Amazon Web Services ブログ
各国行政機関はクラウドで「税務」関連の業務処理を効率化。納税者体験も向上。
今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、「米 連邦歳入庁や州政府機関が、クラウドを用いて納税・収税まわりの業務を改善している取り組み」について紹介します。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。(以下、AWS Public Sector Blog へ掲載された「Taxes, governments, and great experiences using the cloud」と題された投稿の翻訳となります。)
「納税」体験がクラウドで向上する
所得税・給与税・雇用保険など、個人や企業からさまざまな種類の税金を徴収する税務・歳入・雇用保障・労働などを所掌する政府・公共機関は、しばしば多大な業務量に悩まされています。こうした課題は、COVID-19はもちろんのこと、新たに制定された給付制度(例:パンデミック失業支援[=Pandemic Unemployment Assistance])、詐欺やサイバー犯罪の増加──などの諸要因によってさらに深刻化する傾向にあります。このため、多くの国の政府機関は、歳入の減少・予算の縮小・労働力不足という制約の中で仕事をすることを余儀なくされています。情報技術とクラウドサービスは、これらのビジネスプロセスと税制のモダナイゼーション、および納税者の「体験」の向上を実現することができます。また、行政機関にとっても、これらのツールは、新しい法律の制定から、その制度がタイムリーかつ成功裏に実施されるまでの「所要時間」を短縮することができます。
変革に向けたプロセスの進化と、技術の必要性
私自身[=英文ブログの筆者]の州政府での経験を思い起こせば、「いかに少ない人数で多くのことを行うか」というテーマが、多くの話題の中心となっていました。──不正を防ぐにはどうしたらいいのか? 数百万件もの申告と納付の処理、住民からの質問や懸念への対応、紙とデジタル文書の処理、データの分析と報告、監査、徴収の執行など、少ない予算で少ない自治体職員が多大な仕事をこなしながら、立法上の義務に従った業務を日々行っているのです。2020年(=2019年の納税対象)、米 内国歳入庁(IRS)は、「7,170万人以上(91.6%)の納税者が連邦税申告プロセスを電子申告によって完了しましたが、他方では1,600万件もの紙の申告書が滞っている(=backlog)状態である」────と報告しています。
2020年、全米納税者擁護団体(IRS内に設けられた、納税者を支援する独立組織)は米連邦議会への「報告書」において、職員不足、時代遅れの技術、電話・対面サービスに付随する困難により、IRSの継続的なモダナイゼーションと電子アクセスやデジタル通信の活用の幅が制限されている──と課題を指摘しました。さらに、政府機関は、脱税や不正な税金のカンプ請求といった課題に対処することも、使命としています。これらの課題は、さまざまな税金の種類を問わず、また、連邦政府機関・州政府機関に共通するものです。アマゾン ウェブ サービス(AWS)とAWSパートナー各社は、納税者と行政機関職員の「税務」周りのエクスペリエンスを向上させるだけでなく、『IRS Publication 1075』[訳注:税務関連の情報セキュリティ・ガイドライン]への準拠、運用コストの削減、不正行為の削減・防止、生産性と歳入の回収率の向上を支援することができます。以下では、政府機関がAWSクラウドを利用してどのように主要な課題に取り組んでいるかを紹介します。
Alexaなど、クラウドのコンタクトセンターを活用し
”納税体験”が向上
税金やその他の行政サービスに対し、行政機関がどのように有権者とコミュニケーションを取り、積極的に耳を傾け、対応するか──こうした一連の活動は、「地域住民とのエンゲージメント」であると言えます。AWSは、Web、モバイル、チャットボット、電話、Alexaなどのパーソナル音声アシスタントなど、さまざまなコミュニケーション手段に関連したクラウド・サービスで行政機関を支援しています。
これらのオムニチャネルなクラウド・サービスには、ソーシャルメディアの感情分析を含む人工知能(AI)と分析が導入されており、予想される大量の質問に先回りして対応することで、現在職員に求められている付加価値を生じにくい多くの作業をなくし、職員はより重要な税務処理業務へと集中することができるようになるのです。Amazon Connect は、あらゆる規模の企業・団体をサポートするために拡張可能な、最新のオムニチャネル・クラウドベースのコンタクトセンターサービスです。設定・使用・拡張が簡単であることが知られています。
2020年6月に発行されたフォレスター社による「Amazon Connect に関するレポート」では、システム管理の労力を最大60%削減、問い合わせ総数をルーティングすることで最大24%削減、電話をしてきた人が保留される時間を最大15%短縮、契約・利用コストを31%削減することが、強調されています。2020年、COVID-19パンデミックに見舞われた際、ウエストバージニア州は72時間でAmazon Connectをソフト・デプロイし、1日で61,000以上の失業保険請求関連の電話を処理できるよう、迅速な拡張を行うことができました。詳しくは、こちらのケーススタディをご覧ください。
また、ジョージア州では、Amazon Echoデバイスと新しいAlexaスキルで地域住民との接点を構築し、、行政サービスに関するサポートを提供しています。
RPAによる文書処理・管理の省力化
これまでは手作業・目視で処理されてきた数百万枚規模の「紙」の納税申告書に対しても、AWS の事前トレーニング済みの AI サービスが業務の自動化を支援します。文字認識や判読、読み上げ機能や、テキスト検索、チャットボット、傾向予測、不正検知などをクラウドサービスが提供できるのです。Step Functions と Amazon Textract を使用して、請求書の自動処理を可能にするワークフローを構築する方法について説明する、ハイパーリンク先もご参照ください。AWS Partner RPA ソリューションは── UiPath はその一例ですが──、税務関連の申告書処理など手間のかかるワークフローやバックオフィス・プロセスを迅速に自動化・省力化するために、すぐに利用することができます。
不正の検出と防止
2021年3月の記事 「昨年のなりすまし被害額は2,000億ドル。では、こうした税金詐欺をどう防ぐべきか」では、昨今顕著になってきている詐欺の増加という、金融業界の直面する課題を指摘しています。Amazon Fraud Detector は、汎用の機械学習(ML)パッケージとは異なり、不正検知に特化したフルマネージドサービスです。Amazon Fraud Detectorは、お客様のデータ、最新のML、Amazon.com と AWS の20年以上の不正検知経験を組み合わせ、不正の防止/検知を支援します。このリンク先で、「オンライン詐欺に関する知見を導出するための堅牢な概念実証(POC)を開発し実行する方法」を知っていただき、Amazon Fraud Detectorのビジネスへのインパクトを評価してみてください。
クラウドでの税務システム統合と、
税関連データの集計
政府は申告・還付処理を行う際、税務システムと他のシステムとの間の様々なインターフェースにアクセスし、申告情報に影響を与える「逮捕・投獄歴」や、「宝くじの当選金」などの諸データを調べる必要があります。システムを統合してデータのサイロを無くし、データを機関横断的に集約することで、処理を合理化し、処理時間そのものを改善することができます。AWSのApplication Integration Servicesは、まさにこのようなデータの統合をサポートします。
最近、AWSは、コロラド州の公的非営利医療保険市場であるConnect for Health Colorado(C4)と協力して、前述の「IRS Pub 1075」に準拠した連邦税情報(federal tax information; FTI)を、AWS Lambdaサーバーレス・アプローチを使用してC4が処理するように設計し、IRSの承認を初めて得ることができました。
さらに、より良い洞察と予測機能のメリットを享受し続けるために、お客様はサイロ化したデータをレイクハウス・アーキテクチャを使用してデータレイクに統合することが可能です。リンク先のAWS Big Data Blogの記事では、従来のオンプレミス・ソリューションよりも高いパフォーマンス、スケール、コスト優位性を持つ「AWS のアナリティクス・サービスを用いてデータのパワーを結集する方法」について説明しています。
日本の公共部門の皆様へのご案内
AWSでは、政府・公共部門、パブリックセクターの皆さまの各組織におけるミッション達成が早期に実現するよう、継続して支援して参ります。
今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、国内外の公共部門の皆さまとの取り組みを多数紹介した過去のブログ投稿に関しても、ぜひご覧いただければ幸いです。「クラウド×公共調達」の各フェーズでお悩みの際には、お客様・パートナー各社様向けの相談の時間帯を随時設けておりますので、ぜひAWSまでご相談ください(Contact Us)。
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このブログは英文での原文ブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が翻訳・執筆しました。
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