデータ統一クラウド「Srush」を開発・運営しているスタートアップ企業です。

Srush 社はインフラ環境に AWS を活用しており、分析環境を簡単に構築できるビジネスインテリジェンス(以下、BI)サービスの Amazon QuickSight を利用しています。

今回は Srush 社へのサポートを行うアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの山田 隆太朗とソリューションアーキテクトの岸田 晃季が、Srush 社 取締役 CTO の山崎 康久 氏にお話を伺いました。

*…写真の左から 2 番目は、Srush 社 HR/PR の古谷 智美 氏です。取材にご協力いただき、一緒に撮影を行いました。

「誰でも簡単に・思い通りのデータ分析」を実現する

山田:まずは Srush 社の事業概要について教えてください。

山崎:2019 年 11 月に代表取締役 CEO 樋口 海との共同創業で事業を立ち上げました。もともとはセールスエンゲージメントツールとして「Srush」のサービスを開始したのですが、2021 年頃に事業をピボットし、現在は分析プラットフォームとしてサービスを提供しています。

「Srush」は 100 種類以上のサービスと簡単に連携が可能です。いくつかピックアップすると、お客さまがよく利用されている連携先として、SalesforceHubSpotGoogle AnalyticsYahoo Ads などが挙げられます。また、Amazon S3Google Big Query、CSV などとの連携も可能です。連携設定後は、各サービスが保持する最新のデータを自動的に取得します。

これまで、データ分析を行う場合はエンジニアやデータサイエンティストなどが業務に関与するケースが一般的でした。ですが、「Srush」は技術的な知見がほとんど無い方でも利用可能です。「Srush」にはデータ抽出や加工、可視化の機能があり、さらに最近では大規模言語モデル(以下、LLM)を用いてより効率的に分析できる機能も提供しています。

「Srush」は表計算ツールに似た UI になっており、クリックだけでさまざまなデータソースのデータを複合的に集計・加工でき、ピボットテーブルの作成も可能です。レポーティングやデータ探索のために、グラフ形式でビジュアル化することも容易になっています。

現在、(社内、フルタイム)開発メンバーは 1 名です。開発は主に、副業や業務委託のエンジニア、そして海外の協力会社にお願いしています。私は主にシステムの全体的なアーキテクチャやインフラの構成を考える役割を担っています。

Srush 社 取締役 CTO 山崎 康久 氏

Amazon QuickSight の活用によって BI 機能を実現

山田:どのような機能を提供するために Amazon QuickSight を活用されていますか。

山崎:データの可視化・分析用の BI 機能を実現するために、Amazon QuickSight を用いています。BI 機能を実現するにあたり、他社製のツールも含めて比較・検討したのですが、Amazon QuickSight を選ぶ一番の決め手になったのは SPICE というキャッシュの存在でした。

SPICE (Super-fast, Parallel, In-memory Calculation Engine) は、Amazon QuickSight が使用する堅牢なインメモリエンジンです。SPICE は、高度な計算を迅速に実行し、データを提供するように設計されています。

Amazon QuickSight の利用時には、データセットにアップロードされたファイルが含まれている場合を除き、SPICE にあるキャッシュ情報または直接クエリの使用を選択できます。SPICE にデータをインポートしておくことにより、パフォーマンス改善やコストの節約につながります。

「Srush」は多種多様なサービスから大量データを集計・加工しています。そのため、キャッシュを用いなければパフォーマンス面で課題が生じますし、金銭的なコストも高くなってしまいます。他社製のツールやオープンソースのツールでは、キャッシュの仕組みが無いとか、BI ツールとしての機能の充実度が今一つ、サポートを受けられないなどの欠点がありました。Amazon QuickSight は、そうした要件をすべて満たしています。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 ソリューションアーキテクト 岸田 晃季

岸田:Amazon QuickSight の導入はどれくらいスムーズに進みましたか。

山崎:事前の検証作業が 2 週間ほど、設計・実装・リリースまでは 1 週間以内で完了できました。導入が簡単にできた要因としては、まず AWS のサポートの存在です。調査を進めるなかで「○○の機能を実現するためには、どうすれば良いですか」といった問い合わせをしたところ、丁寧な返答をいただきました。サンプルの実装まで示してもらえたのは、非常に助かりましたね。

また、これは Amazon QuickSight だけではなく AWS のすべてのサービスに言えることですが、ドキュメントが充実しており、それらの情報を調べることでほとんどの疑問や課題を解決できました。余談ですが、Amazon QuickSight に関する情報が PDF として提供されているのですが、GPTLangChainLlamaIndex などを用いて、PDF の記載情報を Q & A 形式で答えてくれるようなサポートチャットボットを自前で作りました。

Amazon QuickSight と Snowflake を有効活用したアーキテクチャ

岸田:「Srush」のシステムアーキテクチャについても教えてください。

山崎:まず、多種多様なサービスからデータを抽出するための ETL サーバーがバックエンドで動いています。ELT 処理はさまざまなオープンソースのツールを組み合わせて実現しており、このサーバーからデータをデータプラットフォームの Snowflake に格納します。

「Srush」のアプリケーション本体は、Python製の Web アプリケーションフレームワークである Anvil を用いて開発しています。アプリケーションは Amazon ECS on AWS Fargate 上で動いており、Docker イメージは Amazon ECR で管理しています。データベースは Amazon RDSAurora Serverless を使用し、秘匿情報は AWS Secrets Manager に格納しています。

アプリケーションサーバーから Snowflake にアクセスし、Snowpark というライブラリを用いてデータ変換のワークロードなどを実行します。そして、Snowflake のデータセットを Amazon QuickSight に読み込み、アプリケーション側から Boto3 によってアクセスします。

Snowflake は「データ処理が高速」「自社によるインフラ管理が不要」「他サービスとの接続が容易」など複数の利点があります。Amazon QuickSight とも非常に相性が良く、Amazon QuickSight と Snowflake との組み合わせは、「Srush」の利便性や運用の容易性などを向上させるうえで有効に働いています。

よりユーザーに寄り添ったデータプラットフォームに

岸田:システムの今後のビジョンについてお話しください。

山崎:今後も「Srush」の強みである「多種多様なサービスとのデータ連携ができる」という点を伸ばしていきたいです。連携可能なサービスの種類を今後も増やしていき、より多種多様なユースケースに対応できるようにしていきます。

それとは別に、近年では生成系 AI や LLM などの技術が台頭してきていますから、それらを活用して「Srush」をより便利にしていくための改善にも取り組みたいです。現在はチャットと対話してグラフを作成する機能を提供していますが、それ以外にもデータ加工の自動化やデータの自動的なインサイト分析など、生成系 AI や LLM を活用して実現できることはたくさんあるはずです。

そして、「Srush」のさらなる改良を行うためにも、引き続き Amazon QuickSight を使い倒していきます。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャー 山田 隆太朗

山田:現在は開発組織のなかで社員は山崎さんのみとのことですが、エンジニア採用は積極的に行っていきますか。

山崎:もちろんです。弊社は、データを効率的に取り扱うためのアーキテクチャ設計を考えたり、最新技術を積極的に取り入れて新機能を構想したりと、腕自慢のエンジニアが存分に力を発揮できる環境になっています。

今後は優秀な方々に参画してもらうためにも、プロフェッショナルが集まる海外の Web サイトでスカウトをしたり、日本国内のスキルの高いエンジニアに積極的に声をかけたりといった採用活動を行っていきたいです。

スタートアップマインドを持った方であれば、Srush の業務にマッチすると思います。私たちはまだ小規模な組織であり、メンバー一人ひとりの裁量も大きいです。その環境下で自走して、良い設計を考えて、自ら手を動かせる人がワークするはずです。今後はレベルの高いメンバーが集まる開発組織にしていきますので、ぜひ私たちと一緒に働きましょう。

山田:システムと組織の両方が、今後もさらに成長していきそうですね。今回はありがとうございました。